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『最後の辺境伯』  作者: 佐藤なつ


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3/4

新しい友人と恋人

そんな時、上位貴族に隠れて、子爵家や男爵家の子達が話しかけてきた。


そして、教えてくれた。

『告白ごっこ』

そういうものがあること。

入学前に親や、もしくは親族、知人から教えられるんだって。


「まさか、辺境伯家の人がそういうの知らないなんて思わなかったから。」

「業と、引っかかったフリしているのかと思ってたの。」

なんて言われて。

トドメに

「学園の常識知らなさすぎてびっくりした。」

って言われて、恥ずかしくて仕方がなかった。

でも、その子達は色んな事教えてくれた。

学園の暗黙のルールとか色々。

上位貴族の前では声かけられないから、こっそり隠れて集まった。


今更だけど、学園での行動は生徒会の管理下にあるから見つからないようにって言われて。

皆でこっそり連絡を取り合って、体育館の裏とか、演習場とかに集まる。

隠れて何かやるって一体感が生まれる。

すぐに、仲良くなれた

私は友達がいなかったから凄く嬉しかった。

その内、友達になった子の婚約者とかも仲間に入って、その繋がりで紹介してもらった人・・・子爵家の子息と気が合って。

皆でグループ交際するようになった。

ピクニックに行ったりして、郊外の空気を吸うと、私は、こういうのが向いてるって思った。


高位貴族とお付き合いした時は一方的に与えられるだけだったけど。

でも、今度は違う。

教えてもらったら、御礼をする。

家から魔獣の皮とかの素材。

鉱石とか融通した。


時には実家から魔獣討伐隊まで出してもらった。

本当は、討伐隊を動かすには王家の許可がいる。

だから、少人数で、こっそりと。

色んな労力とか考えれば、当家からの御礼の方が過大だったと思う。


それでも、友情はお金に換算できない。

頼られたら応えたい。

そう思った。

父が言っていたのは、こういうことなんだ。

そう腑に落ちた時、なんだか私も大人になったような気がした。

でも、それは甘かったみたい。


ある時、実家から連絡が来た。

父が怪我をした。

かなりな重傷で、跡継ぎの私に至急戻るように。

そう書かれていた。

友人から頼まれていた魔獣素材を得ようとして怪我をしたのだろう。

私が頼まなければ。

罪悪感を胸に、私は、慌てて職員室に向かっていた。


その途中。

また、気配を察知してしまった。

嫌な気配。


また、空き教室。

しかも同じ教室。

今度は、外から見えた。

詰めが甘いっていうか窓が開いてて、普通なら聞こえないんだろうけど、私は聞こえてしまった。

見事な悪口を。


声でわかる。

私を最初に嵌めた侯爵令息と、その仲間の声。

私の『ともだち』と、話してた。

凄く楽しそうに。

「本当、馬鹿ですよね!」

彼の声。

そう、私の恋人・・・だった人の声。

おもねるように言う。

「そんな事、言うなよ。悲しむぞ?付き合ってるんだろ?」

「勘弁して下さいよ!」

その瞬間、胸がスッと冷えた。


私、同じ事に、二度も引っかかるのはどうなの?

って思った。

でも、向こうも同じ事するのってどうなのとも思った。


「楽しそうに見えたが?」

「あいつの相手になったら訳あり認定されちゃうじゃないですか。」

ドッと笑い声が上がった。

その後も、信じられない言葉の連続。

「よっぽど焦ってるのか、ちょっと優しくしてやったら、あっという間に靡いた。」

「田舎者と話を合わせるのに苦労した。」

「ただの田舎者ならまだしも、国の財源を食い潰す不良債権のくせに自分は国を守っているって思い込んでいるのが腹立たしかったんです。」

仲良いと思っていた、女の子達。

彼女たちも、私を相手するのは苦痛だったって囀る。

「そんな事言って、魔獣素材で潤ったっだろう?」

「まぁ、少しは。でも、付き合ってあげた慰労金にしては足りませんわ。」

そこでまた、皆が笑った。

誰かが、

「そろそろ、終わりにしても良いですか?」

なんて言う。

「どんな感じに終わらせましょう?」

なんて聞く。

「そうだな。前は中途半端に終わったからな。その分、派手にやりたいな。」

「そうそう、王国にとっての不良債権だって自分の立場を思い知らせてやらないとな。」

「教えてあげるなんて親切ですね。」

同意する声。

そこに一人の女の子が

「でも、今頼んでいる素材が届いてからにして欲しいです。」

その女の子の婚約者が

「なかなか、来ないんですよね。本当愚図で、役に立たない。」

と、同意した。

頭に、血が上った。

気づいたら、私は、窓をバンって叩いてた。


彼らは私がいる事に気づいて、前と同じように驚いて。

それで、前と同じように、謝罪じゃなくて私を嘲ってきた。


「辺境伯の娘なのに、こんな簡単な企みに気づけないんだな。」

侯爵令息が大きな大きな溜息をついた。

「ハニトラにかかるなんて我が国の国防は大丈夫なのかな?」

同調する取り巻き。

「あいつらが国境を守っているなんて言うのを腹立たしく思っていましたよ。」

彼が言った。

さすがに呆然とした私に、友達だと思っていた子達が追撃してくる。

「次期辺境伯とか鼻にかけすぎ。」

「ただの貧乏人のくせに!」

「貧乏なだけじゃなくて、王国の穀潰し。」


「田舎者は領地で大人しくしてればいいのよ。」

帰れ、帰れ。

田舎に帰れ。

二度と戻ってくるな。


私はもう、言い返すこともできず、その場を去った。

背中には幾人もの嘲笑が降りかかる。


悔しい。

悲しい。


あんな事を言われて。

果てには、我が家は不良債権なんて言われて。


でも・・・私が悪い。

簡単に謀に嵌まった。

違和感だって感じていたのに。

見てみない振りして。

目先の楽しさに捕らわれて・・・。

結果がこれ。


あいつらのいう通りだ。

こんな私が、辺境を守るなんて無理。


国防を担うなんて向いてない。

私。

ずっと、父のことお人好しだって思って呆れてたのに。

私だって、その父を使って、あいつらに尽くしていた。


本当に、情け無い。

本当は、こんな事で負けちゃいけないってわかっている。

だって、私、次代なんだから。


でもね。

もう、無理なの。


最初から無理だったの。

正直なところ、私、怖かった。

王都に一人でくるの。

誰も知らない学園に来るの。

先生達は私の事を、次期辺境伯だって尊重してくれた。

けど、学生達は違う。

違った。

私は、弱っていた。

困っていた。

どうして良いかわからなくて不安だった。

そこに親切な言葉をかけられて、慰められて、気持ちを絆されて。

それで、最後の最後に種明かし。

全部全部、まやかしで。


皆で私を陥れたんだって。

それが楽しいんですって。

私は、こんな世界を理解できない。

だから、もう、無理だ。


気づいたら私は馬に跨がっていた。

休学の手続きも外出の手続きも、先生への挨拶も何もしてないと思った。

けども、私の身体は馬の腹を蹴っていた。

学園の門が見える。

退屈そうに欠伸をしている門番も。

幸い、門は開いたまま。


私は迷うこと無く突き進んだ。

後ろから呼び止められるのも聞かないで。


だって、私は、もう学園の生徒ではない。

ルールを守る必要もない。

なにも、・・・なんにも聞きたく無い。

なのに、あざ笑う声が耳から離れない。

「帰れ。」

「帰れ。田舎に帰れ。」


追いかけてくる言葉。

私は振り払うように馬を急がせた。


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