表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の妹がこんなにヤンデレデレになるなんて〜狂い始める日常〜  作者: 虹の箸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/36

仁義なき戦い

「……くっ、ふふっ」

「あははっ……ふふ、あははははっ!」

進路指導室の淀んだ空気を切り裂くように、誰からともなく漏れ出した笑い声が、やがて不気味な合唱となって響き渡った。

「……何がおかしいの?」

志乃は眉をひそめ、冷たく言い放つ。自らの絶大な権力を前に、この小娘たちは屈服するしかないはずだった。

しかし、顔を上げた三人の少女の顔を見て、大人であり、同類の志乃すら背筋に薄ら寒いものが走った。

結衣も、琴音も、凛も。

彼女たちの顔には、恐怖や絶望など微塵もなかった。代わりに、瞳から一切の光を消し去り、口角だけを異常なまでに吊り上げた――背筋が凍るほど美しく、そして完璧に病んだ笑顔が貼り付いていたのだ。

チャキッ、と。

結衣がカッターの刃を引っ込め、クスリと笑う。

「『管理者』? 『おいしいところはいただく』? ……頭、沸いてるんじゃないですか、先生」

「え?」

「私たちがお兄ちゃんを巡って殺し合ってたのはね、『一番』になりたいからじゃないんです。お兄ちゃんの『全部』じゃなきゃ、一ミリの価値もないからですよ。……泥棒猫《く◯やろうに》に首輪をつけられて飼われるくらいなら、お兄ちゃんの四肢を切り落として、私達だけの部屋で一生暮らします」

(そう……もう学校になんて通わせない。先生の権力が及ばない場所に、お兄ちゃんを監禁してしまえば私の勝ちだもの)

結衣の腹の底には、すでに『完全隔離』という凶悪なプランが渦巻いていた。

続いて、琴音が艶やかに、そしてどこまでも毒を含んだ声でクスクスと笑う。

「先生、大人の余裕を気取っているところ悪いんですけれど。……私を甘く見すぎよ」

「なんですって?」

「停学? 退学? ええ、どうぞご勝手に。でもね、その前に、先生が睡眠薬で男子生徒を眠らせ、職権濫用でみだらな行為に及ぼうとしたという事実が、教育委員会とPTA、そしてネットの掲示板に、音声付きで一斉送信されるわ。……社会的に抹殺されるのは、どっちかしらね?」

琴音は自らの制服の胸元をトントンと叩いた。そこには、綾人のカバンに仕掛けたものとは別の、超小型のボイスレコーダーが今この瞬間も作動している。

(学校という社会でしか威張れない哀れな大人。あなたから教師というメッキを剥ぎ取って、二度と綾人に近づけないように潰してあげるわ)

最後に、凛がバールのようなものを肩に担ぎ直し、ケラケラと嘲笑う。

「あーあ、マジで萎えるッス。おばさんの管理下で大人しく順番待ちとか、どこの罰ゲームッスか。……私はね、先輩が嫌がって泣き叫ぼうが、無理やり私で塗り潰して、ぐちゃぐちゃに染め上げたいだけなんスよ」

(学校がダメなら、帰り道で拉致すればいいだけッス。スタンガンもレンタカーも、もう手配済みッスからね。……先輩のはじめては、絶対に私がもらうッス)

三者三様、自らの腹の底に真っ黒な企みを抱えながら、三人のヤンデレヒロインは寸分の狂いもなく声を揃えた。

「「「――そんなふざけた条件、お断り(ッス / よ / です)」」」

一切の妥協を許さない、絶対的な拒絶。

ヤンデレにとって『愛する人』とは、誰かと分け合うケーキではない。自分の命そのものであり、自分の全てを賭けて独占すべき神なのだ。

「……あなたたち」

志乃の顔から、ついに余裕の笑みが消え失せた。銀縁メガネの奥の瞳が、怒りと深い情念でドロドロに濁っていく。

「ふふっ……いいわ。大人しく私の庇護下に入れば、安全に愛せたものを。……教育が足りない不良生徒は、徹底的に指導はいじょしてあげる」

「やれるもんならやってみなさいよ、行き遅れの変態教師」

「先輩の唇につけたそのキスマークごと、顔面引き裂いてやるッス」

「お兄ちゃんから、汚い手を離して」

眠りこける綾人を中央に挟み、ついに交渉は完全決裂。

『妹』『幼馴染』『後輩』という若さと狂気の最凶タッグ VS 『教師』という権力と狡猾さを持つ大人のヤンデレ。

「ん……むにゃ……みんな、仲良く……して、ね……」

そんな一触即発の地獄の空気を知る由もなく、睡眠薬でスヤスヤと眠る綾人の能天気な寝言が、進路指導室に虚しく響き渡る。

誰一人として引く気のない、綾人の貞操と全存在を懸けた『四つ巴の仁義なきヤンデレ戦争』の火蓋が、今、ここに切って落とされたのだった。


お読みいただきありがとうございました。

もし「面白かった!」「続きが読みたい!」と思っていただけましたら、ページ下部にある【ブックマークに追加】や、【☆☆☆☆☆】の評価を押して応援していただけると、今後の執筆の何よりの励みになります!

次回もどうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ