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僕の妹がこんなにヤンデレデレになるなんて〜狂い始める日常〜  作者: 虹の箸


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センサーを持つモノ達

志乃の白く冷たい指先が、深い眠りに落ちた綾人のシャツのボタンを一つ、また一つと外していく。

「ふふっ……水瀬くんの胸板、制服の上から見るよりずっと逞しいのね。でも、心はこんなに無防備で……たまらないわ」

進路指導室のブラインドは完全に下ろされ、密室となった空間には志乃の荒い吐息だけが響いていた。

志乃は綾人の露わになった胸元に顔を埋め、その肌に自らの赤いルージュの跡をゆっくりと、刻み込むようにスタンプしていく。

綾人の貞操が、まさに大人の毒牙によって完全に奪われようとしていた、まさにその時。

――彼女たちの『愛のレーダー』は、物理的な距離や常識を軽々と凌駕していた。


【幼馴染・橘琴音の場合】

「……おかしいわ。盗聴器から聞こえる綾人の心拍数が、異常にゆっくりすぎる」

図書室で自習をしていた琴音は、イヤホンから流れる音に眉をひそめた。ただの居眠りではない。これは明らかに、薬品によって強制的に落とされたような、深く重い寝息だ。

「場所は……進路指導室。まさか」

琴音は音もなく席を立った。彼の元へ。


【妹・水瀬結衣の場合】

「……お兄ちゃんのGPS、放課後から1ミリも動いてない。いくら進路相談でも長すぎる」

教室でスマホを睨みつけていた結衣は、画面の現在地(進路指導室)を拡大した。

お兄ちゃんが進んであんな場所に長居するはずがない。誰かに、無理やり引き留められている?

「……あの女狐(教師)、お兄ちゃんに手を出してる?!」

結衣はカバンからカッターを掴みカチチチチという刃を出す音と共に教室を飛び出した。


【後輩・瀬戸凛の場合】

「……匂う。匂うッスよ」

空き教室でチェロを抱えていた凛は、ふと鼻をヒクつかせた。

綾人が来るのを待っていたが、一向に現れない。それどころか、校舎の奥深くから、何かひどく甘ったるい(はきけのする)臭い、綾人が汚されようとしている嫌な匂い(かんかできないよかん)が、凛の野生の勘を強烈に刺激していた。

「私のセンパイを食おうとしてる害獣がいるッスね……上等ッス」

凛は足元に隠していた『バールのようなもの』を拾い上げた。

バンッッ!!!

進路指導室の重い鉄扉が、凄まじい轟音とともに蹴り破られた。

「「「――そこから離れろ、泥棒猫(教師)!!」」」

砂埃の舞う入り口に立っていたのは、息を切らし、瞳に本気の殺意を宿した三人の少女――結衣、琴音、凛だった。

「あら。ノックもなしに指導室に入ってくるなんて、随分と教育の行き届いていない生徒たちね」

三人の乱入にも関わらず、志乃は全く慌てる素振りを見せなかった。

それどころか、綾人の胸元にべったりと張り付いたまま、ゆっくりと顔を上げ、銀縁メガネの奥で冷ややかな笑みを浮かべたのだ。

綾人のシャツははだけ、首筋から胸元にかけて、生々しいキスマークがいくつも咲き乱れている。

「お、お兄ちゃんに何してるのよこの変態女ぁ!!」

結衣がカッターの刃をチャキッと鳴らし、真っ先に飛びかかろうとする。

「待ちまりなさい、水瀬さん。それ以上近づけば、『刃物を持った生徒に襲われたため、正当防衛で対処した』として、即座に警察を呼びますよ。あなた、退学になるわよ?」

「っ……!」

志乃の、大人としての『社会的権力』を盾にした冷徹な一言に、結衣の足がピタリと止まる。

「くっ……教師の分際で、生徒に睡眠薬を盛って手を出そうとするなんて、狂ってるわ!」

琴音がギリッと歯を食いしばる。

「そうッスよ! そのまま教育委員会にチクられて社会的に抹殺されたいッスか!」

凛がバールを構えながら吠える。

しかし、志乃はクスクスと余裕の笑い声を漏らした。

「教育委員会? 言えばいいわ。でも、証拠はあるの? この子は『進路の悩みを打ち明けて泣き疲れ、ここで眠ってしまった』だけ。私が少し応急処置かんびょうをしただけよ。逆に……」

志乃は立ち上がり、白衣を翻して三人の前に立った。その気迫は、三人のヤンデレを圧倒するほどの重圧プレッシャーを放っていた。

「水瀬くんの通学カバンに盗聴器を仕込んでいる橘さん。彼のスマホに不正アプリを入れている水瀬さん。そして、凶器を持って校内を徘徊している瀬戸さん。……あなたたちの方が、よほど犯罪者予備軍じゃないかしら?」

「「「なっ……!?」」」

「私の一存で、あなたたち三人を停学、あるいは退学に持ち込むことは簡単なのよ。そうなれば、あなたたちは水瀬くんから物理的に引き離される。……それでもいいの?」

大人の狡猾さと権力。

そして、自分たちの裏工作を全て把握されているという事実に、三人は完全に言葉を失った。

このまま力押しで奪い返そうとすれば、最悪の場合、綾人に会えなくなる。

怒りで三人がワナワナと震えていると、志乃はふっと表情を和らげ、信じられない提案』を口にした。

「でも、安心して。私はあなたたちを退学にしたいわけじゃないわ。……むしろ、あなたたちのその情熱は評価しているの」

「……どういう、意味よ」

「簡単よ。私たち四人で、水瀬くんを共有シェアしない?」

「はぁ!?」

三人の声が重なる。

「条件はこうよ。私が『管理者』として、教師の権限をフル活用して、水瀬くんに近づく他の有象無象の女子生徒たちを完璧に排除してあげる。あなたたちが安心して彼を愛せる環境を作るわ」

志乃は綾人の頭を優しく撫でながら、悪魔のように微笑んだ。

「その代わり……おいしいところは、私がいただくわ。あなたたちは私の管理下で、彼との時間を平等に分け合うの。……でももし私に逆らえば、即座に彼から引き離すわ。どう? 悪くない提案でしょう?」

三人の少女は、息を呑んだ。

これは同盟ではない。圧倒的な権力を笠に着た、第四のヤンデレによる『支配の宣告』だった。

眠り続ける綾人を挟み、沈黙が降りる。

狂気の共有か、それとも破滅を覚悟の全面戦争か。

大人と子供、四人のヤンデレによる綾人を巡る地獄は、今ここで最凶のフェーズへと突入しようとしていた。


お読みいただきありがとうございました。

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次回もどうぞよろしくお願いいたします。

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