たった一つ胸に宿る想い、二人繋いだものが、消え去るとしても。
転校、それは子供にとっては、世界がひっくり返ると言っても過言ではない、俺は小学校最後の年に故郷から都会に引っ越しする事になった。
「ふぅ…………懐かしいな」
俺も18歳になり、小さい頃育った町の大学に、進学する事にした、理由は一つ会いたい人がいるから……ただずっと幸せだったあの頃みたいに。
新しい住居になるアパートに向かい、大家さんに挨拶し、段ボールを片付け雑ではあるが、寝られるようにはする。
「どうすっかなぁ……」
俺は一つの小さな段ボールの処理に困っていた、理由は簡単中にある物をどうすればいいか、分からないからだ。
段ボールを開き、縦長の箱を開く……、そこには変わらず翡翠色の勾玉の着いたネックレスがあった、手に取り首に回し、玄関の扉を開き神社に向かう。
神社には引っ越したら必ず、氏神様に挨拶を兼ねて欠かさず行っていた、けしてよく遊んでいた場所だからでは無い。
自分自身に否定をしつつ、下を向いているとネックレスが目に入る、このネックレスは……大切な人が僕に『幸せに生きれるように』と、作ってくれて引っ越し当日に渡してくれた物だ。
長い階段を登り切る、3月になりようやく寒さを感じなくなったのはよかったが、厚着しすぎたらしく、背中が汗ばんで、シャツがべたついた。
境内の中はいつでも神聖な雰囲気をしていたが、今日も鳥居をくぐる前と今とではやはり違う空気だ。
大切な人に教わった、参拝方法を行い………願う、「同じ物を持っていて欲しい」と。
「やぁ、知らない顔だね観光客さんかな?」
突然人に話かけられた事と、松葉色の狩衣を来た知らない人である事もあり、二重で驚く。
「いえ、今日引っ越して来ました、伊藤武晴です」
「おぉキミが武晴君……いやタケちゃんか……私は"宮部"金多だよろしく、凛もよく話していたよ社務所にいるから、会いに行ってやってくれ」
頭をなるべく使わないよう、無心で社務所に向かう、
久しぶりだからか、何回か転びそうになりながらも、向かうと昔よく遊んでいた場所に、りんちゃんは居た、座椅子に座り大きくなったお腹を時折撫でつつ、本を読んでいた。
今俺が出ても意味がないと判断し、踵を返すとりんちゃんはこっちを見た。
「あれ?タケちゃんだよね……久しぶり……だね?」
挨拶をせずに帰るのは、申し訳ないから返事をする
「久しぶり……りんちゃ……宮部さん、元気だった?」
「うん!元気だよ、タケちゃんは?」
胸に手を当てネックレスを握る。
「あっ!そのネックレスまだ持ってたの?捨てちゃってもよかったのに」
「大事な物だから、み……りんちゃんのは?捨てちゃった?」
「大事にとってある……とは思う多分押し入れに……あっちょっと!もう帰っちゃう?」
りんちゃんは17時を告げる鐘がなっても、今みたいに
帰っちゃうと言って、上目遣いでお願いしてきた、丁度今みたいに。
「あぁ引っ越し初日で片付け終わってないんだ」
そう告げ社務所を出る時に、りんちゃんは泣きそうな顔を、しているように見えた。
長い階段を降り、アパートに帰り布団に横になる、自然と涙が流れて来た。
朝になり太陽が部屋を照らした、丁度ゴミ出しの日で昨日軽い掃除をして出たゴミを袋に詰め、首にぶら下がっていた物も入れ、ゴミに出した。
空はただ青く、春風が身を包んだ。




