9. 【極大ブレスVS絶対防御】魔法には魔法を!相殺スキルの真価
9. 【極大ブレスVS絶対防御】魔法には魔法を!相殺スキルの真価
ミーユの目が、黄金色から元のピンク色に戻る。間違いない、何かのスキルだ。私はブレイドさんのほうを見る。
「ほう……まさかお前も神格スキル持ちだとはな」
「神格スキル?なにそれ?なんか気づいたときにできるようになっていたんだよね、これ」
えぇ!?ミーユも神格スキル持ちなのか。本人は無自覚だったみたいだけど……偶然にしては、こんなにも稀少な能力者が集まるなんて。もしミーユがパーティーに入ってくれたら、更に最強になるのでは?
私はハッとしてすぐに顔を引き締める。絶対今の顔に出ていた。いけないいけない。冷静に話をすすめることにする。
「神格スキルって本当なんですか、ブレイドさん?」
「ああ。ミーユ、お前の能力は『鷹の目』。なるほど……凶暴なキラービーの巣から、見つからずにエーテルドロップを採取できたのも納得だ。『鷹の目』は自身の視点を飛ばし、さらには物質の透過すら可能にするスキル。索敵能力に優れている反面、距離や時間で目を酷使する。長時間の使用は失明のリスクもあるからな。覚えておけ」
「マジ?ありがとねブレイド。私、知らなくて使い続けるところだったよ!」
「まぁ、訓練次第では強力なスキルにもなるがな。ミーユ、1つ言っておく。あまりそのスキルの事を周りにばらさない方がいい。お前のそのスキル欲しさに近づいてくる輩もいるし、実力がないうちは、最悪利用されて、殺されることもあるからな」
「忠告ありがとう、ブレイド。でもその心配はないと思うから安心して。……というか重要なことがあるんだけど」
重要な事?なんだろう。私とブレイドさんがミーユの方を見ると、彼女はニコニコしながらさらっととんでもないことを言った。
「うん。そのグリムドラゴン、この奥の岩陰に2体いるよ」
ええ!?ドラゴンが2体もいるの!?ど、どうしよう……1体だけでも死ぬかもしれないのに、一気に2体も相手にするなんて。絶望で頭が真っ白になりかける私をよそに、ブレイドさんは平然と言い放った。
「別に問題はない」
「え?グリムドラゴンが2体いるんですよ!?一気に2体も相手になんか……」
「1体はお前が相手しろ、エルン。残りの1体をオレとミーユで倒して、お前に合流する。お前の『相殺の調停』のスキルなら、足止めくらい余裕だろ?」
えっ……そんなに簡単に言わないでほしいんだけど。いくらダメージを受けないって言っても、まだ……半信半疑だし、私はドラゴンと戦ったことなんてないんだから!
「意見は聞かない。その作戦で行く。とりあえず先へ行くぞ」
「そっ、そんなぁ……」
◇◇◇
岩壁を抜け、すり鉢状の開けた場所に出る。すると、ミーユの言葉通り、奥の開けた場所に2体の巨大なドラゴンが横たわっていた。
間違いない、あれがグリムドラゴンだ。中型と言えど、間近で見ると見上げるほど巨大で、全身を覆う茶褐色の鱗は岩のように分厚い。あんなのを、私1人で相手にしなくちゃいけないのか……。
「ミーユ。お前は何ができる?」
「私?私はこの魔導銃で戦う事かな」
ミーユは腰のホルスターから、銀色に鈍く光る銃を取り出した。
「魔導銃か、めずらしいな。それは……ライゼンバッハ帝国の国産物だろう?どこかの武器屋で買ったのか?」
「……まぁ、そんなところ。私が後方から援護で、ブレイドがドラゴンを狩るってわけね?」
そんな2人のやり取りを、私は横目で見る。なんかいいな、作戦の話し合いができて……でも、もう私に残された選択肢はない。あの時、ギルドで覚悟は決めたから。
「エルン。お前は大丈夫か?正直、この作戦はお前があのドラゴンを1人で食い止められなければ成立しない。できるか?」
「やるしかないですよね? ……大丈夫です。覚悟はできています」
私は両手でショートソードと杖を強く握り直す。
「私はこのスキルで、今までパーティーを追放してきた奴らを見返すんだ。絶対にグリムドラゴンを討伐して、シルバーランクに昇格する!」
「返事と威勢だけはいいな。よし……オレが合図を出す」
ブレイドさんが短く手を挙げ、振り下ろす。それを合図に、私たちは一斉に散開した。
私はドラゴンの注意を引き付けるため、走りながら杖を突き出す。イメージするのは、ブレイドさんが手合わせの時に見せた魔法の軌道。
「いっけえぇぇ!」
私の『形態模写』によって再現された炎の魔法『ファイアボール』が放たれ、見事グリムドラゴンの1体の顔面に命中した。
ドカン!と小さな爆発が起き、怒り狂った1体が雄叫びを上げて私の方へ突進してくる。
「初めてにしては上出来だエルン!ミーユ、援護を頼むぞ!」
「もちろん、まかせて!」
上手く分断できた。地響きを立てて迫り来る巨大なドラゴンを前に、足がすくみそうになる。でも、怯むな。私は杖を地面に突き刺し、ショートソードを構えて体勢を整えた。
落ち着け……落ち着くんだ、エルン=アクセルロッド。ここから私は、グリムドラゴンの攻撃を防ぐことだけに集中すればいい。
グリムドラゴンの胸が大きく膨らむ。次の瞬間、喉の奥から灼熱の炎のブレスが放射状に放たれ、私を飲み込もうと襲いかかってきた。
私は咄嗟に魔法バリアを展開する。
ゴォォォォッ!!
視界が真っ赤な炎に飲み込まれ、凄まじい熱波と爆風が周囲の岩肌を赤熱させ、ドロドロに溶かしていく。
ゴォォォォッという轟音の中、私は覚悟して目を閉じた。
だが――熱くない。
恐る恐る目を開けると、私をドーム状に包み込む魔法バリアには、ヒビ一つ入っていなかった。
『相殺の調停』の効果により、私が張ったバリアの強度が、自動的にドラゴンのブレスの威力と『完全に同等』になるまで引き上げられている。
凄まじいブレスと完璧に拮抗したバリアは、周囲を焦土に変える炎の嵐を真っ二つに裂き、私へのダメージを完全に防ぎ切っていた。
自身の最強のブレスを防がれたことに驚いたのか、グリムドラゴンが忌々しげに咆哮を上げ、今度は大木のような太い前腕で私を引き裂こうと爪を振り下ろしてきた。
魔法じゃなく、物理攻撃。なら、こっちも物理だ!
「やぁぁぁっ!!」
私はショートソードを両手で構え、真っ向からその巨大な爪を迎え撃つ。
ガキィィィィンッ!!
火花が散り、強烈な金属音が渓谷に響き渡る。……重くない。ドラゴンの圧倒的な腕力に対し、私の腕力も自動的に『完全に同等の力』へと引き上げられ、一歩も押し負けることなく完璧に拮抗していたのだ。
「はぁ、はぁ……いける……やれる!」
これが『相殺の調停』の力。魔法には魔法で、物理には物理で応じれば、どんな格上の攻撃だろうと自動的に同等まで引き上げられ、絶対に防ぎ切れる。
強敵と戦うことで、ようやく実感が湧いてきた。不思議と頭はクリアになり、身体が羽のように軽く動く。私はもう、普通の平均的な能力者じゃない。都合よく使われて捨てられる『便利屋』でもない!




