告白ごっこ
告白ごっこ。
そういうものがあると言うことを、私は知らなかった。
学園で、一部の上位貴族達が暇つぶしにする遊びの一つ。
仕掛ける側の上位貴族は、当然知ってる。
「そんな下劣な事はするな。」
って。
入学前に親兄弟、親族などに言い含められる。
仕掛けられる側の下級貴族達も、知ってる。
そういうことがあるから気をつけなさい。
って、入学前にこちらも親兄妹などから教えられる。
上位も下級貴族も、それぞれ情報交換して、そうやって、自衛している。
我が家は、そういう人脈が無い。
辺境伯だから、位だけで言えば上位貴族。
でも辺境を守っているから、王都に出ることは殆どない。
辺境すぎて隣領との交流も無い。
つまり、私には貴族の友人がいなかった。
教えてくれるような母も。
田舎者、貧乏、情報弱者、落ち目、家の力もない・・・。
恰好の玩具と言うわけだ。
案の定、私は、簡単に引っかかった。
だって、必死だったもの。
友人が欲しい。
あわよくば、恋人・・そして、婚約が結べたら嬉しい。
自分の結婚相手が訳ありなんて絶対嫌だったのだ。
その一心で、学園のルールを知らないまま、誰彼構わず話しかけた。
話しかけまくって・・・見事に浮いた。
あっという間に一人になった。
やらかした事に気づいて、途方にくれた私に手を差し伸べてくれた人がいた。
私は、その手に縋った。
縋ってしまった。
彼は、侯爵家の子息だった。
「大丈夫?僕は生徒会に所属してて、生徒の相談役をしているんだ。」
そう声かけてくれて、学園の事だけじゃなくって、王都も案内してくれた。
観劇や、小物屋に連れていってくれて、かわいい装飾品を買ってくれて。
それも、一度や二度じゃ無かった。
模造石で出来たアクセサリー。
量産されているハンカチ。
どれもこれも可愛いらしい。
平民が大半の店に入って、
「似合うよ。」
って言って買ってくれた。
何回かそういうお出かけがあって。
彼が、指輪を買ってくれた。
「正式に家からじゃないけど、僕の気持ちだと思って欲しい。」
いつものお店で模造石の指輪。
左指につけてくれて。
すっかり舞い上がってしまった。
普通なら、おかしいって気づいていたと思う。
曲がりなりにも貴族令嬢に「模造アクセサリーが似合う。」なんていう言葉をかける。
婚約指輪のような事を言って、安価な指輪を贈ってくる。
その違和感に、気づけなかった。
気づこうとしなかった。
普通に考えたら変だって。
私は、王家から頂く誕生祝いよりも普段使いできて良いとすら思っていた。
完全に浮かれていたから。
これで婚約者を探さなくて良い。
私だけは訳あり相手から逃れられる。
そんな気持ちもあったと思う。
私は安心したかったんだと思う。
本当に心底、安心して、夢見心地の毎日だった。
夢が覚めるのって、突然よね。
彼から贈られたブローチを胸につけ、浮かれ気分で、廊下を歩いている時に、コソコソしている気配を察知してしまった。
空き教室。
周囲を気にしながら入っていく人達。
私の恋人。
その友人。
そして、教室から聞こえてくるヒソヒソ話。
私、辺境育ち。
ここ数十年、戦の気配は無いけど、それでも辺境の一員として見張り当番もこなしてきた。
耳を澄まして。
気配を察して。
そんな生活してたから、気配に敏感で、耳は結構良い。
学園では聞かないように心がけていたけど、不意打ちだから、良く聞き取れてしまった。
田舎者。
貧乏人。
無教養。
あんな安物アクセサリーで喜ぶ、安っぽい女。
気づいた時には、空き教室の扉を開けていた。
彼らは驚いた顔して、すぐに、ニヤニヤ笑い顔に変わった。
「突然、扉を開けるなんてなんて礼儀知らずだ。さすが田舎者だ。」
って私をあざ笑った。
私の方が驚いた。
確かに田舎者だけど。
矜持だけはあった。
我が家が国を守っている。
父の言葉が脳裏に蘇った。
その場で、各家に抗議すると宣告して、すぐに手紙を送った。
私、小娘だけど、次期辺境伯で、王都にいる間は代行だから。
馬鹿にされたら、そのままにしてはいけないって、父に言い含められていたから。
各家からは形ばかりとわかる謝罪が届いた。
そして、学園では、そこから更に針のむしろになった。
と、いうか、存在を無視された。
それか、陰でクスクス笑われた。
私が肩身狭いのはなんか違うんじゃないかって思っていた。
でも、クラスの必要な情報すら回ってこなくなって学校生活に支障が出るようになった。




