第1.5節「いつもの朝」
聖療院の朝は早い。
まだ日が高くなる前から、人の出入りが続いていた。
「次の方どうぞー!」
受付の声が響く。
薬師達が走る。
治療師達が患者を案内する。
忙しい。
本当に忙しい。
「わぁ……」
シャーロットは廊下を歩きながら、思わず声を漏らした。
最初に聖療院を始めた頃とは比べ物にならない。
人も増えた。
建物も増えた。
出来る事も増えた。
「シャーロット様!」
新人の治療師が頭を下げる。
「おはようございます!」
「おはよー!」
元気に手を振り返す。
そのまま診察室の前を通る。
「熱は下がってますね」
「無理はしないでください」
中から声が聞こえる。
別の部屋では薬師達が薬をまとめている。
その隣では物資箱が積み上がっていた。
全部が動いていた。
全部が誰かを支えていた。
「すごいねぇ……」
ぽつりと呟く。
自分一人では絶対に出来なかった。
マリア。
エリシア。
治療師達。
薬師達。
受付。
事務。
皆が居るから回っている。
その時。
「シャーロットさん」
後ろから声が掛かった。
振り返る。
エリシアだった。
大量の書類を抱えている。
「また増えてる」
「増えてます」
即答だった。
「うにゅー……」
シャーロットがしょんぼりする。
エリシアは小さく息を吐いた。
「現場は順調です」
「でも整理する側は大変なんですよ」
そう言いながら歩いていく。
その背中を見送りながら、
シャーロットは少しだけ笑った。
「えへへ」
聖療院は大きくなった。
でも。
一人で頑張る場所ではなくなった。
皆で支える場所になっていた。




