表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
89/153

第6節「全国展開(下)」

 全国展開が始まってから半年。


 王国は、確かに変わり始めていた。


「南部地方、診療所利用者数増加!」

「北部地方、冬季死亡率大幅改善!」


 王城へ届く報告書は、以前とはまるで違う。


 “助からなかった”ではなく。


 “助かった”が増えている。


「……こんなに変わるんだ」


 シャーロットが地図を見ながら小さく呟く。


 王国全土へ広がる青印。


 診療所。


 教育区域。


 巡回医療班。


 少しずつ。


 本当に少しずつ。


 “見えなかった場所”へ救いが届き始めていた。


「地方側も安定してきたねぇ」


 マリアが資料を整理しながら言う。


「教育担当も育ってるし、前より回るようになった」


 以前なら。


 中央の一部しか出来なかった。


 でも今は違う。


 地方で教え。


 地方で支え。


 地方で回り始めている。


「……すごい」


 シャーロットは少し目を潤ませる。


 最初は、小さな診療所だった。


 届く範囲だけ。


 見える人だけ。


 でも今は。


 王国全体へ広がり始めている。


「失礼します!」


 文官が慌てて部屋へ駆け込んできた。


「北西部地方より正式要請です!」


「また増えたか」


 レオンが静かに資料を受け取る。


「巡回診療の追加希望」

「教育支援要請」

「薬品供給増加願い」


 求められる規模も大きくなっていた。


「……全部はまだ難しいね」


 シャーロットが小さく呟く。


「物資にも限界あるし」


「ああ」


 レオンも頷く。


「だから優先順位を決める」


 合理的な判断。


 でも今のシャーロットは、それを理解出来る。


 全部を一気には救えない。


 だから繋げていく。


 少しずつ広げる。


「……昔なら」


 シャーロットが少し苦笑する。


「全部行こうとしてた」


「知っている」


 ルナが即答した。


「そして倒れていた」


「うぅ……」


 反論できない。


 フレアが後ろで笑っている。


「でも今は違うもんねー!」


「……うん」


 ちゃんと任せられるようになった。


 支えてもらえるようになった。


 それが今の一番大きな変化かもしれない。


 その時。


 エリシアが静かに一通の手紙を差し出した。


「これ、地方の子供たちからです」


「わぁ……」


 開く。


 そこには沢山の幼い文字と絵が描かれていた。


『せいじょさまありがとう』

『おいしゃさんがきたよ』

『またおはなのおくすりのみたい』


「……っ」


 胸の奥がじんわり熱くなる。


 知らない場所。


 知らない子供たち。


 でも。


 ちゃんと繋がっている。


「……えへへ」


 涙混じりに笑う。


 その姿を見ながら。


 レオンは静かに王国地図を見る。


 まだ足りない。


 問題も山積みだ。


 それでも。


 確実に変わっている。


 王国は今――


 “奇跡”ではなく、“人が繋ぐ救い”によって、静かに変わり始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ