第7節「役割分散」
王城・会議室。
「北部地方は現地教育班へ移行可能です」
「南部は薬品供給優先ですね」
机の上には、大量の資料と王国地図。
以前なら。
全部を中央が抱えていた。
でも今は違う。
「地方側責任者も育ってきたねぇ」
マリアが感心したように言う。
「ここまで来るとは思わなかったよ」
教育役。
巡回班。
衛生管理担当。
少しずつ、それぞれの役割が分かれ始めていた。
「……すごい」
シャーロットがぽつりと呟く。
地図には、各地方ごとの担当者名が書かれている。
自分の知らない名前も増えていた。
「中央だけで抱える時代ではない」
レオンが静かに言う。
「地方側でも回せるようにする」
それが今の王国方針だった。
「役割分散ですね」
エリシアが静かに頷く。
「一人へ負担集中すると崩壊しますから」
「うぅ……」
シャーロットが視線を逸らす。
完全に自分のことだった。
フレアが吹き出す。
「倒れた人がいるもんねー!」
「ふ、フレアぁ……!」
逃げ場がない。
でも。
今なら少し笑える。
「……昔の私、ほんと危なかったね」
ぽつり、と零れる。
「自覚はあったのか」
ルナが静かに言う。
「途中からはちょっと……」
全部抱え込もうとしていた。
助けなきゃ。
届かなきゃ。
そう思い続けていた。
でも。
「今は違う」
シャーロットが王国地図を見る。
「皆いるから」
その言葉に。
部屋の空気が少し柔らかくなる。
修道女たち。
地方教育班。
医療班。
エリシア。
マリア。
ルナ。
フレア。
そしてレオン。
繋いでくれる人が増えた。
「……ようやく形になってきたな」
レオンが静かに言う。
「へ?」
「“お前がいなくても回る仕組み”だ」
その言葉に。
シャーロットは少しだけ目を見開いた。
昔なら、きっと怖かった。
自分が必要なくなるみたいで。
でも今は違う。
「……うん」
小さく笑う。
「そっちの方が、いっぱい助かるもんね」
それが答えだった。
誰か一人に依存しない。
皆で支える。
だから続いていく。
「……成長したなぁ」
マリアがしみじみ呟く。
「前なら絶対、“私が行く!”って言ってたのに」
「うぅ……」
また否定出来ない。
その時。
「失礼します!」
修道女が慌てて部屋へ駆け込んできた。
「地方診療所より報告です!」
書類を受け取る。
『中央支援なしで、流行病封じ込め成功』
「……っ」
シャーロットの目が少し潤む。
自分が行っていない場所。
でも。
ちゃんと回っている。
「……届いてる」
小さな呟き。
それはもう、“奇跡”だけじゃなかった。
人が育ち。
知識が繋がり。
役割を分け合った結果。
王国は今――
“誰か一人が救う国”ではなく、“皆で支える国”へ変わり始めていた。




