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第6節「すれ違い 下」

 日が傾き始める頃。


 三人は、森の中でも少し開けた場所へ辿り着いていた。


 周囲を大木に囲まれた、小さな空間。


 風が穏やかで、地面も柔らかい。


「今日はここにしよっか」


「さんせーい」


 フレアが荷物を下ろす。


 ルナは周囲を静かに確認した後、小さく頷いた。


「……問題なさそう」


 野営準備にも、もうかなり慣れてきていた。


 焚火用の枝を集め。


 水を汲み。


 簡単な食事の準備をする。


「なんか普通に旅してるねぇ」


 シャーロットが少し笑う。


「最初から旅」


 ルナが静かに返した。


「でも最初より慣れてる気がする!」


 フレアが焚火へ火を灯しながら言う。


 ぱちっ。


 小さな炎が揺れる。


 森の中だから火は最小限。


 静かな灯りだけが三人を照らしていた。


 その時。


 ざわり。


 森の奥で葉が揺れた。


 三人が同時に顔を上げる。


「……また?」


 フレアが小声で呟く。


 気配は近い。


 今までで一番近かった。


 でも。


 やっぱり敵意は感じない。


「なんかさ」


 シャーロットが焚火を見つめながら言う。


「森の人達って優しいのかも」


「お菓子くれたしね」


 フレアは完全にそこ基準だった。


 ルナは少しだけ森を見る。


「……慎重なだけだと思う」


「うん」


 シャーロットも頷いた。


 きっと簡単には信用していない。


 でも、完全に拒絶もしていない。


 その距離感が、少しだけ嬉しかった。


 シャーロットは湯鍋へ水を入れる。


 そして。


 泉で貰った薬草を少しだけ入れた。


「また苦いやつ?」


 フレアが露骨に嫌そうな顔をする。


「えへへ……」


 しばらくすると、独特の香りが広がり始める。


 森みたいな匂い。


 土と草の落ち着く香り。


「……なんか慣れてきた」


 フレアがぼそりと呟いた。


「でしょ?」


 シャーロットが嬉しそうに笑う。


 三人で薬草茶を飲みながら、静かな森を眺める。


 風が吹く。


 木々が揺れる。


 遠くで、小さく鳥が鳴いた。


 その静かな時間の中。


 ルナがふと顔を上げた。


「……来た」


「えっ?」


 次の瞬間。


 ざわり。


 森が揺れる。


 気配が、近づく。


 今までずっと遠くから見ていた“誰か”が。


 初めて、自分達へ近づいて来ていた。

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