表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
糸束  作者: ぬじゃわきし
PR
8/9

…虫どもは計画通り復讐に来た!…これで奴等を法的に始末できる。…我が国の軍隊に始末してもらうだけじゃ!…

電話線を盗聴していた龍子は息を飲んだ。このままでは、小見郎達が危ない…すぐに知らせなければ…幸いにして小見郎達が着ている鎧は通信機能もある。龍子は「ポインセチア」にある予備の鎧を装着し、通信しながら彼らのいる街へと向かった。

“みなさん!”

人間達を追いかけながら、向こうの彼らも声を聞いた。龍子の声だ。なんだろうと思ったら声は続いた。

“みなさん!!早く逃げてください!軍隊が来ます。武器をもった軍隊が来ます!早く逃げないと命が危ないです!”

一行は立ち止まった。

“どうしますか?小見郎隊長”

そう誰かが聞くと、小見郎はしばらく黙り、そして言った。

“我々がなぜ武器を持っているか。それは武力に立ち向かうためだ!ここで逃げるのは許されない!いざ、行くのだ!”

一行は再び進み始めた。龍子がどんなに訴えても聞く耳もたず。結局は私が向かうしかない…


一行の先に黒々と何かがいた。龍子の言う通り、軍隊か。その何かから声が聞こえた。

「お前らは危険分子と見なされ、政府から抹殺の許可を頂いた。ひからびたミミズのように死ぬが良い。」

向こうから爆発音が聞こえ、黒い砲弾が飛んできた。砲弾は回路人間の真後ろのビルに衝突した。周囲はたちまち爆煙に包まれた。




龍子が街についた頃には街は煙と銃声に覆われていた。この中を潜って助けにいかねばならない…怖い…だが勇気を出さねば。龍子は煙の中を進んで行った。


ビルの影に小見郎はいた。彼は両腕を改造した銃で乱れ打ちをしていた。所詮戦いに馴れない連中である。命中率は全く無い。

そして一発の銃声が全てを変えた。それは遠くの方にいた、軍のスナイパーライフル。その弾丸が、小見郎の胸を撃ち抜いた。小見郎は「ごうっ」と呻いて倒れた。

「小見郎くん!」

龍子は彼に駆け寄った。小見郎は苦しみながら言った。

「悔しい…悔しい…悔しい…こんな所で死ぬなんて…」

「助かる方法はあるわ!」

龍子は自分の鎧の腕部と小見郎の鎧の腕部を外した。むき出しになった両者の腕で龍子は接続しようとした…が、小見郎は拒絶した。

「なぜ!?」

「僕は…小見郎として生きたい…」

「でもあなたの体は直に死ぬ!」

「僕は…怖いんだ…龍子ちゃん…君が…怖い…」

龍子は衝撃を受けた。自分は普通に振る舞ってたつもりなのに、恐怖の存在として見られていたのだ。

銃弾はいまだ飛び交う。

「でも助かる道はこれ以外に無い!」

「龍子ちゃんはそう言う自分を奇妙に思わないのかい?」

そう言われて龍子は思った。そうだ。私はいったい何なのだろう。私が誰なのか最近分からなくなった。すでに五人以上の人格と彼女は融合していた。しかし、最近融合した時の言葉を思いだし、言った。

「私は方舟。皆の魂を乗せて運ぶ方舟よ。」

小見郎は鎧の頭でしばらく龍子を見つめた。そして、握手した。

「では、一切を貴方に委ねます。」

そして両者は回路になり、回路は融合した。腕部から小見郎の糸束のような体は引き摺り出され龍子の中へと入って行った。龍子は彼の人生を知った。“回路”になって、親から拒絶された彼。恐怖と不安で苦しんだら彼。そして回路人間の可能性を知り、不安を解決するためにその優越感に浸った彼。その哀れな生涯にどうして龍子は自分が過激な復讐を望まず、人間に対して小見郎のような反感を抱かなかったかを知った。親が“回路”になった彼女を認めてくれたからだ。普通の人間に希望を感じたからだ。



向かえば多くの鎧を来た回路人間が撃たれて倒れていた。彼らのうち生き残った者は絶望を感じて、龍子が来ると、すぐに武器腕をはずして龍子に触手を伸ばし、彼女の元に行ってしまった。そうして次々と人格を吸収してしまった龍子は、鎧のレーダーにより生き残りが一人もいない事を察知した。あとは自分のみ。この鎧を来たら必ず撃たれるであろう。では鎧を脱いで降参するしかあるまい。


龍子は無防備な姿で手を上げて人間の前に現れた。たちまち軍兵は彼女を調べ、捕らえた。彼女は密室の護送車に押し込まれ運ばれていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ