45.コミカライズ連載開始
連休ということもあり、11月1日の来客は多かった。
11月の連休は毎年、『超福祉の学校』というイベントが、同じフロアで開催されるらしい。
本のバリアフリーを提唱しておられる、りんごプロジェクトの参加者やスタッフが、入れ替わり立ち替わり渋谷〇〇書店に来店される。
書店内に、りんごプロジェクトの本を置くコーナーも作られた。
店に来たら本のホコリを払って、床に掃除機をかけて。
やっていることはガチの店番だけれど、もちろん場所を借りているからには、自分の作品もアピールを忘れない。
「私の書いた小説が漫画になったんです!」
ただそのひと言で、「おめでとうございます!」と本を買って下さる方もいらした。
もちろんそんな人は少数派で、大半は「読んでみます」とのこと。それでも小説だけを並べていたときよりずっと反応がいい。
「小説家になろうという投稿サイトに書き始めて、半年で出版社からメールで打診がきたんですよ」
「へえぇ」
面白いと思ってもらい、「他では聞けない話が聞けた」と満足して帰ってもらえればそれでいい。何しろまだ1話目が公開されたばかりで、連載を追ってもらえるかもわからない。
むしろ創刊7周年になる『MAGKAN』というサイトを、来客される方の誰も知らないほうが問題だった。
漫画のサイトは出版社ごとに違っていて、読む側からすると選択肢が多い。
話が来た2024年からすでに、私は「これは『MAGKAN』というサイトごと、『魔術師の杖』を売らなければいけない」と決意を固めていた。
それはまた、『小説を書く』とか『本を創る』ということとは、別の戦いになるのだけれど。
コアなファンがいて制作体制はしっかりしている。新人漫画家を育てる土壌もある。小説のときみたいに、創刊したばかりのレーベルでないだけまだ楽だ。
店番時には鋼鉄製の扉もディスプレイに使える。閉店時には毎回片づけないといけないけれど、ひつじロボ先生に協力してもらって作ったQ&Aや錬金術小話に、『MAGKAN』で連載中の作や書影を貼った。
作ってもらったイラストのQRコードは、『魔術師の杖』の連載ページではなく、『MAGKAN』のトップに跳べるようになっている。
きっかけは店頭でもらったイラストカードでも、アクセスした人は自由に読む作品を選ぶことができる。
とにかく人目に触れること。読み続けるか、買うかどうかの判断は読者に任せる。そのスタンスはライトノベルを売るときと変わらない。
売れるのが別の作品だったとしても、出版社が潤えば結果的に助かることが多い。それならば、自分の作品だけを売るより、サイト全体を盛り上げていったほうがいい。
書店に展開してよかったのは、ふだんなら絶対読まないような方にも作品を知ってもらえたこと。
70歳ぐらいの男性が満足そうにほほえまれた。
「へぇ、これで漫画が読めるのか。面白いねぇ」
QRコードにカメラを向けて、数タップすれば漫画が読める。新しいものとの出会いは、単純に楽しい。
そうこうしていたら、以前『薬の魔物の解雇理由』のネアちゃんと来店された方が、ラベンダーメルのポンチョを着たネリアの編みぐるみを作って持ってきて下さった。
なんと着せ替えセットをいくつも用意して下さっていて、着せ替えも自由にできるという。またもや腰を抜かしそうになった。
しかも収納鞄は豆本1冊入れられるサイズ。サチヲ書店様が作った奈々のドレスを着たリカちゃんに持たせたところ。
コミカライズの1話目の評判はとても良く、原作のファンにも喜ばれたし、初読の読者さんにも好評だった。
「イイねは10連打でお願いします!」
今も会う人ごとに言っている。みなさん律儀に押して下さったのだろう。感謝しかない。
そんなわけで、始まったばかりの『魔術師の杖 THE COMIC』は、わりといいスタートを切れたと思う。
来店された方ひとりひとりからお祝いしてもらい、ひとりでソワソワと家で過ごすより断然よかった。










