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『追放29回からの最強宣言!』~ギルドで便利屋と呼ばれている私。嫌われ者同士パーティーを組んだら、なぜか最強無敵になれました~  作者: 夕姫
第3章 第三皇女の秘密 ~約束のアクアマリン~

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6. 【アティ視点】彼女が自分の口で秘密を話してくれるその時まで

6. 【アティ視点】彼女が自分の口で秘密を話してくれるその時まで




 私とミーユさんは、依頼先である北のザルガン洞窟に向かって、少し険しい山道を歩いています。私の背中には、いつも通り巨大なバトルハンマーがあります。その重さにはすっかり慣れているはずなのですが……今日のミーユさんは、いつもよりずっと歩くのが早くて、ついていくのに少し困っています。


「アティ、大丈夫?ペース早いかな?」


「待ってください~。今日のミーユさん、なんだかすごく歩くの早いですよ」


 私が小走りで追いかけながら言うと、前を歩いていたミーユさんが急に立ち止まり、振り返りました。


「私は普通だと思うんだけどな。……まぁいいか、ゆっくりでも。というか、そっちのほうが助かるかなぁ。早く依頼が終わっちゃうと、また街に戻ってあの『皇女探し』をしないといけないもんね……」


 いつもなら明るく冗談を飛ばすミーユさんなのに、風に揺れるピンク色の髪の隙間から見えたその横顔は、ひどく思い詰めたように、とても寂しそうに見えました。


 私はパーティーの中では一番最後に加入したので、皆さんとの付き合いは少しだけ短いです。でも、命を預け合う皆さんの事を「大切な仲間」だと思う気持ちは、同じだと思っています。


「あ!あれじゃない?北のザルガン洞窟って!」


 ミーユさんの声にハッとして前を見ると、切り立った崖の下に、ぽっかりと大きな穴が開いていました。その奥には仄かに青い鉱石の光が見えています。


「ここを降りて中に入れば良いんですよね?」


「うん。そうみたいだね」


 洞窟の暗い入り口を前にして、ミーユさんの小さな背中がまた少し強張ったように見えました。


 やっぱり、このままじゃいけません。私はその場で立ち止まり、背中の巨大なハンマーをゆっくりと地面に下ろしました。ズシン、と足元に重い地響きが鳴ります。


 ――でも、ミーユさんが今たった一人で背負っている秘密は、きっとこの鉄の塊なんかよりもずっと重くて、苦しいものなのだから。


「ん?アティどうしたの、少し休む?」


「ミーユさん。……その、何を迷っているんでしょうか?」


「えっ……?」


「私はミーユさんの事、まだ全部は知りませんし、個人的な事情を無理に詮索するのは違うとも思っています。でも、今のミーユさんはいつものミーユさんじゃないです。何かに迷っていて、とても苦しそうです。そんな時に、仲間なのに力になれないのはすごく悲しいです。もちろん、エルンさんもブレイドさんも同じように心配して、そう思ってくれているはずです」


 私はミーユさんの目を真っ直ぐに見つめて、今の思っていることをぶつけます。私がギルド冒険者になったのは、困っている人を助けたいという気持ちからです。それなら、見ず知らずの皇女様よりも先に、目の前で苦しんでいる同じパーティーの仲間のミーユさんを救いたいと思うのは、当然のことです!


 するとミーユさんは目を大きく開いて、驚いた顔をしていました。そしてすぐにギュッと唇を噛み、下を向いて黙ってしまいました。


 でも、少しの沈黙の後。私の真っ直ぐな想いを聞いたミーユさんは、唐突に意外な事を話してくれました。


「アティ。私ね……エルンと出会うまで、私の事を心から認めてくれる人って《《たった1人》》しかいなかったんだ。ずっと孤独だった。だからあの時、エルンが私の事を『必要だ』って言ってくれて、パーティーに誘ってくれたのが……本当に、すっごく嬉しかったんだよ」


「ミーユさん……」


 ミーユさんは静かに目を瞑り、服の中にいつも隠しているペンダントを、服の上からギュッと祈るように握りしめました。白くなるほど握られたその指の隙間から、銀色のチェーンと、淡く澄んだ『水色の輝き』が僅かに透けて見えた気がします。


 それはまるで、遠くにいる大切な誰かを思い出し、恐怖に負けないための勇気を必死に振り絞っているように見えました。


「でもね……怖いんだ。まだ覚悟が決まっていないの。みんなの事は大好きだし、信じたいと思っているけど……私が抱えているものは、そんなに簡単に打ち明けられるような、軽いものじゃなくてね? ……なんか、ゴメン。アティが私の事を思って真剣に話してくれているのに」


 そう言って、無理に作ったような寂しそうな笑顔で私に笑いかけるミーユさんを見て、私の胸までギュッと痛くなりました。


「いえ……誰にだって、誰にも話したくない事や、抱えきれない秘密くらいあります。でも、これだけは絶対に知っておいてください」


 私は、ミーユさんの不安を少しでも吹き飛ばせるように、とびきりの笑顔を作りました。


「ミーユさん!私はいつでもミーユさんの話を聞きますからね。辛い時は、ひとりで抱え込まずにちゃんと私たちを頼ってください!こう見えても私、ミーユさんより2つも年上の、とーっても頼れるお姉さんなんですから!」


 私がえっへんと胸を張って見せると、ミーユさんはきょとんと目を丸くした後、ふっと吹き出すように肩の力を抜いてくれました。


「ふふっ……ありがとう、アティ。それじゃ、目的のザルガン洞窟の中に入ろうか!」


 そう話すミーユさんの笑顔は、やはりどこか寂しそうな色を落としていました。それは、私たちの事を信じたいという温かい気持ちと、まだ真実を打ち明ける覚悟ができていないという冷たい葛藤の中で、今にも壊れそうな感情を無理やり保っているようにも見えました。


 でも……


 今、私が彼女にしてあげられるのは、これだけです。


 これはミーユさん自身の、心の問題なのだから。無理にこじ開けるのではなく、彼女が自分の口で話してくれるその時まで、寄り添って待とう。


 私は地面からハンマーを担ぎ直し、先に歩き出したその小さくて寂しそうな背中を、ゆっくりと追いかけていくのでした。

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