第42話 クリパ④
「そりゃあ、今話題だもん。普段VTuberとか知らなくてもSNSで話題になれば嫌でも耳に入るよ」
「すごいよね。本人はSNSや配信で謝罪までしたのに今だにアンチリスナーが喚いているもんね」
種咲と桜庭が赤羽メメの炎上した件について語る。
「切り抜きとかでも見るよねー」
「問題のシーンが抜粋されているの?」
私は種咲に聞く。
空回りしてキレ芸をしたシーンが切り抜かれて流される。それは自分にとって恥ずべきとこを大勢に見られるということでもある。
こういうのをデジタルタトゥーというのかな……ちょっと違う?
「それもあるけど、解説系の切り抜きかな。結構あるよね」
「解説系の切り抜き? 何それ?」
「解説系配信者が赤羽メメの炎上を解説しているのよ。で、それの切り抜きとかショート版が作られているの。本人が作ったり、周りが作ったり。結構多く作られているね」
「そもそもその解説系って何?」
「いるじゃない。ネットで話題のゴシップネタを解説する人」
「へえ、そんなのもいるんだ」
それは初耳だった。
「今じゃあ、テレビ番組や週刊誌も配信している時代だからね」
「テレビ番組……見逃し配信だっけ?」
「いやいや、そっちじゃないから。テレビ番組なら番組紹介。ニュースなら一部分とかね。触り程度を動画で流しているの」
「そういえば時々見る。違法アップロードと思ったら公式のやつ」
「そうそうそれ。今では若者もテレビ離れが深刻化しているからなんとかして引き戻そうとしているのよ」
「テレビは分かるけど週刊誌も?」
週刊誌は読む物。それが観るものとして活動している。なんとも不思議なこと。
「そうだよ。週刊誌もゴシップ内容を動画編集して流しているよ」
「そんなのもあるだね」
「ゴシップネタとか結構流行ってるよ。ちょっと前は都市伝説系も流行ってたからね」
「嘘くさいね」
「都市伝説だからね。でも、人ってなぜか観ちゃうらしくて再生数もすごいのよ」
「へえ。今の若い子ってそういうのも観るんだね」
「いやいや、私らも若いから」
「そうでした」
私達は華の女子大生。
「それに観ているのは若者というかおばさんとかだよ」
「そうなの?」
「芸能ネタはおばさん。日本すげーネタはおっさんが多いよ」
「日本すげー? 何それ?」
「日本のここがすごい話とか海外が驚く日本の文化や歴史。いわゆる日本賛美モノ」
「なるほどねー。そんなのもあるんだ。ちなみに芸能ネタって本当なの?」
「ほとんどがこじつけよ。所詮は一般人。裏も取らずにあることないことペラペラとね」
「ま、そんなだから今では配信者もマスコミ気取りなのよ」
と、瀬戸さんが間に入る。その声はどこか冷たい。メメに関することだからだろうか。
「あることないこと言ってね」
「適当なことを言ったら訴えられるんじゃない?」
「真実相当性があるから」
真実相当性。前に涼子から聞いた。情報からそのように真実を認識してもおかしくないというもの。たとえそれが間違っていても。
「ま、馬鹿過ぎることや突拍子もない憶測は訴えられるでしょうけど。あいつらってギリギリを攻めるからね」
「大変だね」
今、私が言える感想はそれだけ。
そりゃあ、姉としてあれこれ言いたいことはあるが、ここで私がオルタと知っているのは美菜と瀬戸さんと石見さんだけ。半数が知らない。
だから他人事のような反応しかしてはいけない。
「可哀想そうだよね。粘着されてさー」
種咲が同情の言葉を吐く。
「粘着系っているよねー。謝っても謝ってもしつこく謝罪を要求する奴」
桜庭が溜め息交じりに言う。
「バイトをしてる時もさ、たまーにいるのよ。小さいことでちくちくさー」
「さ、暗い話は終わりにして、もう一曲歌たおう」
「そうね」
「その前にドリンク、頼んでいい? それとポテトも無くなった」
豆田が空の皿を指す。
「あんた、どんだけ食ってんのよ!」
私、ポテト全然食べてないよ。
「私だけじゃないよ。皆でポリポリ食べてたよ」
豆田は手で周囲を示す。
「いやいや、私少しだよ」
美菜が手を振って否定する。
「まあまあ、もう一皿頼みましょう」
瀬戸さんが内線の受話器を持つ。
「次は唐揚げも」
豆田が手を挙げた。
「そんなに食って大丈夫?」
私は豆田に聞く。
「大丈夫。朝から何も食べてないから」
「てか、後でフライドチキン頼むんだよ」
「そっか。それなら唐揚げはキャンセルで」




