第35話 爽快バトルテニス③
NPCとの対戦モードで私はスッポンキャラのポンポン君を巧みに使って、ボールを打ち返す。
『おっ! いいですよー! その調子です!』
「おう!」
私はスライスで返ってきたボールをトップスピンで打ち返す。
ボールは相手の反対側。相手はなんとか追いついてロブで返してきた。緩やかに弧を描くロブに私はジャンプショットでトドメをさす。
相手は打ち返せず、私にポイントが入る。
『ナイスですよ!』
その後も私はスマッシュをチャージショットでボールを強く打ち返しながらポイントを稼いで7ポイントを先取した。
「勝ったー!」
『ナイスゲームでしたよ』
葵がパチパチと両手をはたく。
「ま、こんなもんよ」
私ってなかなかセンスある?
「けど、なかなかポンポン君の必殺技【無敵モード】を使うタイミングがこないね」
ポンポン君の必殺技【無敵モード】は相手が火の玉ボールやら雷撃やらプレイヤーのダメージを与える技を使った際に使用するのだが、対戦相手のNPCは必殺技を使わずにプレイしていた。
『対戦レベルを上げてはどうです?』
「そうね。今のはレベルいくつだったの?」
『レベル1です』
「レベル1って……クソ雑魚じゃん」
それで喜んでいたのが恥ずかしいな。
『レベルは10段階ありますから一気にレベル5くらいに挑戦します?』
「そうだね」
次はレベル5にして対戦を始めた。
◯
「……レベル5は難しいわ」
3回戦やった。その全てが負けで終わった。
私より強く、3ポイント取るので精一杯。
『では、レベル4にしましょう。それならイケるかもしれませんよ』
「ちょっと休憩。あんたやってみなさいよ」
『AI対NPCはシュールではありませんか?』
「いいじゃない。面白いじゃん」
『仕方ありませんね』
私の代わりに葵がプレイする。
「リスナーのために説明しておかないと」
『そうですね。ええと、ハッキングしてプレイしてまーす』
「ちげーだろ。リアルでハンド型マニュピレーターでコントローラーを操作してんだろ!」
本当はそれも嘘である。
葵は本当に違法ハッキングでプレイするのだ。
けど、それだと世間が騒がしくなるので、嘘を考えた。
それがマニュピレーターでコントローラーを操作するということ。
『はい。そうでーす』
「まったく」
『いやあ、夢があったほうが面白いかなって』
葵はキャラを選び、レベルを選択する。
「ん? 別のキャラにするの?」
葵が選んだのはハリオシリーズのレベッカ姫。必殺技は【ムーンボール】。ボールがすごく曲がると説明に書いている。
『はい。私は経験者ですので』
「いつ経験した?」
これはオルタとしての疑問ではなく、現実に関する疑問。私の知らぬ間にやっていたのか?
『AIはデータさえあれば経験者なのです』
「何その便利設定ずるくいない?」
『人間も将来、脳内チップやデバイスが生まれて経験データで成績とか上がるかもしれませんね』
「しまいにはあんたらに体を乗っ取られそうね」
『あるかもしれませんね』
「人類のためにここでアンストすべきかな?」
『やめてー』
葵はNPCのレベルを5に選択して対戦をスタートさせる。
「レベル5なの?」
『私の対戦を見て、勉強してください』
「ならポンポン君を使えや」
そしてテニス対決が始まった。
葵が操作するキャラはパワーは低く、スピードは遅めだがコントロールは抜群で相手に嫌なところへとボールを上手く打ち返す。
『どうです?』
「すごい、すごーい」
『……ちゃんと見てます? 返答がおかしいですよ』
「……んっ、見てる」
パリバリッ
『なんか食べてますよね』
「休憩中だから」
ポテトチップスを食べながら私は葵の対戦を見ている。
『もー!』
葵はジャンプショットで相手にトドメを刺した。
「すごーい。勝ったー! もう一回、見たーい」
『ちゃんと見てくださいよ!』
画面内の葵がぷりぷりと怒る。
「いやあ、参考になるねー」
『具体的にどこが?』
葵が疑うような目をして私に尋ねる。
「……う〜ん。相手がミスったら強い目に打って仕留めるとか?」
『なぜ疑問系?』
「マジ参考になった」
『なら次やりますか?』
「まだ食べてるから。食べ終わったら対戦する」
『もー!』




