第1節「静かな朝」
朝日が、柔らかく部屋へ差し込んでいた。
「……んぅ」
シャーロットは小さく目を擦りながら身体を起こす。
窓の外では、小鳥の声が聞こえていた。
穏やかな朝だった。
「起きたか」
静かな声。
振り向く。
ルナが窓際で本を読んでいる。
「おはよぉ……」
「もう朝だ」
「うぅ……ねむい……」
まだ少しぼんやりしている。
その時。
ばたーん!
「シャーロット起きてるー!?」
勢いよく扉が開いた。
「ふぇっ!?」
フレアだった。
相変わらず朝から元気である。
「今日パン焼けたよー!」
「ほんと!?」
一気に目が覚めた。
食堂へ向かう。
そこには、すでに皆が集まっていた。
「おはようございます」
エリシアが微笑む。
「おはよー!」
マリアは眠そうにお茶を飲んでいた。
「朝から元気だねぇ……」
「フレアだからな」
ルナが静かに言う。
「えへへー!」
全く否定になっていなかった。
焼きたてのパンの香りが広がる。
温かなスープ。
少し焦げた卵料理。
騒がしい。
でも。
どこか落ち着く空気だった。
「……平和だね」
シャーロットがぽつりと呟く。
少し前までは、毎日が慌ただしかった。
流行病。
崩壊寸前の聖療院。
王国改革。
色んなことがあった。
でも今は。
こうして穏やかな朝を迎えられている。
「平和だからこそ忙しいんだよー?」
マリアが書類をひらひらさせる。
「地方診療所増設申請、また増えてるし」
「うぅ、現実」
フレアが笑い転げる。
「シャーロットその顔好きー!」
「むぅ……」
その時。
コンコン、と扉が叩かれた。
「失礼します」
修道女だった。
「朝からすみません」
「地方より定期報告書です」
「もう来たんだ」
シャーロットが書類を受け取る。
そこには。
『今年も流行病発生なし』
『巡回診療継続中』
そんな文字が並んでいた。
「……えへへ」
自然と笑みが零れる。
自分が行っていない場所。
見えていない場所。
でも。
ちゃんと続いている。
「良い顔してますね」
エリシアが優しく笑う。
「……うん」
シャーロットは窓の外を見る。
朝日が街を照らしている。
王都は今日も動き始めていた。
誰かが支え。
誰かが繋ぎ。
誰かが誰かを救っている。
少女は今――
“自分が見えていなくても、救いは続いている”ことを、穏やかに感じていた。




