Let there be peace, not war.
セシリアによるストレートな誘惑、そしてそれに激怒して『チーム・ジャパン』を結成したヤンデレ四人組。
音楽室に満ちる、五人の少女たちによる一触即発の凄まじいプレッシャー。
「ふふん、いくら束になってかかってきても無駄よ。彼は私の音に惹かれていたわ。野蛮なあなたたちじゃ、彼の繊細なハートを満足させられないのよ」
セシリアはふんぞり返り、豊かな胸を張って日本の四人を煽り立てる。
その言葉に、結衣、琴音、凛、志乃の瞳が、いよいよ完全に「漆黒の殺意」に染まろうとした――その時だった。
「……いい加減にしろよ」
低く、静かだが、不思議と部屋中の空気を震わせるような声が響いた。
声の主は、それまで怯えていたはずの水瀬綾人だった。
「え……? センパイ?」
凛が思わず毒気を抜かれたように声を漏らす。
綾人はチェロをそっと置き、ゆっくりと立ち上がった。
数々の修羅場をくぐり抜け、さらには異国の地で本気で音楽と向き合ったことで、彼の内なる『男としての器』は、いつの間にか臨界点を超えて覚醒していたのだ。
その瞳には、かつての鈍感さや怯えは一切ない。あるのは、すべてを包み込み、支配するような絶対的な王者の光。
綾人はツカツカとセシリアの前に歩み寄ると、彼女の美しい顎を、長い指先でスッと掬い上げた。
「な、何よ……っ」
セシリアの碧眼が、至近距離で見つめてくる綾人の男らしい瞳に、思わず激しく揺れる。
「セシリア。君の言う通り、俺のチェロは荒々しいかもしれない。……でもね、俺をここまで追い詰め、磨き上げてくれたのは、ここにいる四人なんだよ」
「え……?」
綾人はセシリアを煽り返すように、ニヤリと不敵で、しかしどこまでも甘い極上の微笑を浮かべた。
「君みたいな温室育ちのお嬢様に、俺の四人の『愛の重さ』が耐えられるわけがない。俺を満足させたいなら……もっと死ぬ気で俺を愛してから言ってもらおうか」
「ッ〜〜〜〜〜〜!?♡」
あまりの男らしさと、あまりにも色気のある煽りに、セシリアは顔面を沸騰させ、言葉を失ってその場にへなへなと座り込んでしまった。
しかし、真の「調教」はここからだった。
綾人はゆっくりと振り返り、唖然として固まっている四人のヤンデレたちの元へと歩み寄る。
「みんな」
綾人はまず、カッターを持ったまま震えている結衣の頭を、力強く引き寄せて自らの胸に抱きしめた。
「結衣。GPSなんて仕込まなくても、俺はお前の可愛いお兄ちゃんだよ。もう不安にさせたりしないから、そのカッターを置きなさい。……いい子だね?」
「ひゃ、ひゃいっ……! お兄ちゃん……しゅきぃ……♡」
結衣の瞳から一瞬で狂気が消え失せ、完全なメロメロ状態に陥る。
「琴音」
次に綾人は、包丁を持つ琴音の手首を優しく、しかし逃がさない強さで掴み、その耳元で深く囁いた。
「俺の体の管理、いつもありがとう。でも、すっぽんじゃなくても、お前が一生懸命作った料理なら、俺はいつだって最高に元気になれるんだよ。……だから、そんな怖いもの持たないで、俺に優しくして?」
「あ、あう……あ、綾人……っ♡」
琴音は顔から火が出るほど赤くなり、包丁を床にポトリと落とした。
「瀬戸さん」
綾人は凛の前に立つと、彼女の顎をクイッと持ち上げ、唇が触れそうな距離まで顔を近づけた。
「道場の床で勝負する? 望むところだけど……俺を組み敷きたいなら、チェロで俺に勝ってからにしなよ。生意気な後輩は、俺が音楽の上でたっぷり可愛がってあげるから」
「セ、センパ……っ! マジでカッコよすぎるッス……! 孕んじゃうッス……っ♡」
凛は完全にノックアウトされ、その場に崩れ落ちる。
「そして――柊先生」
最後に綾人は、教鞭を握る志乃の前に立ち、彼女の銀縁メガネを指先で優しく外した。
「婚姻届、破っちゃってすみませんでした。でも、俺の人生のすべてを『指導』されたら、男としてのプライドが立たないんですよ。……先生。これからは、先生が俺を管理するんじゃない。大人のあなたを、俺が死ぬまで『エスコート』してあげます。……いいですね?」
「……あ、あ、水瀬、くん……っ♡」
あの冷徹な学年主任の面影はどこへやら、志乃は潤んだ瞳で綾人を見上げ、足元をふらつかせて歓喜に身悶えした。
床に座り込んだままのセシリアは、目の前で起きた光景が信じられず、ただ呆然としていた。
世界を震撼させるほどの狂気を持った四人の最凶ヤンデレたちが、たった一人の男の「言葉」と「色気」によって、一瞬にしてただの『恋する従順な女の子』へと調教されてしまったのだ。
「よし。じゃあ、みんなで仲良くお茶でもしに行こうか」
綾人は、四人のヤンデレ、そして現地の天才令嬢セシリアの全員を、完全に自分の手のひらの上で転がす『絶対的な指揮者』へと覚醒していた。
「「「「「はい(ッス/わよ)……っ♡♡」」」」」
逃げ回るだけの弱気な主人公は、もういない。
ヤンデレ達の重すぎる愛を正面からすべて受け止め、力ずくでねじ伏せてコントロールする術を水瀬綾人は得た。
『逆襲のグローバル・ハーレムライフ』が、今ここに幕を開けるの……か?
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