第1節「勝手に入国 上」
ざわり。
森の葉が揺れる。
焚火の火が小さく揺らめいた。
シャーロット達は自然と視線を森へ向ける。
気配は近い。
今までで、一番。
「……」
静かな空気。
風の音だけが森を抜けていく。
その時。
木々の間から、一人の少女が姿を現した。
長い耳。
淡い金色の髪。
透き通るような白い肌。
森へ溶け込むような、静かな存在感。
「……」
少女は何も言わない。
ただ、じっと三人を見ていた。
警戒。
観察。
そんな視線。
でも、敵意は感じない。
「わぁ……」
シャーロットが小さく声を漏らす。
思っていたより、普通だった。
もっと神秘的な何かを想像していたのに。
ちゃんと“人”だった。
「耳長い」
フレアが普通に言った。
「そこ?」
シャーロットが思わず突っ込む。
少女の耳がぴくりと動いた。
たぶん聞こえている。
「……変」
透き通った声だった。
「えっ」
「普通、もっと怖がる」
静かな口調。
感情は薄い。
でも確かに喋っていた。
「怖くないよ?」
シャーロットが自然に答える。
すると少女は少しだけ黙った。
その反応が、逆に面白かった。
「……変」
もう一回言われた。
フレアが小さく吹き出す。
「それ多分褒め言葉じゃないよ」
「えぇー……」
シャーロットが困ったように笑う。
少女は三人を順番に見る。
フレア。
ルナ。
そしてシャーロット。
その時。
少女の表情が、ほんの少しだけ変わった。
「……そのお茶」
「えっ?」
シャーロットが湯鍋を見る。
「あっ、これ?」
「……飲んでる」
「もらったの!」
嬉しそうに答える。
少女は少しだけ目を細めた。
そして。
「……全部飲んだ?」
「うん!」
「苦くなかった?」
「苦かった!」
即答だった。
フレアが吹き出す。
「でも慣れると落ち着くよね」
シャーロットがそう言うと、少女はまた少し黙った。
その空気を見ながら、ルナが静かに呟く。
「……警戒減った」
「うん、そんな感じする」
シャーロットも小さく頷いた。
少女はしばらく三人を見た後、ぽつりと呟く。
「……勝手に入ってきた」
「えっ」
「ここ、もう森の中」
三人が同時に周囲を見る。
そして。
「あっ」
フレアが普通に言った。
「入国してた?」




