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第2節「北へ向かう者達 上」

 一方その頃。


 シャーロット達は、森沿いの街道をさらに北へ進んでいた。


 空気はかなり冷えてきている。


 木々も高く、陽の光は葉の隙間から細く差し込むだけだった。


「んー……」


 フレアが空を見上げる。


「ほんと人居ないね」


「旅人減った」


 ルナが静かに答える。


 実際、この半日ほど誰ともすれ違っていない。


 街道自体はある。


 だが、使われている気配は薄かった。


「静かだねぇ」


 シャーロットが周囲を見回す。


 最初は少し緊張していた。


 でも今は、不思議と落ち着いている。


 風の音。


 木々の揺れる音。


 森そのものが呼吸しているみたいだった。


「……また見られてる」


 ルナがぽつりと呟く。


「うん」


 シャーロットも感じていた。


 姿は見えない。


 でも気配はある。


 敵意は無い。


 ただ静かに観察されている。


 そんな感覚だった。


「もう出てきてもいいのにね」


 フレアが普通に言う。


「やめて」


 ルナが即座に止めた。


「刺激しない」


「はーい」


 返事だけは軽い。


 その時だった。


 ふわり。


 風が吹き抜ける。


 同時に。


 からん。


 小さな音がした。


「ん?」


 シャーロットが足を止める。


 道端。


 木の根元。


 そこに、小さな籠が置かれていた。


「……え?」


 近づいてみる。


 中には赤い果実がいくつか入っていた。


 まだ新しい。


「誰か居た?」


 フレアが周囲を見る。


 でも、人影は無い。


 森は静かなままだった。


「……」


 ルナが籠をじっと見る。


「毒はない」


「分かるの?」


「なんとなく」


 相変わらず感覚的だった。


 シャーロットはそっと果実を見る。


 王都では見ない種類だった。


 小さくて、赤くて、少し透明感がある。


「これって……」


「どう見ても置かれてるよね」


 フレアが言う。


 偶然落ちていた訳じゃない。


 明らかに“見える場所”へ置かれていた。


「もしかして」


 シャーロットが小さく笑う。


「試されてる?」


「ありそう」


 ルナが静かに頷いた。


 森はまだこちらを見ている。


 静かに。


 慎重に。


 まるで、“どんな相手か見ている”みたいに。


 シャーロットは少し考えた後、籠をそっと持ち上げた。


「……ありがとう」


 誰に向けた言葉かは分からない。


 でも。


 そう言いたくなった。

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