第3節「支える人たち」
夕方の聖療院。
診療が落ち着き始めた頃。
「つっかれたぁ……」
シャーロットが机へぐったり突っ伏した。
「お疲れ様です」
エリシアが苦笑しながらお茶を置く。
「ありがとぉ……」
完全に溶けていた。
「今日は子供多かったねー!」
フレアは相変わらず元気である。
「走り回るからな」
ルナが静かにお茶を飲みながら言った。
「元気なのは良いことだよ」
マリアが書類を整理しつつ笑う。
「昔なら流行病であんなに元気な子、少なかったしねぇ」
その言葉に。
部屋が少し静かになる。
皆、覚えている。
崩壊寸前だった頃を。
届かなかった命を。
「……」
シャーロットは窓の外を見る。
夕日が王都を赤く染めていた。
昔は怖かった。
自分が止まったら終わる気がして。
全部抱えなきゃいけないと思っていた。
でも今は違う。
「シャーロット様」
修道女が笑顔で入ってくる。
「北部地方から追加報告です!」
「もう来たんだ」
受け取る。
そこには。
『現地教育班のみで対応完了』
『中央支援不要でした』
「……っ」
胸が少し熱くなる。
自分が行っていない場所。
でも。
ちゃんと回っている。
「良かったねぇ」
マリアが優しく笑う。
「……うん」
シャーロットも小さく頷く。
「皆が頑張ってくれてる」
その言葉は自然に出た。
前なら。
“自分が行かなきゃ”と思っていた。
でも今は違う。
支えてくれる人がいる。
繋いでくれる人がいる。
「やっと分かったか」
ルナが静かに言う。
「うぅ……」
「お前は昔から、一人で抱え込みすぎだ」
反論出来ない。
フレアが笑いながら頷く。
「ほんとそれー!」
「でも今は違うよ」
シャーロットが少し笑う。
「ちゃんと頼れるから」
その言葉に。
部屋の空気が少し柔らかくなった。
エリシアが静かに目を細める。
「それが一番大きな変化かもしれませんね」
「変わったかな」
「変わりました」
即答だった。
「前のシャーロット様なら、絶対また倒れてました」
「うぅぅ……」
また否定出来ない。
でも。
今なら少し笑える。
「……家族みたいだね」
ぽつり、とシャーロットが呟く。
一瞬、部屋が静まる。
「へ?」
フレアがきょとんとした。
「だって」
「皆いると安心するし」
少し照れながら笑う。
「支えてもらってるなって思うから」
その言葉に。
エリシアが優しく微笑んだ。
マリアも小さく笑う。
ルナは静かに目を閉じた。
そして。
「今さら気づいたのか?」
レオンの声だった。
「ふぇっ!?」
いつの間にいたのか。
「び、びっくりしたぁ……!」
「騒がしいな」
「急に来るからだよぉ!」
フレアが笑い転げる。
騒がしい。
でも。
その空気が心地いい。
誰かが支えて。
誰かが繋いで。
誰かが誰かを救っている。
少女は今――
“支えられること”を知りながら、穏やかな日々を歩いていた。




