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九話 マリーとお出掛け

俺は宿までマリーを迎えに来ていた。

マリーの部屋まで行き、コンコンとノックをする。


「マリー、迎えに来たぞ。」


ガチャッと扉が開く。


「早かったね。」


俺達はそのまま外に出る。

外に出ると不意にマリーが俺の腕に抱きついて来た。


「……。何をしてるんだ?」

「こうやった方がはぐれないでしょ?」

「はぐれるって言っても街中だから帰ってこれるだろう?」

「女の子一人で街中は危ないじゃない。それに、こうやってれば得な事もあるわよ。」

「得な事?」

「それは見てたらわかるわ。」


マリーがそう言うので俺は気にしない事にした。

そもそも、俺に拒否権など無いのでどうこうしようと言う事もないのだが。

マリーと腕を組みながら、町中を散歩していく。

本来は今日、殺しに必要な道具を買い揃えようと思っていたのだが、マリーがついて来たので取り敢えずマリーの服を選ぶ事にした。

しかし、これがまた長かった。

あちらの世界でもアリアは服については厳しかったが、こちらでも女の子は服には厳しいらしい。

マリーはとにかく服屋を出たり入ったりを繰り返した。

それも何時間も。

流石に朝の用事が早く終わったと言ってももうとっくにお昼の時間が過ぎていた。

俺は別にいいのだがマリーはお腹が空かないのだろうか。


「マリー、だいぶ時間が経っているが昼飯は食わなくていいのか?」

「あ!本当だ!ごめんねソラ!」

「いいよ。それより、大体決まったのか?」

「うん。大体決まったわ。お昼食べてから買いに行きましょう。」

「お昼は何処にするんだ?正直、俺はこの街の店には疎くてな。」

「それなら、私のとっておきの店があるから来なさい。」


そうしてマリーに案内された店は何処にでもありそうな食事処だった。


「ここか?」

「ええ、そうよ。」


そう言って、マリーが中に入る。


「あら、マリーちゃん!」


そう言って店のおばさんが飛びついてくる。


「おばさん。久しぶり。」

「久しぶりじゃないわよ!私はマリーちゃんが……マリーちゃんが死んじゃったのかと思ってたのよ!」


そうマリーは表沙汰には死んだ事になっているためこの反応はおかしな事ではないだろう。


「こっちにも色々事情があってね。」

「大変だったのね。で、そっちの坊やは?マリーちゃんのこれかしら?」


そう言っておばさんが小指を立てる。


「ソラとはまだそんなのじゃないわよ!」


マリーが顔を赤くして注意する。


()()なんて。ウフフ、脈ありなのね。」

「〜ッ!もう知らない!」

「ごめんごめんってば。えーっと?」

「ソラです。ソラ・サトミ。」

「ソラ君ね。変わった名前ね。」

「そうですね。サトミの方は呼ばれる事はほとんど無いので呼ばないでいいです。」

「わかったわ。それで、今日はご飯を食べに来てくれたのかしら?」

「そうよ。おばさん、ソラにアレを食べさせてあげて。」

「アレね。わかったわ。」

「?」


俺が何の話かわからないと言う顔をしていると、


「そのうちわかるわよ。」


とマリーが言ってきたので俺は黙って待つ事にする。

暫くして出てきたのはシチュー?の様な物だった。


「ここのシチューはとっても美味しいんだから!食べて!」


俺はマリーに促されるまま食べる。


「……美味しい。」


まともな料理などこの数年間ではアリアの元にいた時にしか食べていなかったので、細かい味はよく分からなかったが文句なしに美味しかった。


「フフフ、そう言って貰えると嬉しいわ。」


俺とマリーはシチューを食べ進める。


「ねえ、マリーちゃん。どうして死んだ事になってるの?」

「それは……」


マリーが俺に視線を向けてくる。

言っていいのかという確認の様だ。

俺は無言で頷く。


「私の素性が王妃にばれちゃったの。」

「そういう事ね。」


どうやら、マリーが妾の子供である事は知っていたらしい。


「で?ソラ君とは何処で知り合ったの?」

「ソラとは私が隣の町から帰ってくる時に盗賊に襲われていたのを助けてもらったのよ。」

「この子に?」

「おばさんはソラが子供に見えてるかもしれないけどソラはそこら辺の大人なんか目じゃないくらい強いわよ。何せ十数人の暗殺者達を瞬殺して戻ってくるぐらいなんだから。」

「それは……異常ね。」


俺は黙っていた。

懐のナイフをいつでも引き抜けるように握ったまま。

このおばさんの対応次第では排除も視野に入れなければならない。


「ソラ君、あなたの両親は何処かにいるの?」


マリーがピクッとする。

内心マリーも聞いてみたかったんだろう。

俺は少し考え、事実を言うことにした。


「両親は……俺が殺した。」


その返答は予想していなかったのかおばさんもマリーも驚いた顔をしている。


「どういうこと?」


おばさんが声を震わせながら聞いてくる。


「言葉通りだ。俺が殺した、この手で。」

「何故?」

「分からない。」

「分からない?」

「何故あの時あんな気持ちになったのかぎ分からない。だけど、俺は母さんを助けたいと思った。だから、俺は父さんを殺した。」


俺の言葉から何かを察したのかおばさんはそれ以上追求してこない。

マリーも気を使っているのか聞いてくる素ぶりはなかった。


「なんか暗い話になっちゃってわね!明るい話でもしましょう!」


暫く暗い空気が流れた後、マリーが話を切り出した。


「おばさん、私冒険者になったんだ!」

「そうなの?」

「うん。今はソラに色々教えてもらってるの。」


二人の会話はそれから数十分ほど続いた。


「おばさん、また来るから!」

「ごちそうさまでした。」

「ええ、また来てね。」


俺達は再び街で買い物を始める。

あんな話をしてしまったがマリーは気にしていないようなので良かった。

俺達はマリーの服を買い、ベンチに座っている。


「ソラは服要らないの?」

「俺にはこれで十分だ。」


ゼクスに貰った服を指す。

動きやすいシャツとズボンなので気に入っている。


「でも、一着しかないでしょう?」

「?服なんて一着あれば足りるだろう?」

「は?何着か持ってるのなんて当たり前じゃない!ソラちょっと来なさい!」


俺はそれから服屋に行かされ、マリーチョイスの服を買わされる。


「まあ、これだけあれば大丈夫ね。」


3着ほど買わされた。


「そう言えば、ソラは今日何を見る予定だったの?」

「ああ、じゃあ行こうか。」


そう言ってマリーを引き連れ、防具屋による。


「今日はマリーの装備を買おうかと思っていたんだ。武器はあのおっさんの所で作って貰ってるが、防具は作って貰ってないからな。」

「それはいいけどソラは?」

「俺は防具は無くていい。」

「どうして?」

「攻撃に当たらないから。」


防具は暗殺者とは相性が悪いのだ。

防具をつけているとどうしても音がなってしまう。

そのため俺は最低限の装備しかあちらの世界でもしていなかった。

俺はマリーに合いそうな軽装備の防具を選び、マリーに試着させ、マリーが気に入ったようなので買い、店を出た。


「今日、結構お金使っちゃったかな?」

「そうだな。」

「でも、得だったでしょ?」


今日はなんだかんだ言って、銀貨50枚ほどの買い物はしている。

だが、本来はもっと値段がしたのだ。

しかし、俺達が腕を組んでいるのを見て、カップルに見えたのだろう店の人が値引きしてくれたのだ。

それでも朝の収入が無ければ財布が空になっていただろうが。

俺達はそんな事を言いながら宿に帰る。

しかし、俺はある一点に視線が吸い寄せられる。


「ソラ?」


商店街の店の一角で売られている奴隷達にだった。


「おーい、ソラってば。」


少女の奴隷や成人した男の奴隷など多種多様な者がいた。

この世界にもやはり奴隷というものはいるようだ。


「無視しないで!」


マリーにパシパシと頰を叩かれる。


「ん?どうかしたか?」

「どうかしたか?じゃないわよ。何をみてたの?」

「奴隷はここにもいるんだな。」

「ああ、なるほどね。ソラがいたのは田舎なんだったけ?奴隷はね、基本貴族が買うんだけど、最近では農民の金持ちや冒険者も買うって聞くわね。」

「俺も買えるのか?」

「買えるけど奴隷って高いわよ。基本安い子供でも金貨1枚くらいだし。可哀想よね。まだ子供なのに奴隷にされちゃうなんて。」

「そうか?子供なんだからそれくらいの扱いは当然だろう?」

「え?」

「むしろ、戦争で人間爆弾として使われてないだけましじゃないか?」

「……ソラ。」


マリーは理解していた。

ソラがそういう世界で生きて来たことに。

だけど、面と向かって言われるとやはり傷つくのだ。


「ま、いいか。帰ろうマリー。」

「……うん。」


俺はその場から去った。

今回は少し短いですね。

なんの事件もない日常を書くのって意外と難しいです。

次回は土曜か日曜の予定です。

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