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6月短編集  作者: 天雲 律
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夢の病院

ゆったりとしたアコースティックギターの音で、意識を獲得する、どうやらベットに座って居たらしい、そこは何処かの病室だった。


「よう、また会ったな」


薬品の香りと白を基調とした部屋に、現実では異質な穏やかなアコギを弾いている少女、咲に話しかける。


「久しぶり」


無愛想に返事をしてきたので、こちらは茶の用意をする。指を鳴らし、紅茶とドーナツをイメージすると、現れるなんとも便利な夢だ。


「私も欲しい」


咲の方に手を向け再び指を鳴らす、紅茶とドーナツが再び現れる。


「いい加減出来るようになれよー」


「無理だよ、病院に紅茶とドーナツなんかイメージ出来ないよ」


俺は空に浮かぶドーナツを手に取り、苺のコーティングの部分を口に含む、パリパリとコーティングが剥がれ、ドーナツのしっとりとした甘い味をしっかり味わう。


咲は先に紅茶を嗜んでいた。


「どうだー……満足か?」


咲に一度紅茶を出した事があったが、酷いダメ出しを食らった事がある、若干トラウマだ。


「まぁまぁだね……何処にでもある、カフェの紅茶だよ」


夢に出せる物は制限がある、俺が強くイメージ出来る物だ、雑誌で見た知らない外国のお菓子は見た目が完璧でも、味や香りが伴わない。


「蒼はよくカフェは行くの?」


首を振りドーナツと紅茶を飲み干し、立ち上がる。

今日の夢の攻略の事を考えていたら、目の前が虹色に染まる、夢の終わりだ。


目が覚めた後も、薬品の香りがする気がした。


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