10. 「私、足手まといじゃなかった!」――追放29回からの最強宣言
10. 「私、足手まといじゃなかった!」――追放29回からの最強宣言
「エルン、派手にやってるね!私も頑張ろうかな……ブレイド!少し時間を稼いで!」
「ああ。分かった」
一方、もう1体のドラゴンと対峙していたミーユが、静かに目を閉じた。
「『鷹の目』……」
スキルを発動し目を開くと、その両瞳は黄金色に発光していた。彼女の視界には、ドラゴンの分厚い岩の鱗を透過し、鼓動する心臓や魔力の流れ、骨の隙間といった《《急所》》が克明に映し出されている。
「見えた……さて、どれにしようかな……これに決めた!」
ミーユはポシェットから素早く赤黒い弾丸を選び出し、魔導銃に装填する。そして、迷いなくドラゴンの急所へ向けて引き金を引いた。
「撃ち抜け……『重撃の弾丸』!!」
ドォンッ!と空気を震わせる破裂音と共に放たれた弾丸は、分厚い鱗のわずかな隙間を正確にすり抜け、ドラゴンの内部で炸裂した。
ギャァァァッ!!と悲鳴を上げ、グリムドラゴンが大きく体勢を崩す。
「今だよブレイド!」
「上出来だ、ミーユ」
その隙を、伝説のギルド冒険者パーティーの『閃光』が見逃すはずがない。
ブレイドさんは断崖の壁を蹴って一気にドラゴンの頭上へと跳躍すると、全身の魔力を纏わせた剣を上段から振り下ろした。
凄まじい剣閃が走り、グリムドラゴンの硬い首が一撃で両断される。ズズンッ……と、1体目の巨大な身体が地響きと共に倒れ伏した。
その直後だった。
私が相手をしているもう1体のグリムドラゴンは、同胞が狩られたことに気づき、さらに激昂して猛攻を仕掛けてきた。
地を割るような咆哮と共に、丸太のように太い尻尾が横薙ぎに迫る。私はショートソードと杖を交差させて真正面から受け止めた。
ズガァァァァンッ!!
すさまじい衝撃波が巻き起こり、周囲の赤茶けた岩肌が粉々に吹き飛ぶ。しかし、爆発の中心にいる私の足は一歩も下がらない。『相殺の調停』がドラゴンの圧倒的な質量と同等の力を私に与え、完璧に拮抗しているのだ。
自分の全力の一撃をちっぽけな人間に止められ、ドラゴンは信じられないものを見るように目を血走らせた。そして今度は狂ったように、岩盤をも砕く巨大な爪で連続攻撃を繰り出してきた。右から、左から、そして上空から。
嵐のように降り注ぐ死の連撃。
だが、いくら怒りに任せて力を振り絞ろうと、私の『相殺の調停』を破ることは絶対にできない。爪の連撃も、尻尾の薙ぎ払いも、私はそのすべてを弾き返し、決して崩れない壁となって立ち塞がり続けた。
激突のたびに轟音が谷底に鳴り響く。弾き返される衝撃でドラゴンの強靭な鱗が次々と砕け散り、自らの怪力の反動でその両腕はボロボロに傷ついていく。私には傷一つない。私の絶対的な防御そのものが、巨大な竜を削る最大の反撃になっていた。
自分より遥かに小さな人間にすべての攻撃を無効化され、ドラゴンが苛立ちと疲労を見せ、その動きがほんのわずかに鈍った、その時。
「待たせたな、エルン!」
「こっちも終わったよー!今度は右足の関節、もらうね!」
ブレイドさんの声と共に、後方から放たれたミーユの魔導弾が、2体目のドラゴンの右足を正確に撃ち抜いた。
「ギャァァッ!」
巨体がグラリとバランスを崩す。その決定的な隙を突いて、ブレイドさんが私の真横を風のように駆け抜けた。
「よく持ち堪えた!あとは任せろ!」
ブレイドさんの剣から、紅蓮の炎が激しく立ち昇る。それはかつて『閃光』で最強の剣士と呼ばれた彼が振るう、規格外の炎の魔法剣。
踏み込みと同時に放たれた、ブレイドさんの渾身の一撃。岩盤を穿つような轟音と共に、下段から跳ね上がるような爆炎の剣閃が放たれる。鋼鉄よりも硬いはずのグリムドラゴンの分厚い鱗は、灼熱の刃によって容易く両断され、その命を完全に断ち切った。
ズズンッ……!と、2体目の巨体が地響きを立てて沈み込む。私が完全に攻撃を防ぎ切り、ミーユが崩し、ブレイドさんがトドメを刺す。誰一人欠けても成立しない、これが本当の『パーティー』の戦いだった。
「エルン、大丈夫か!?」
ブレイドさんが剣を納めながら声をかけてくる。だが、私はその言葉を聞く前に、自分からブレイドさんの所へ全力で走り出していた。
そのまま、勢いよく彼の大きな両手を両手でギュッと握りしめる。
「私……私、できた!魔法も、爪も、全部完璧に防ぎ切れた!私……能力がなかったんじゃない、使い方が分からなかっただけだったんだ。あの、あの……一緒にパーティーを組んでくれて、本当に、本当にありがとうございます、ブレイドさん!」
感情が高ぶりすぎて、ボロボロと涙が溢れてくる。29回も『使えない』と捨てられてきた私が、初めて自分の居場所と役割を見つけられた瞬間だった。
「……泣くなよ。大袈裟だなお前は」
ブレイドさんは呆れたようにため息をついたが、その表情はとても優しかった。
「言っただろう?オレがお前を『閃光』の連中がいた場所くらいまで連れていってやると。それに……まだ始まったばかりだろう?オレたち底辺が頂点をとるのは、まだまだ先だ」
ブレイドさんは私の手を解くと、そのまま乱暴に、でもどこか温かい手つきで私の頭をポンポンと撫でた。
「まぁ……ガキの面倒を見るのは癪だが、これからもよろしくな。エルン=アクセルロッド」
「はい!こちらこそよろしくお願いします、ブレイド=クロフォードさん!」
私たちは、高難度のグリムドラゴンの討伐依頼を見事に達成した。正直、興奮しすぎていて、その後の証明部位の剥ぎ取り作業なんかはあまり覚えていない。
初めはルナレットさんが半ば強引に決めたことだったけど、ブレイドさんとパーティーを組めて本当に良かった。そして、ミーユという新しい仲間とも出会えた。
ギルド内で『底辺』と呼ばれた私とブレイドさんの逆襲は、ここから始まる。
今、ここに宣言する。
追放29回を受け、『便利屋』と呼ばれていた私が。
最強無敵の超絶美少女として、あの伝説の最強ギルド冒険者パーティー『閃光』を必ず越えてみせる、と!
【作者より】
ここまでお読みいただきありがとうございます!
ただの「便利屋」として29回も追放されたエルンが、ブレイドと共に死線を越え、ついにグリムドラゴンを討伐しました!
「ドラゴン討伐おめでとう!」「このコンビ面白くなってきた!」と思っていただけましたら、ぜひページ下部の『★』を押して応援していただけると、作者のモチベーションとエルンの魔力が爆上がりします!
ここから始まる二人の快進撃を、引き続きよろしくお願いいたします!




