4. 【二つの神格スキル】私の能力、実は規格外だったみたいです
4. 【二つの神格スキル】私の能力、実は規格外だったみたいです
二人きりになれる場所ということで、結局、私の家に来てしまった。
王都の裏路地にある、安くて狭い部屋の一室。男の人を家にあげるなんて……しかもまだ話して2日目の人を。なんてはしたないんだ私……しかもこのおじさんは全然タイプじゃないし、あと私は軽い女じゃないから!
「とりあえず座れ」
「はい」
は?というかここは私の家なんだけどね……なんでこのおじさんは、狭い部屋の真ん中でそんなに偉そうに腕を組んでるんだ……。
「あのな……お前本当に女か?部屋に上げておいて、茶の一杯も出さねぇとは気が利かねぇな?」
「……っ」
うるさい!本当に失礼なんだけどこのおじさん!さっきはこのか弱い超絶美少女を本気で黒焦げにしようとしてたクセに、気が利かないのはどっちだ!
そう心の中で盛大に悪態をつきながら、私は渋々安物の茶葉でお茶を淹れ、ドンッと音を立ててテーブルに置いた。少し零れて睨まれたけど放っておく。
「エルン、さっきも言ったが、お前は神格スキルを2つ持っている。さっきの戦いを見て確信した」
神格スキルを、しかも2つも持っている。私、夢でも見てるのか?一応確認の為に手の甲をつねる。痛みはある。夢じゃない。
「オレも冒険者歴は長いが、2つ持っているやつには出会ったことがない。とにかくだ、まず1つは『形態模写』だ。お前は相手の能力を見て、それをそのままコピーして使う事ができる。だから何でもできるんだお前は。得意不得意という概念はない。自分の魔力と体力の範囲内なら、お前に出来ないことは絶対にない」
「確かに……やろうと思えば、大抵のことは見よう見まねで出来てきたような気がします……」
『形態模写』私の能力。なら……私は訓練次第で、どんな魔法も剣技も使えるという事だよね?それって……最強なのでは?
「そして2つ目は『相殺の調停』だ。すべての力を相殺する能力。どんな力でも、条件さえ合えば完全に威力を殺す事ができる。物理なら物理、魔法なら魔法のようにな。さっきオレの炎魔法の爆炎玉を防いだ魔法バリアもそれだ」
「私の魔法バリアが……?」
「ああ。オレの『魔法攻撃』に対して、お前が『魔法バリア』を張ったから条件が満たされたんだ。お前のバリアの強度が、自動的にオレの魔法の威力と『完全に同等』になるまで引き上げられた。だから爆発は起きたが、威力が拮抗してバリアは破られず、お前は無傷だった」
「そんな力が私に!?やばっ……」
私はつい心の声が漏れてしまう。魔法には魔法、物理には物理を合わせるだけで、どんな相手の攻撃でも自動で威力が引き上げられて完全に防ぎ切れるなんて、もうこれは最強と呼んでいいよね?
だが、浮かれる私に冷や水を浴びせるように、ブレイドさんは深くため息をついた。
「それにしても残念だなお前。よりによってその2つの能力とは……最高に相性が悪いぞ」
「え?」
「『形態模写』は優れた能力だが、『相殺の調停』には致命的な欠点がある。それは、出力が『相手の能力と完全に同じレベル』にしか引き上げられないと言うことだ」
ブレイドさんの言葉に、私は息を呑む。
「お前は相手の攻撃に対して、完璧に同等の強度をぶつけて防ぐことができる。相手の技をコピーすることもできる。だが、相手以上の力を出して『倒す』ことは絶対に出来ない。常に自動で相手と『引き分け』の威力に調整されてしまう。それが凶悪なモンスター相手でも、そこらへんのスライム相手でもな。お前がいくら強くなっても、能力は上がるが、単独では絶対に決定打を持てない」
「なるほど……だから……今まで私は『便利屋』になっていたんだね」
全部、腑に落ちた。
みんなが見限るのも無理はない。だって、ブロンズランクの弱い魔物ですら、私は相殺して引き分けるだけでトドメを刺せないんだから。
「お前の能力の異常性に、周りの連中も、お前自身も気づいていなかったんだ。仕方ないさ、今まではな」
ブレイドさんは腕を解き、少しだけ口角を上げて不敵に笑った。
「だが、使い道さえ分かれば話は別だ。……お前が本気なら、オレが『閃光』の連中がいた場所くらいまでは連れていってやるよ」
ブレイドさんは、私を心から認めてくれている。
そう思うと、不思議と瞳からポロポロと涙がこぼれてきた。
今まで誰一人として、私の努力や能力を真っ直ぐに見てくれなかった。私自身でさえ、自分が無能なのだと諦めかけていたから……。
「私……っ、今まで……良かった……ただの足手まといじゃ、なくて……っ」
「泣くなエルン。お前はここから成り上がるんだ。まずは、今まで追放した奴らを見返してやればいい」
「はい……!ありがとうございます、ブレイドさん!」
私は乱暴に涙を拭った。もう覚悟は決めている。私はもう『便利屋』なんかじゃないんだ。
「そういえば、どうして私の神格スキルが分かったんですか? 効果まで正確に……」
「ああ?さっき言っただろう。見て分かったって」
「えっ?見ただけで分かるなんて……」
「オレも神格スキル持ちだ。『分析家』。オレはある程度の魔力の流れを見れば、相手のスキルと本質が分かる」
ブレイドさんも神格スキル持ち?なんで言ってくれなかったの!?2人が神格スキル持ち……実は最強なのでは??
「ん?なんだ。お前は知ってるかと思っていたが?」
「何をですか?」
「ルナレットから聞いてないのか?オレが、その『閃光』の元メンバーだったことを」
ええ!?聞いてませんけど!?ブレイドさんがあの伝説の最強ギルド冒険者パーティーの『閃光』!?それなら私たちって……絶対に最強なのでは???
なら、なんでこの人、ギルドで毎日呑んだくれてるの!?そんなすごい人なのに。
「……もう誰かとパーティーを組むつもりはなかったんだがな。これは、ルナレットにしてやられたかもな」
「ブレイドさん?」
「いや、こっちの話だ。それじゃオレは帰るからな。明日はドラゴン狩りだ、遅れんなよ?」
「あ、はい!」
ブレイドさんはそう告げると、狭い部屋から出ていった。歩いていくその後ろ姿は、何故かとても大きく頼もしく見えた。
こうして私は『便利屋』のレッテルを晴らすため、この神格スキルを使って最強になる。そう決意を新たにした1日になったのだった。




