58.大阪でヒントを貰う
『熱心なファンを20人見つけよう』
気晴らしに手に取った1冊には、そう書いてあった。
デパートを賑わせるためには『熱心なファン』を20人作る必要がある。そうすれば、お客さんがお客さんを呼び、しかもみんな楽しく買い物をしてくれる……そんな内容だ。
(20人なら見つけられるかも!)
商業出版では1冊の本を何千何万と売る。
どれだけの人に呼びかければいいのか……作家さんにも小説を書くだけでなく、宣伝の為にXやインスタをやる人が多いし、動画配信やPodcastまでやる人もいる。
けれどバズッて本が売れても一瞬だ。出版社が大喜びした後で潮が引くように読者がいなくなり、凋落した作品も知っている。
生き残れるのは『本物』だけ。
遠回りに見えても、1冊1冊積み上げるようにして本を売りたい。
何万人もの人に売ると考えたら、途方もないけれど。
名古屋からわざわざ来られた方もいるし、『この本を読むために日本語の勉強を頑張りたい』と初見で買って下さった外国の方もいる。
「翻訳ソフトを使って読んでいます」
韓国やタイからそんなメッセージを頂いたこともある。
熱心に応援してくれる人、20人なら見つけられそうな気がした。
(よし!その20人を探しに行こう!そして美味しい物も食べて楽しもう!)
12月の福島では、みちのくコミティアの開催地郡山から喜多方まで足を伸ばし、喜多方ラーメンを食べてきた。
そして滞在時間の短かった京都では、京都駅の喫茶店でモーニングを食べたし、お漬物をお土産に買った。
大阪ではふらふらっとひとりで歩き、行列のできていた店を見つけて、飛びこみで牛カツ御膳を食べる。
チーズケーキで有名な『りくろーおじさんの店』にも行き、パンもいっぱい食べた。関西コミティアでのお昼ご飯は『ちくわパン』だ。
知らない街をひとりで歩き、食べるご飯もそのときに決める。小説を書いていなかったら、できなかった経験だ。
書いた小説が本になって、そして漫画にならかったら、きっと今も白衣を着て働いていただろう。
でかける前は不安だったけれど、ありがたいことに1冊も売れずに終わることはなかった。
差し入れをして下さる読者さんもいたし、見本誌を読まれた方と新しいご縁もできた。
実際に実物を見てもらうと、効果は絶大だった。
文学フリマ京都に参加した翌日、『魔術師の杖』は公開中のニコニコ漫画で日間2位になり、第1話は1万人以上に読まれた。
マンガ自体は初速がでやすい公開初日ではなく、数日前に公開されたものだったからビックリだ。
でもこれも自分だけの力ではなく、たまたま隣近所だった出店者さんたちと、場を盛り上げることができたからだ。
いきなりイベントに参加するよりも、共同書店の棚主になったことで、アピールの仕方や作品の見せ方など、様々な人にアドバイスをもらっていたこともよかったと思う。
イベントが終われば、持ちだした制作資料を書店の棚に戻す。そして店番をしながら、イベントを振り返って次の準備をする。
関西コミティアに参加したときに、ちょっとしたヒントを貰った。
『作品が知られていないことが、逆に強みになる』
(これなら、知名度が低いことを逆に利点として生かせるかも……)
私はイベント参加の報告がてら、出版社にメールを送った。
コミカライズは月刊連載のため、ネームチェックと完成原稿チェックで最低月2回は出版社とメールのやり取りをする。
初稿を提出してから動きだす小説と違い、連載がある漫画の出版社は連絡も密だ。間に小説の版元さんが入るため、自然にそちらともやり取りが増えた。











