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渋谷〇〇書店日誌  作者: 粉雪@4/14『魔術師の杖』コミックス1巻発売


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50/50

50.瓢箪から駒

「コミカライズ開始のお祝いをと、ご挨拶に参りました」


 私は接客中だったから、渋谷〇〇書店のカウンター越しの会話になった。


 マッグガーデン社が手掛けるコミカライズは順調に進んでいる。読者さんからの評判もとてもいい。インプレスnext publishingの担当氏は深々と頭を下げた。


「わが社から本を10冊出して頂き、ありがとうございます」


「…………」


 もちろん、そのためにわざわざ書店へ出向く必要はない。しかも彼の顔色は暗かった。


『魔術師の杖』の版元はインプレスだけれど、正確にはインプレスnext publishingの刊行物であるため、インプレスブックスのラインナップにも載っていない。


 電子書籍以外の販路が、事実上断たれている理由もそこにある。


 書店に並ばない本がヒットするのは難しい。


 コミカライズを機に、少しは改善されるかと思ったのだけれど……八方塞がりな状況は変わらないようだ。


 お願いしていた調整は、何ひとつ進んでいないのだろう。けれどそれはインプレス内部の問題で、私にもどうしようもない。


「グッズでも作ったらどうですか」


「グッズ……」


「独立系の書店は、選書や古書の商いだけでは経営が安定せず、グッズを作って売るんです。トートバッグやステッカー……しおりとかを。それを元手にしてオリジナルで新刊を作り、作家さんごと売り出してヒットを狙うんです」


 これも渋谷〇〇書店で店番をしていて得た知識だ。


 こだわりの本を置く独立系の書店は、お客さんを呼ぶために様々な工夫をしている。


 イベントを定期的に開催し、作家さんを発掘する。書店同士が集まって、大きなイベントを開催することもある。


 そして結局は本を作りだす。書店オリジナルの新刊がヒットすれば、サイン会やトークショーも開いてお客さんを呼べるし、作家さんたちの活動も支えられるからだ。


「勉強になります」


 従業員数が約250名の大企業にはない発想だったらしい。


 もともと『魔術師の杖』の読者さんから、「グッズを作ってほしい」という要望は寄せられていた。


 書影のポストカードにクリアファイル、キャラクターたちのアクリルスタンドやアクリルキーホルダー……キャラクターたちのステッカーなど。


「ええと……じゃあTシャツとか」


「そんなもん誰が着るんですか」


 胸にネリアやレオポルドのイラストがついたTシャツ……ハッキリ言おう。着て歩けない。部屋着かパジャマにしかならない。


(ダメだ、このセンス……)


 私はため息をついた。同人誌ならグッズメーカーに発注して、コミティアやBOOTHなどで売る。個人でやるなら、だいぶ手軽に作れるようになった。


 けれど会社というものは、まず企画立案して偉い人の決済を取らないといけない。グッズ担当もいない出版社で、編集者が片手間にやるには大変すぎる。


(めんどくさい……)


 担当氏が小さくなる。


「Tシャツなら前例がありまして……」


「クリアファイルやポストカードは前例がないんですね」


「はい」


(つまり承認を得るのは難しい……と)


 社員数約250名の大企業のお偉いさんが、わざわざコミティアなどに出かけてグッズに目を輝かせ、「わぁ、今はこんなのあるんだぁ。ウチでも作ろうよ!」と言いだす……なんてあるわけない。


 もともとIT関連の技術書がメインの出版社なのだ。質実剛健、ラノベに対する理解もなく、オタク路線だとかなりマニアックな品揃えだ。


(キラキラしたラノベには、てんで向いてない出版社だよなぁ……)


 ちょうど渋谷〇〇書店で、お客さんの要望でトートバッグを作ろうとしていたことを思いだした。


『買った本を入れて、持って帰るためのトートバッグがほしい。この書店のロゴは可愛いから、それを使ったらいいと思う』


 そんなご意見を頂き、運営さんが考えたデザイン案に、棚主たちが投票したばかりだった。


「トートバッグはどうでしょう。この書店でも今度作るんですよ」


「あ、それなら前例があります!」


(あるんだ。ま、アテにしないほうがいいわね)


「楽しくやることです。なんでも楽しめばいいんですよ」


 この書店で棚主さんたちから教わった。できるかどうかわからなくても、想像するだけで楽しくなる。担当氏は暗かった顔色がちょっとだけ明るくなって帰っていった。


 そしてなんと、彼は数ヵ月かけて社長決裁を取りつけた。


 今年発売5周年の『魔術師の杖』シリーズは、初のキャラクターグッズ、トートバッグ発売へと動き出すことになる。


 まさしく『瓢箪から駒』だった。

補足。ここで言う担当氏は、編集者のことではないです。

挿絵(By みてみん)

完成した渋谷〇〇書店のトートバッグ。

棚主さんでデザインを選んだ。

今は人気商品になっている。

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漫画家を使い潰す編集者.(部)みたいな ┐(´д`)┌ヤレヤレ ド素人の子供の使い寄越すなよ ヽ(`Д´)ノプンプン
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