3. 【異常性の証明】ただの手合わせで殺されるかと思った件
3. 【異常性の証明】ただの手合わせで殺されるかと思った件
私は木刀を構える。目の前に立つブレイドさんからは、だらしない酔っ払いの気配は消え失せ、強者の余裕が漂っていた。
私はジリジリと間合いを詰め、木刀が届く距離に入った瞬間、一気に踏み込んで袈裟斬りを放つ。だが、私の全力の剣撃は、ブレイドさんの木刀に片手であっさりと受け止められた。
「ふーん。まぁ剣は振れてるな。別に普通だがな」
「ありがとうございます」
「いや誉めてねぇよ。次はオレから行くぞ!」
速い。ブレイドさんは一気に距離を詰め、鋭い剣撃を何発も打ち込んでくる。重い。木刀越しに腕が痺れる。受け止めるだけで精一杯だ。
「……受け止めるか。ならこれはどうだ?」
ブレイドさんが空いた左手を突き出すと、その掌から紅く燃える火の玉が現れ、私に向かって放たれた。
私は咄嗟に身を捻って避ける。火の玉は後ろの地面に当たった瞬間、爆発して辺りに白煙を巻き起こした。
……どこが手合わせですか???
私の事、仕留めに来てませんかこれ。
「あの!納得してるのはいいんですけど、威力が手合わせのような気がしないんですけども……」
「オレをおじさん呼びしたからな。少しばかり痛い目にあってもらわないとな?」
すごい露骨に悪い顔をしている……。やっぱりすごい私情が入ってる!
すると、ブレイドさんは燃える炎を纏わせた。魔法剣だ。あれはさすがに木刀で受けきれないし、魔法バリアで防いでも押し切られる。
それなら、あれしかない!
襲いかかるブレイドさんの炎の魔法剣。その灼熱の軌道が迫る中、私は彼の技をその目に焼き付け、見よう見まねで自分の木刀へと魔力を流し込んだ。
スッ、と。私の木刀に、ブレイドさんと全く同じ色、全く同じ熱量の炎が纏われる。
ガキンッ!!と、炎と炎がぶつかり合う鈍い音が響く。
……良かった。見よう見まねで初めて使ってみたけど、成功した。私は元から炎属性の魔法は少し使えるもんね!
「お前……全く同じ威力の魔法剣を使ったな?」
「そうみたいですね。見よう見まねで初めてやってみましたけど、成功して良かったです!」
「!?……は、初めてだと?」
ブレイドさんは木刀を合わせたままで立ち尽くし、押し黙ってしまった。
もしかして、初めての魔法剣なんか調子に乗って使ったから怒ってるんじゃ……しかもすごい怖い顔をしてるし。
「……次で最後にする。全力で防いでみろ」
そういうと、ブレイドさんの周囲に無数の爆炎玉が浮かび上がり、私を全方位から包み込むように襲いかかってきた。
急だったけど、私は咄嗟にいつも通り魔法バリアを張る。次の瞬間、鼓膜が破れるかと思うほどの轟音と共に、視界が真っ赤な爆炎に飲み込まれた。
ドォォォォンッ!!
激しい爆発。地面が抉れ、周囲に白煙と土煙が巻き起こる。
完全にやられた、と思った。でも――。
「……えっ?」
煙が晴れた後、私は無傷で立っていた。
私が張った魔法バリアのすぐ外側――足元の地面はクレーターのように抉れ、周囲の草は黒焦げになっている。それなのに、私には熱も爆風も一切届いていない。
咄嗟に張った、いつも通りの魔法バリア。あの威力なら、本来なら一瞬で粉々に砕け散るはずだった。しかし、私の魔法バリアが相手の爆発と完全に同等の強度へと自動的に引き上げられ、凄まじい威力を完璧に相殺し切っていた。
私のバリアって、こんなに強かったっけ……?
「はぁはぁ……ちょ……ちょっと待ってください!?今の爆発、絶対本気ですよね!?」
「……ああ。悪いが、少し本気でいかせてもらった」
周囲の惨状と、無傷の私を交互に見比べながら、ブレイドさんは木刀を下ろした。そして、真っ直ぐに私の目を見てくる。その表情はこれまでにないほど真剣だった。
「エルン。驚くなよ?お前は『神格スキル』を持っている」
「……へ?」
神格スキル。それは持って生まれた天賦の才能。かつての最強ギルド冒険者パーティー『閃光』の全員が持っていたと言われている、神に選ばれた証。
そんな才能が私に?そんな馬鹿な。なら何で今まで私は『便利屋』なんかに成り下がっていたんだ?
「冗談はやめてくださいよ……!私にあるのは、全部中途半端なスキルだけです。だからいつも『便利屋』だって馬鹿にされて、パーティーを追い出されて……神格スキルなんて大層なもの、あるはずがありません!」
私は慌てて否定した。期待して、また突き落とされるのが怖かったからだ。しかし、ブレイドさんは私の言葉を鼻で笑うこともなく、ただ静かに首を横に振った。
「いや、間違いない。お前のそれは、中途半端なんじゃない。規格外すぎて、凡人にはその底が見えなかっただけだ」
「規格外……?」
「ああ。しかもだ。……エルン。聞いて驚くなよ? お前はその神格スキルを、2つも持っている」
「!?」
2つ!?歴史上の英雄だって、神格スキルは1つしか持っていないはずなのに!?
あまりの衝撃に言葉を失っていると、ブレイドさんはふと周囲を見回した。先ほどの爆発音を聞きつけてか、遠くの方から野次馬が集まり始めているのが見える。
「場所を移すぞ。ここじゃ人目が多すぎる。……ついてこい、お前のその『異常性』について説明してやる」
ブレイドさんはそれだけ言うと、焦げた木刀を肩に担いで歩き出した。私はまだ混乱で頭がぐちゃぐちゃになりながらも、その大きな背中を慌てて追いかけるしかなかった。




