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第2節「森の視線 上」

 気づけば。


 三人の周囲には、いくつもの視線が集まっていた。


 木の上。


 枝の影。


 大木の裏。


 静かにこちらを見ている長耳の人影達。


「……増えたねぇ」


 シャーロットが小さく苦笑する。


「完全に囲まれてる」


 フレアが普通に言った。


 だが、不思議と空気は張り詰めていない。


 警戒はある。


 でも敵意は薄い。


 むしろ、


“本当に危険なのか観察している”


そんな感じだった。


「……静か」


 ルナがぽつりと呟く。


 確かにそうだった。


 これだけ人数が居るのに、森は驚くほど静かだ。


 足音も。


 鎧の音も。


 ほとんどしない。


 風と葉の音だけが聞こえてくる。


「すごいね」


 シャーロットが素直に言う。


「全然気づかなかった」


 その言葉に、木の上に居た若いエルフが少しだけ目を瞬かせた。


「……褒められた?」


「多分」


 別の影が小声で返す。


 普通なら恐れる場面。


 なのに。


 この人間は普通に感心していた。


「だから変」


 リーファが真顔で言った。


「ひどい」


 シャーロットが困ったように笑う。


 その時。


 ざっ。


 一人の男性エルフが枝から静かに降りてきた。


 長い緑髪。


 鋭い金色の瞳。


 腰には短弓。


 年齢は若く見える。


 でも、人間基準ではたぶん全然違う。


「リーファ」


「うん」


「……何してる」


「観察」


 即答だった。


 男性エルフは小さく息を吐く。


 そして視線を三人へ向ける。


 まずフレア。


 次にルナ。


 最後にシャーロット。


 そこで少し止まった。


「……人間」


「うん!」


 シャーロットが普通に返事する。


 男性エルフが少し黙る。


 たぶん。


 もっと警戒されると思っていた。


「お前達」


 静かな声だった。


「何故ここまで来た」


 その問いに、シャーロットは少し考える。


 外交でも。


 調査でもない。


 本当にただ。


「旅?」


 答えた瞬間。


 周囲の空気が止まった。


 フレアが吹き出しそうになる。


 ルナは静かに目を閉じた。


 リーファは無言。


 枝の上のエルフ達まで固まっている。


「……旅」


 男性エルフが確認するように呟く。


「うん」


「ここへ?」


「歩いてたら来た」


 沈黙。


 長い沈黙。


 そして。


 枝の上の誰かが、小さく吹き出した。

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