表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
94/153

第3節「支える人たち」

 夕方の聖療院。


 診療が落ち着き始めた頃。


「つっかれたぁ……」


 シャーロットが机へぐったり突っ伏した。


「お疲れ様です」


 エリシアが苦笑しながらお茶を置く。


「ありがとぉ……」


 完全に溶けていた。


「今日は子供多かったねー!」


 フレアは相変わらず元気である。


「走り回るからな」


 ルナが静かにお茶を飲みながら言った。


「元気なのは良いことだよ」


 マリアが書類を整理しつつ笑う。


「昔なら流行病であんなに元気な子、少なかったしねぇ」


 その言葉に。


 部屋が少し静かになる。


 皆、覚えている。


 崩壊寸前だった頃を。


 届かなかった命を。


「……」


 シャーロットは窓の外を見る。


 夕日が王都を赤く染めていた。


 昔は怖かった。


 自分が止まったら終わる気がして。


 全部抱えなきゃいけないと思っていた。


 でも今は違う。


「シャーロット様」


 修道女が笑顔で入ってくる。


「北部地方から追加報告です!」


「もう来たんだ」


 受け取る。


 そこには。


『現地教育班のみで対応完了』

『中央支援不要でした』


「……っ」


 胸が少し熱くなる。


 自分が行っていない場所。


 でも。


 ちゃんと回っている。


「良かったねぇ」


 マリアが優しく笑う。


「……うん」


 シャーロットも小さく頷く。


「皆が頑張ってくれてる」


 その言葉は自然に出た。


 前なら。


 “自分が行かなきゃ”と思っていた。


 でも今は違う。


 支えてくれる人がいる。


 繋いでくれる人がいる。


「やっと分かったか」


 ルナが静かに言う。


「うぅ……」


「お前は昔から、一人で抱え込みすぎだ」


 反論出来ない。


 フレアが笑いながら頷く。


「ほんとそれー!」


「でも今は違うよ」


 シャーロットが少し笑う。


「ちゃんと頼れるから」


 その言葉に。


 部屋の空気が少し柔らかくなった。


 エリシアが静かに目を細める。


「それが一番大きな変化かもしれませんね」


「変わったかな」


「変わりました」


 即答だった。


「前のシャーロット様なら、絶対また倒れてました」


「うぅぅ……」


 また否定出来ない。


 でも。


 今なら少し笑える。


「……家族みたいだね」


 ぽつり、とシャーロットが呟く。


 一瞬、部屋が静まる。


「へ?」


 フレアがきょとんとした。


「だって」

「皆いると安心するし」


 少し照れながら笑う。


「支えてもらってるなって思うから」


 その言葉に。


 エリシアが優しく微笑んだ。


 マリアも小さく笑う。


 ルナは静かに目を閉じた。


 そして。


「今さら気づいたのか?」


 レオンの声だった。


「ふぇっ!?」


 いつの間にいたのか。


「び、びっくりしたぁ……!」


「騒がしいな」


「急に来るからだよぉ!」


 フレアが笑い転げる。


 騒がしい。


 でも。


 その空気が心地いい。


 誰かが支えて。


 誰かが繋いで。


 誰かが誰かを救っている。


 少女は今――


 “支えられること”を知りながら、穏やかな日々を歩いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ