9月1日
フェリーが出発する音と、別れを惜しむ人々の声を聞き、遊び場に向かう。
夏を刻んだ蝉の声も勢いが弱まっているが、暑さは弱まる気配がない。
夏休みが終わり、世の中の学生達は、皆学校に向かっているのだろう、俺もこの夏に未来と美樹に会わなければ、下を向いて学校に向かっていただろう。
「あら、きよぽんじゃない、もう夏休みは終わりよ、優等生が二学期初日に休んでいいの?」
「美樹か、二学期初日だから休むんだろ、くだらない教師の説教を聞くだけじゃねぇか、そっちこそ休んでいいのかよ、生徒会長だろ」
「あら、学生最後の年に、一回くらい好きに行動しても怒られないわよ」
二人で自然と歩幅を合わせ、夏休み中ずっと遊んでいた遊び場に向かう。
丸い石をお供えすると運を占ってくれる地蔵さん。
毎日ラジオ体操した神社の境内。
カッパが現れたと噂になり必死に探した川。
昨日の祭りで沢山の出店で賑わっていた道。
幻の魚を釣ろうと必死になった釣り堀。
オオクワガタを捕まえた山。
三人だけの秘密の蛍丘。
この夏三人で遊んだ場所を二人で歩く。
不思議と懐かしい気持ちに支配された。
「そういや絵日記どうした?」
「確か未来の蔵に置きっぱなしね」
そして遊び場……未来の蔵につき、入り口の前に座る。
「なんか……未来が後ろから出てきそうだな」
「そうね……未来なら……脅かしてきそうね」
二人で未来との思い出話をする。
「美樹は絵日記には何書いてたんだ?」
「……まぁ……二人の仲良しの絵よ」
チリンと何かが落ちた音がして振り返る、そこには未来が首から下げていた、鍵が落ちていた。
美樹が拾い上げる。
「どうする?開けちゃいましょうか?」
「いや……いいよ、来年にでも開けようぜ」
美樹と来年も遊ぶ約束をし、鍵は未来と同じように、俺が首から下げる事になった。




