表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドングリ魔法はまだ飛べない ~でも、3センチなら飛べるもん!~  作者: 大沙かんな
第九章 疾風篇 (一年生後期)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/77

64.班決め

「早く班を作らないと!」


 前の時のようにぼーっとしていると、どんな班になってしまうかわからない。


「まずは殿下だな」


 今回は素早く動き出したキャナリーたちだったけど、それよりさらに早い者たちがいた。


 アーシュラが声をかけようとしたその時には、殿下はすでにトルネ嬢と三人娘の班に取り込まれた後。


 あまりの早業に唖然とするキャナリーたちの頭に、トルネ嬢の笑い声が響き渡る。


「お~ほっほっほ! これでトルネ班は完全体ですわ~!」



「おいおい、素早すぎるだろ……」

「男子があと二人必要ですね」


 これはかなり急がないと危ない、彼女たち三人がそう思った時、二人の男子がなぜか向こうの方からやって来た。


 一人は茶色の長髪で青白い顔が隠れている。もう一人は亜麻色の……横ロール。


「男女の……混合だから……」

「ボクたち二人と君たち三人、これで五人になるよね!」


 青白い顔の方はニュマ、横ロールは確かクルル。


 これは大変な二人がやって来てしまったぞ、そう感じてジャネたち女子四人の方に目を向けると、そっちはそっちで何か揉めているような雰囲気だ。


「そうね、これで五人。歓迎するわ!」

「おいちょっと待て!」


 慌てて止めようとするとアーシュラをショミンダが無理やり黙らせた。


「アーシュラ、いいから今は黙って。これが最良なのよ?」

「やっぱり……わかるか……?」


 ショミンダはまだよくわかっていないアーシュラとキャナリーの頭の上に手を乗せると、ググッと力を入れて二人の首をまだ揉めているクラスメイトたちの方に向けさせる。


 そこで目に入って来たのは、ジャネたち女子四人と、カミオンを含む男子六人。


 そして突然始まるジャンケン大会。


 勝って大喜びする女子三人と男子二人のすぐ横には、憮然とした表情のカミオンと今にも死にそうな顔をしたジャネ、さらには放心状態で固まった男子三人が突っ立っていた。



「で、班長は子爵家のボクだね!」

「俺は……伯爵家……当然班長は……俺……」


「ダメだよ、ちゃんとジャンケンで決めないと!」

「くじ引きも良いですね」

「運で決めるのは……良くない……実力で……」


「そうなると、魔法剣士の私が班長だな」

「えへへ、私が副班長かな」


 実力で、などといいつつ、青白い顔のニュマも横ロールのクルルも、それは気に入らないみたいだ。


「じゃあどうする? もう一度戦うか?」

「それより、魚釣りで勝負しましょう」


 一番大きなドングリを見つけた人、そう言いかけてキャナリーは口をつぐんだ。ちょっと面白いことを思いついたのだ。


「紙人形の騎士を作って戦わせるのはどうかな?」

「それってどういうことですか?」


「えっとね、こうして……」


 キャナリーは便せんを取り出すと、それを八つに切って小さな紙を作る。その小さな紙を二つ折りにすると、人の形に切り抜いた。


 さらに同じ人形をもう一つ作って、新しい便せんの上に向かい合わせに立たせる。


「で、こうしてトントンしたら、騎士が戦うよ!」


 簡単に言えば紙相撲だ。


「ほう……これは……面白そうだ……」


 また変なことをやりだした、とショミンダやアーシュラが止めに入る前に、なぜかニュマが興味を示した。


「騎士って、剣も盾も持ってないじゃないか」

「他の紙で……作って……のりで貼ればいい……」


 まあ一度やってみよう、そういうことになった。



 そう決まると、みんなそれぞれ楽しそうに騎士を作り始めている。


「やっぱり盾には家紋を描きたいな」

「右手の武器は好きな物にしていいことにしませんか?」


 ショミンダの騎士が右手に持っているのは剣じゃなくて魚だ。


 キャナリーは剣の代わりにリリス、そのリリスは両手にドングリを持っている


「これでリリスも参加できるよ!」

「もっと大きいドングリが欲しいモモ」


「ならば俺は……魔法薬を……」


 ニュマは思った以上に手先が器用らしく、どうやって作ったのか、その盾は本物と同じように少し丸みを帯びている。右手に握っているのは立体的に作られた壺だ。


 クルルは頭の両側の横ロールをビヨンビヨンさせながら懸命に何かを作っていた。何だろうと思って覗き込んでみると、紙を巻物のように丸めて騎士の頭に貼りつけている。


「やはり高貴な者には横ロールが必要だからね!」


 どうやら横ロールさえあれば武器は必要ないらしい。



「で、これってどうなったら勝つんだ?」

「先に転んだら負けだよ!」


「ちょっと練習してみましょう」

「う~ん……場外……逃げ切った……」


 剣術の試合だと、何度も場外に逃げてると戦う気が無いという理由で負けになる。


「二回場外に逃げたら負けにしませんか?」

「いいね、ボクも賛成だ!」



 和気あいあいと調整していたら、周囲にいつの間にか人だかりができている。


「お前ら、また変なことを始めたな」


 どうやら殿下もかなり興味があるようだ。


「お~ほっほっほ! ここはわたくしの出番ですわね! いざ勝負ですわよ!」

「へっへ~ん、望むところだよ!」


 気づいたらなぜか、キャナリー班対殿下トルネ嬢連合との対決になっていた。



 まずはキャナリー対トルネ嬢。偶然にも魔法剣術の部と同じ組み合わせだ。


 トルネ嬢の騎士は両手に扇、縦ロールの髪の毛にとんがり帽子まで乗っている。


「左手は盾じゃないと駄目だよ?」

「何をおっしゃいますの? この扇は鋼鉄製。どんな攻撃でもはじき返すのですわ~!」


 キャナリーの騎士は左手に盾、右手にリリス。盾で敵の攻撃を受けて、リリスで殴り返すスタイルだ。


「リリス、行くよ!」「痛そうモモ……」

「その武器が弱点! この勝負、貰いましたわ~!」


 とんとんとん、ぽてっ。


「わ~い、勝ったぁ!」

「三回! 三回勝負ですわっ!」


 とんとんとん、ぽてっ。ぽてっ。


「えっへん、楽勝だったね!」

「むっきぃ~~っ! やっぱり十回! 十回勝負ですわ!」


「まあ待て、次は俺だ。相手は……やはりアーシュラ嬢だな」


 あっさりと三連敗して悔しがるトルネ嬢を押しのけるようにして、殿下が出てきた。こちらも魔法剣術の決勝戦の雪辱戦だ。


 ぽてっ。ぽてっ。ぽてっ。


「な、なんと……」

「はっはっは。走り込みが足りないぞ!」



 これでキャナリー班の二連勝。トルネ班はもう後がない。


「みなさん、負けは許しませんわよ」

「はい、頑張ります、トルネさま!」


「まず私が行きますね」

「その次がボクだ」

「最後は……俺だ……覚悟しろ……」


 ぽてっ。 「え、嘘……」

 ぽてっ。 「ああ、横ロールが!」

 ぽてっ。 「薬のフタ……開け忘れた……」


 なんと三人娘、ショミンダ、クルル、ニュマをなぎ倒し、三連勝して勝負をひっくり返してしまった。


「単純……でも奥が……深い……」

「お~っほっほっほっほ! これこそが友情、努力、勝利の完全な方程式なのですわ~!」



「インチキだよ! 扇子でパタパタしてたもん!」

「ぎくっ! いいい言いがかりですわよ」


「それならもう一回、勝負だよ!」

「その勝負、受けて立ちますわ~!」


「……っと、その前に」


 キャナリーが騎士の武器をリリスからいがぐりに入れ替える。


「ひ、卑怯ですわ~~!」



 この騒ぎに、他の班の男子たちにも火がついた。


「おい、俺たちも参加しようぜ? な?」

「お人形が可愛くないし、男子だけでお願いしたいわ」


「じゃあ、班代表で飛び入りしてくるぜ!」


 紙の騎士での戦いは班対班の団体戦から、個人戦へと発展していく。


「くそ~、二人がかりなのに負けた!」

「三人娘……強すぎる」

「こうなったら三人で行くぞ!」


「う、馬は卑怯だぞ!」

「いや、騎士なら馬は必須だろ?」


 二対一や三対一の対戦どころか、馬に乗った騎士まで現れた。


「ああ、俺の騎士が……」


 そしてまさかの落馬。



「まだ授業中なんじゃがのう……」


 仲間に入れてもらいたそうに見守るエライ先生に、班長が決まったことを報告をする生徒は、放課後しばらくするまで現れなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ