第37話 配信後
「では今日の配信はこれでおしまいでーす。皆、クリスマス前だけど良いお年をー」
『本当にお休みするんですか?』
葵が不服を申し立てる。
「する。絶対」
『さんざん休む休むって言っておきながら、お仕事してますよね?』
そう。なんだかんだで葵の紹介やペイベックス下半期イベントのゲーム練習配信までやらされた。
それも終わり。
確実に休む。
配信はしない。
「何がなんでも休む! そして明日はクリパ。パァーと皆で騒ぐぞ!」
『リスナーそっちのけでクリパするんですか?』
「します。リスナーも誰かとクリパしておいて。なんなら他の配信者がクリスマスに何かやってると思うから観るといいよ」
『リスナーさん、浮気しちゃうよ?』
「そもそも私にガチ恋勢はいりません!」
本当にガチ恋されるとマジで困る。
リスナーにはファンであって欲しいのだ。
『そのクリパに男はいるんですか?』
「いねぇよ! 女だけ! 男共寄って来ないためにそれなりの人数でだよ!」
『本当ですか?』
「あんた、知ってるでしょ?」
葵は私のスケジュールを知っている。
教えてなくても勝手にスマホのメールやメッセージを見て知っているやつだ。
『今、スマホのメールやメッセージを勝手に見てると思いましたね』
「当てるなよ」
『私だって相手のプライバシーを尊重してますよ。それにただサポートAIですから、変なことは出来ませんよー』
とは言うがこいつは量子コンピューターだ。しかも自我持ち。私のパソコンやスマホ、繋がるところは好き放題に移動出来るのだ。
「ならこれ以上クリパの話はしないで」
『はいはーい』
「というわけでオルタの今年最後の配信でしたー」
『良いお年をー』
私は練習配信を終了させ、パソコンの電源を切る。その後すぐ私はスマホで葵を呼び出した。
「葵、ちょっといい?」
『なんですか? もう私が恋しくなりましたかー?』
「違うわよ。ちょっと聞きたいことがあるんだけど佳奈の方は大丈夫そう?」
『大丈夫とは? 炎上の件ですか?』
「そうよ」
佳奈は同期との配信で無理にキレて空気を最悪にしてしまい炎上していた。同期とは仲直りし、SNSでは謝罪もした。それでもSNSでは炎上中。
あれから私はアイドルカラーズと爽快バトルテニスの練習配信をしていたので、現在の状況は知らない。
家族だから家で顔を会わすけどこれといって何もない感じ。
しかし、あの子はああ見えて意外と頑固で家族に弱音を見せない子。
『残念ながら鎮火はしていませんね』
「そっか」
『一応、コメント欄では悪質なアンチコメントは消してますけど』
「SNSはしてくれてないの?」
『やろうと思えば出来ますけど、それだとアメリカ側に私の存在がバレます。ですので、SNSはノータッチです。佳奈さんがエゴサをしていないことを祈るばかりです』
無理だろうな。あの子は私と違い、きっとエゴサをしているはず。
「なんか策はないのかな?」
『オルタといっぱい配信して好印象を作るのは?』
「ダメ」
『それは休むためですか?』
「違う。もともとあの子が暴走したのは私が原因。好印象を与えて鎮火をはかっても、根本的なとこは解決していない」
私ことオルタが目立てば目立つほどあの子を苦しませるだけ。
『いいじゃないですか。今は鎮火させ、根本的問題はおいおいと──』
「ダメ。ここでしっかりとしないと」
『ずいぶんお厳しいことで』
「元々この問題はペイベックス上半期イベントの頃からあったものだから」
一度は浮上して沈んだ。
問題は解決したかと思ったがまた再浮上。
原因は私。
自惚れているつもりはないが、ここ最近、私が活躍したことが佳奈を追い込んだのだろう。
『ここいらが正念場ですね』
私を息を吐き、「そうね」と言う。
佳奈がVTuberを辞めたら私も辞めるのだろうか。
赤羽メメ・オルタはもとの赤羽メメがあってのもの。
オルタだけが残るのはおかしい。
そして佳奈が辞めると5期生は4人になってしまう。皆とは合宿もして仲良くなった。別れるのは惜しい。
「そういえば佳奈はクリスマスは5期生と配信の予定だけど大丈夫そう?」
『5期生の皆さんとは仲直りはしてるので、そこは問題はないかと。問題はアンチコメントですね』
当事者は解決して済ませているのに、まだ納得してしていない人達がいる。そういう人達はコメント欄でアンチコメントを投稿する。
「コメント欄はお願いね」
『合点承知の助』




