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第2節「森の視線 下」

「えっ」


 シャーロットが目を丸くする。


「私達じゃなくて?」


「勝手に接触した」


 エルンが静かに言った。


「しかも焚火囲んでる」


 周囲の若いエルフ達が気まずそうに目を逸らす。


 どうやら本当に怒られるらしい。


「だって普通に喋ってたし……」


 シャーロットが困ったように言う。


「普通じゃない」


 リーファが即答した。


 そこだけは一切ブレない。


 フレアが吹き出す。


「シャーロット、完全に森基準でも変人判定されてる」


「うぅ……」


 その時。


 ざわり。


 森の奥から、さらに別の気配が近づいてくる。


 今までより重い空気。


 静かだけど、存在感が違う。


 若いエルフ達の表情が変わった。


「……来た」


 エルンが小さく呟く。


 次の瞬間。


 木々の間から、一人の女性が姿を現した。


 長い銀髪。


 深い緑色の衣。


 落ち着いた金色の瞳。


 静かなのに、場の空気を変える存在感があった。


 年齢は分からない。


 若く見える。


 でも、若いエルフ達とは明らかに雰囲気が違う。


「リーファ」


 静かな声。


「……はい」


「エルン」


「……申し訳ありません」


 若い二人が素直に頭を下げる。


 シャーロットはその様子を見て、少しだけ背筋を伸ばした。


 たぶん。


 この人は立場が上だ。


 女性はゆっくり三人を見る。


 フレア。


 ルナ。


 そしてシャーロット。


 その視線は静かだった。


 敵意ではない。


 でも簡単には油断しない目。


「人間」


 静かな確認。


「はい」


 シャーロットが素直に返事をする。


「何故、森へ?」


 エルンと同じ質問。


 でも空気は全然違った。


 周囲のエルフ達も静かに様子を見ている。


 シャーロットは少し考える。


 でも、答えは変わらない。


「旅してたら来ちゃいました」


 静寂。


 完全な静寂だった。


 エルンが目を閉じる。


 リーファの耳がぴくりと動く。


 若いエルフ達が、耐えるように口元を押さえている。


 女性は数秒黙った後。


「……本当に?」


「はい!」


 即答だった。


 そして。


 女性は初めて、小さく息を吐いた。


 呆れているのか。


 困っているのか。


 それとも。


 少し面白がっているのか。


 まだ、よく分からなかった。

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