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第3節「金属嫌い 上」

 森の空気は静かだった。


 だが先程までとは違う。


 今は、周囲のエルフ達全員が様子を見ている。


 銀髪の女性は、静かに三人を見つめていた。


「……私はセラフィナ」


 落ち着いた声だった。


「この辺りの集落を預かっている」


「シャーロットです!」


「フレア!」


「ルナ」


 三人も改めて名乗る。


 セラフィナは小さく頷いた。


 そして。


 ふと視線が止まる。


「……金属」


「えっ?」


 シャーロットが首を傾げる。


 セラフィナの視線は、三人の荷物へ向いていた。


 金具。


 小型ナイフ。


 鍋。


 旅用装備に使われている最低限の金属。


 その瞬間だった。


 周囲の若いエルフ達が、少しだけ距離を取る。


「……あっ」


 シャーロットが気づく。


 エルフ設定で聞いていた。


 金属を嫌う。


 場合によっては体調不良も起こす。


「ご、ごめんなさい!」


 慌てて荷物を下げる。


 セラフィナは軽く首を横へ振った。


「敵意は感じない」


「でも」


「少し離して」


「あっ、はい!」


 三人は慌てて荷物を焚火から離れた場所へ移動させる。


 すると。


 周囲の空気が少しだけ落ち着いた。


「……本当なんだ」


 フレアが小声で呟く。


「思ったより反応強いね」


 ルナも静かに周囲を見る。


 若いエルフの一人は、まだ少し顔色が悪そうだった。


「頭痛?」


 シャーロットが心配そうに聞く。


 若いエルフが少し驚いた顔をする。


「……平気」


「ほんと?」


「少し苦手なだけ」


 でも無理しているのは分かった。


 シャーロットは少し考えた後、小さく手を上げる。


「ちょっと待ってて!」


「えっ」


 荷物から布を取り出す。


 そして金属部分へ巻き始めた。


「シャーロット?」


「隠せば少し違うかなって」


 ナイフ。


 鍋の取っ手。


 金具。


 見えている部分を布で覆っていく。


 セラフィナが静かにその様子を見ていた。


「……慣れてる?」


「ううん?」


 シャーロットが苦笑する。


「でも嫌がるって聞いてたから」


 完全な対策ではない。


 でも、少しでも不快を減らしたかった。


 それだけだった。


 若いエルフ達が小さくざわつく。


「隠した」


「普通、人間そこまでしない」


「なんか変」


 また言われていた。


 フレアが吹き出す。


 セラフィナはしばらく黙っていたが、やがて静かに口を開く。


「……少しはマシ」


 その声は、ほんの少しだけ柔らかかった。

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