表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
71/153

第2節「教育」

 強制休養命令。


 それが決まった翌日。


「絶対まだ働けるのに……」


 シャーロットはベッドの上で小さく膨れていた。


「働けません」


 エリシアが即答する。


「顔色見てください」


「むぅ……」


 反論出来ない。


 実際、身体はまだ重かった。


 聖力消耗も完全には戻っていない。


「でも皆忙しいし……」


「だからこそ教育です」


「教育?」


 エリシアは書類を机へ広げた。


 そこには、簡単な手順書が並んでいる。


『感染症初期対応』

『軽症患者の安定化』

『衛生管理手順』


「……増えてる」


「増やしました」


 エリシアはさらっと答える。


「マリア先生監修です」


 その時。


「呼んだかい?」


 マリアが部屋へ入ってくる。


 相変わらずタイミングがいい。


「今までは経験頼りだったんだよ」


 椅子へ座りながら言う。


「見て覚えろ」

「慣れろ」

「感覚でやれ」


 それが今までの中央教会だった。


「でもそれじゃ広がらない」


 シャーロットが小さく目を瞬かせる。


「……あ」


 分かってきた。


「だから共有する」


 マリアが頷く。


「知識も」

「対応も」

「判断基準も」


 全部。


 一部の人だけが持っていても意味がない。


「再現性ですね」


 エリシアが静かに言う。


「誰がやっても、ある程度同じ対応が出来る状態を作る」


 それが今の聖療院の目標だった。


「……すごい」


 シャーロットがぽつりと呟く。


 前なら考えもしなかった。


 自分で治すことばかり見ていたから。


「教育が始まれば地方展開も可能になる」


 レオンの声だった。


 いつの間にか部屋へ入ってきている。


「うわっ」


「失礼だな」


「いつも静かに入ってくるから……」


「ノックはした」


 聞こえてなかっただけだった。


「地方教会側からも要請が来ている」


 レオンが書類を机へ置く。


「感染症対策」

「衛生管理」

「初期対応教育」


 中央だけでは足りない。


 地方にも広げる必要がある。


「……見えない場所」


 シャーロットが小さく呟く。


 自分では直接見に行けない場所。


 届かなかった場所。


 でも。


 仕組みなら届くかもしれない。


「だから教育だ」


 レオンが静かに言う。


「お前一人では限界がある」


「うぅ……」


 最近そればっかり言われてる気がする。


 でも。


 否定は出来なかった。


「……でも嬉しい」


 シャーロットが小さく笑う。


「私がいない場所でも、助かる人増えるなら」


 その言葉に。


 部屋が少し静かになる。


 マリアがふっと笑った。


「本当に根っこ変わらないねぇ」


「え?」


「自分のことより他人」


「うぅ……」


 また否定出来ない。


 その時。


「だから休ませる」


 ルナが静かに言った。


 窓際からこちらを見ている。


「……まだその話続いてるの?」


「当然だ」


「えぇ……」


 フレアが後ろでにやにや笑う。


「山奥連れてくからねー!」


「ほんとに行くのぉ!?」


「行く」


 ルナが即答した。


 逃げ道は、もう完全になくなっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ