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僕の妹がこんなにヤンデレデレになるなんて〜狂い始める日常〜  作者: 虹の箸


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決壊寸前の防波堤

「……ハァ、ハァ、ハァ……っ!」

夕暮れの道を全速力で駆け抜け、綾人はようやく我が家である水瀬家へとたどり着いた。

息も絶え絶えに

「た、ただいま……

パタパタパタッ、と奥から足音が近づいてくる。

「あ、お兄ちゃん! お帰りなさいっ!」

出迎えたのは、綾人のシャツ(下半身はギリギリ見えない絶妙な丈)を素肌に羽織っただけの結衣だった。

「ゆ、結衣……お前、また俺の服を……」

綾人がツッコミを入れようとした、その背後から。

「お帰りなさい、綾人。今夜は精がつくように、特製のすっぽん鍋にしておいたわよ♡」

お玉を持った新妻エプロン姿の琴音が、艶やかな笑みを浮かべてリビングから顔を出す。

「お帰りッス、センパイ! 先輩のベッド、私が先に入って温めておいたッスよ♡」

なぜか二階の綾人の部屋から、ショートパンツ姿の凛が身を乗り出して手を振っている。

そして、極め付けに。

「お帰りなさい、水瀬くん。家庭訪問という名目で、お義父様とお義母様にはきちんとご挨拶を済ませておいたわ。さあ、夜の『特別指導』を始めましょうか♡」

リビングの奥、水瀬家のソファに深く腰掛け、大人の色気を撒き散らしながら足を組む志乃が、妖しく銀縁メガネを光らせていた。

「な……」

妹。幼馴染。後輩。教師。

綾人が全速力で逃げ帰ってきたはずの『安全地帯サンクチュアリ』は、すでに最凶の四人によって完全に占拠されていた。

「なんで……なんで全員、俺の家に集合してるんだよぉぉぉっ!!」

綾人の悲鳴が、夕暮れの空に空しく響き渡る。

四人のヤンデレヒロインたちは、互いに牽制の火花を散らしながらも、一斉に綾人へと群がった。

「「「「さあ、ご飯にする? お風呂にする? それとも……わ・た・し?♡」」」」

逃げ場など、最初からどこにもなかったのだ。

さらに恐ろしいのは、彼女たちの常軌を逸した狂気と独占欲の裏側には、綾人の男としての本能を根こそぎ奪い去るほどの『極上の可愛さと色気』が潜んでいることだ。

「だ、ダメだ……っ! 近づくな! 寄るな! 俺の理性が、あぁぁぁっ……!!」

四方向から押し付けられる柔らかな感触と、甘い吐息、そして魅惑的な匂い。

誰か一人を選べば、即座に血の雨が降るハルマゲドンが勃発する。

しかし、このまま四人の甘い毒を浴び続ければ、遠からず綾人自身の理性が崩壊し、自らこのドロドロの沼の底へと身を投じてしまうだろう。

「ずっと一緒だよ、お兄ちゃん♡」

「私の愛から、一生逃がさないわ」

「センパイの全部、私が搾り取ってあげるッス♡」

「死ぬまで、私が完璧に管理してあげるわね♡」

男としての純潔と命を懸けた、ギリギリの攻防戦。

限界突破の鈍感さとお人好し精神で綱渡りを続ける水瀬綾人の、甘く、恐ろしく、そしてどこまでも爛れた修羅場ライフは――彼が完全に陥落するその日まで、永遠に続いていくのだった。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

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