第3節「婚約」
翌日。
王城・大広間には、多くの貴族や教会関係者が集まっていた。
ざわめきが広がっている。
「正式発表らしいぞ」
「まさか本当に……」
空気はどこか緊張していた。
そして。
「……ぅ」
シャーロットは完全に固まっていた。
「なんでこんな人いるのぉ……」
「婚約発表だからだ」
隣でレオンが淡々と言う。
「もっと早く言ってよぉ……!」
「昨日言った」
「心の準備が!!」
全然足りなかった。
エリシアが後ろで小さくため息を吐く。
「落ち着いてください」
「無理だよぉ……!」
フレアは笑いを堪え切れていない。
「顔真っ赤ー!」
「ふ、フレアぁ……!」
逃げたい。
本気で。
だが。
「静粛に」
低い声が大広間へ響いた。
国王だった。
一瞬で空気が静まる。
「本日、新たな王国の未来について正式に発表する」
重々しい声。
貴族たちが姿勢を正す。
「第二王子レオンと、聖女シャーロットの婚約をここに宣言する」
空気が揺れた。
ざわめきが広がる。
「……っ」
シャーロットは小さく息を呑む。
分かっていた。
昨日、話もした。
でも。
実際に言葉になると、重みが違う。
「王国は今、変革の時代にある」
国王が静かに続ける。
「見えていなかった場所へ救いを広げるため」
「新たな時代を築くため」
その視線が二人へ向く。
「二人には、その中心を担ってもらう」
大広間が静まり返る。
重い。
王国そのものの期待が乗っているみたいだった。
「……」
シャーロットの手が少し震える。
怖かった。
本当に自分でいいのか。
その時。
そっと。
隣のレオンが小さく手を重ねた。
「……っ」
驚いて顔を上げる。
「前を向け」
小さな声だった。
「もう一人じゃない」
その言葉に。
張っていた緊張が少しだけ緩む。
「……うん」
小さく頷く。
大広間の空気が少しずつ変わっていく。
驚き。
戸惑い。
そして。
どこか納得したような空気。
「聖療院の改革も継続されるそうだ」
「地方支援もさらに広がるらしい」
ざわめきの中には、期待の声も混ざっていた。
それはきっと。
“届いた人たち”が増えたから。
「……えへへ」
シャーロットは少しだけ笑う。
まだ怖い。
不安もある。
でも。
隣には支えてくれる人がいる。
一人じゃない。
その時。
「シャーロットー!!」
フレアが後ろから全力で抱きついてきた。
「おめでとー!!」
「ふぇぇっ!?」
完全に空気が壊れた。
「フレア、今は静かにしてください」
エリシアが即座に止める。
「えー!」
騒がしい。
でも。
その空気が少しだけ救いだった。
王国は変わっていく。
救いも広がっていく。
そして少女は今――
“誰かを救う少女”から、“国を支える存在”へ歩き始めていた。




