表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
70/153

第1節「再現性」

 シャーロットが倒れてから、一週間。


 聖療院は以前ほどの混乱こそないものの、慌ただしい空気が続いていた。


「次の患者さんどうぞ!」

「薬品補充お願いしまーす!」

「隔離区画、消毒完了しました!」


 人の声が飛び交う。


 だが。


 以前と決定的に違うことがあった。


「……回ってる」


 ベッドの上で身体を起こしたシャーロットが、小さく呟く。


 窓の外。


 聖療院の現場は動いていた。


 自分がいなくても。


「当たり前です」


 エリシアがぴしゃりと言う。


「あなたは絶対安静です」


「うぅ……」


 即座に怒られた。


「でも、患者さん……」


「現場は回っています」


 きっぱり。


「今は休んでください」


 その声には、一切譲る気がなかった。


「……」


 シャーロットは少しだけ窓の外を見る。


 修道女たちが動いている。


 医療班が薬を運んでいる。


 回復術師が患者対応している。


 以前なら。


 自分がいなければ止まると思っていた。


 でも違った。


「……すごい」


 ぽつり、と零れる。


 その時。


「当然だ」


 低い声。


 レオンだった。


「再現性を作ったからな」


 書類を片手に部屋へ入ってくる。


 相変わらず仕事人間みたいな顔だった。


「再現性……」


「誰か一人しか出来ない状態は脆い」


 レオンが静かに言う。


「だから分担する」

「教育する」

「共有する」


 それが今の聖療院だった。


「……」


 シャーロットは静かに聞いている。


 以前は。


 “自分が頑張る”しか知らなかった。


 でも今は違う。


「聖女が倒れた瞬間終わる組織など欠陥だ」


 容赦ない。


「うぅ……」


「実際倒れただろ」


 反論できなかった。


 その時。


 マリアが部屋へ入ってくる。


「ほら薬」


「にがいやつ?」


「にがいやつ」


「うぅぅ……」


 完全に逃げ場がない。


 フレアが後ろで笑い転げている。


「シャーロット子供みたーい!」


「フレアぁ……」


 ルナは窓際で静かに腕を組んでいた。


「だが悪くない」


「……へ?」


 シャーロットが顔を上げる。


「お前が休んでも回っている」


 静かな声だった。


「それが“仕組み”だ」


 その言葉が、胸へゆっくり落ちていく。


 今までは怖かった。


 自分が止まったら終わる気がして。


 でも。


 今、ちゃんと回っている。


 問題はまだある。


 足りないものも多い。


 それでも。


 “皆で繋いでいる”。


「……えへへ」


 小さく笑みが零れた。


 少し安心した。


 その時。


「安心したところで休暇だな」


 レオンがさらっと言った。


「……へ?」


 部屋が静まる。


「強制休養命令だ」

「聖療院への出入りも制限する」


「えぇっ!?」


 シャーロットが飛び起きかける。


「だ、大丈夫だよ!? もう動けるし!」


「駄目だ」


 ルナが即答した。


「反省していない」


「うぅ……」


 逃げ道がない。


「というわけで」


 フレアがにこーっと笑った。


「しばらく拉致りまーす!」


「拉致!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ