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『追放29回からの最強宣言!』~ギルドで便利屋と呼ばれている私。嫌われ者同士パーティーを組んだら、なぜか最強無敵になれました~  作者: 夕姫
第2章 私は許さない!~追放者の反逆戦~

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11. 【反逆完了】最高の仲間と掴み取った、追放からの大逆転

11. 【反逆完了】最高の仲間と掴み取った、追放からの大逆転




 ワーロック古城の中庭での死闘を終えて、ギルドの依頼物である『月光水』と『ムーラン花』を、ミーユとアティが無事に確保した。


「エルン、こっちは終わったよ!」


「うん、私の方も終わった?……と思う」


 私を『便利屋』として見下していたリーナとロードの2人は、グラッドと同じように冒険者としてのプライドを完全にへし折られ、もはや反抗する気力すらなく茫然とその場にへたり込んでいる。


 もう充分に私の力を見せてやった。もし、まだ立ち向かってくるようなことがあるなら、私は何度でも戦ってその歪んだ思い込みを正してやるだけだ。もう私は、都合よく使われて捨てられる『便利屋』なんかじゃない。


「あの……このまま放っておいていいんですか?私はそこまで気にしてませんけど、エルンさんはずっとこの人たちに理不尽にバカにされてきたんですよね?」


「そうだね。でもさ、別に命まで取りたいわけじゃないし、ただ見返して『私だってできるんだ』って証明したかっただけだから。もう充分だよ」


「そうですか。私なら、このバトルハンマーで這いつくばるまでボコボコにして、二度と冒険者ができないように腕や足の骨の二、三本くらい粉々に砕いちゃえばいいのにって思うんですけど……本当に優しいですね、エルンさんは。えへへっ」


 怖いよアティ……。ニコニコと可憐に微笑みながらなんて恐ろしいこと言うの。元からそこまでやるつもりはないよ。


 とりあえず、これで西の依頼物は揃った。あとは東の『フレイムドレイクの爪』だけ。……ブレイドさん、ちゃんとやっているのかな?待ちくたびれて、どっかの酒場で昼間からお酒とか飲んでそう……。


 そんなことを考えていると、うなだれていたリーナがギリッと唇を噛み、激昂し始めた。


「ありえない!なんで……なんでなのよ!何で私たちが、あんたなんかに……っ」


「リーナ。不満があるならいつでも勝負を受け付けるよ。私はもう、逃げないから」


「……ムカつくのよ……見下して……その余裕そうな顔!!!!」


「はいはい。ミーユ、アティ。依頼物は手に入れたし、急いでギルドへ戻ろう」


 リーナはいつもの強気な発言こそするが、その足は震えており、私に掴みかかって来るようなことはなかった。私は大人の対応を見せ、うなだれている2人を置いてギルドへ戻るためにその場所を後にする。


 私たちが立ち去ると同時に入れ替わるように、グラッドがやってきてフラフラと歩み寄り、その場に私に負けた3人が合流した。


「お前たちも……あのエルンに負けたのか」


「あいつ……なんなのよ……なんであんなに素早いし、鉄壁だし……高位魔法だって……!」


「何が何だかわからないな……ボクたちの知ってる『便利屋』じゃなかった……」


 更に、ミーユの魔法弾で拘束されていたオリバーとアリシアも、拘束が解けて息を切らしながら駆けつけて来る。


「だいじょぶっすか!?みなさん!ボロボロじゃないっすか!」


「今、急いで回復しますね!」


 体の傷はアリシアの魔法で簡単に癒せるだろう。しかし、あの『便利屋』エルン=アクセルロッドに全く歯が立たずに負けたという事実は、決して消えない深い心の傷として残る。


 彼女を甘く見ていた、最初から強くないという色眼鏡で見ていたのは、完全に彼らの落ち度と言ってもいい。


 その時、『死神』ブレイドの言葉思い出す。『間違ってもお前がそいつらに劣ることはないんだ』。あの死神の言った言葉通りになってしまっていた。


 もう立ち上がる気力も失われていたが、ここでオリバーとアリシアが必死に声を上げる。


「みなさん、しっかりするっす!早く依頼物を手に入れてギルドに戻るっすよ!」


「そうです!クロス様が東でアイテムを手に入れて待っています!」


 クロス。そうだ、クロス=セントクレアがいる。彼らのパーティーが誇る、絶対的で無敗のリーダーだ。


 この西側ではエルン=アクセルロッドの気まぐれに敗れたが、パーティーとしての勝負に負けたわけじゃない。3人はお互いの顔を見合わせて立ち上がると、無傷のクロスとの合流だけを最後の希望にして、急いで中庭の採取ポイントへと向かうのだった。



 ◇◇◇



 光の女神に祝福を受け、幼いころから強力な光の魔法剣を使うことのできる神童クロス。


 彼は予定通り、東の呪いの洞窟で狂暴なフレイムドレイクを無事単独で狩り、依頼物の『フレイムドレイクの爪』を手に入れて悠々とギルドへ戻っている途中だった。


 正直、フレイムドレイクを狩るのなど造作もないことだったが……1つだけ気になることがあった。それは『死神』の事だ。


 奴は西の遺跡群へ向かったのか?それなら最初からこのアイテム収集をあきらめているのか?腑に落ちない。


 そんなことを考えながら街道を歩いていると、王都ローゼンシャリオの巨大な城壁が見えてくる。そして、この男の目線の先には、街道の真ん中に立ち塞がる黒いコートの男の姿が映っていた。


「遅い。やっと戻ってきたか……待ちくたびれて酒が切れちまったぞ」


「死神……?」


 その『死神』と呼ばれている男・ブレイドは、クロスが洞窟から戻ってくるのを、勝負が始まってからずっとここで待ち構えていたのだ。


「!!……なるほど、そういうことか。西はエルンたちに任せ、最初から、お前がオレから『フレイムドレイクの爪』を奪うことだったが目的だったのか?」


「ご名答。悪いな、オレたちは人数が少ないんでな。道中の魔物討伐に余計な体力を使うわけにはいかねぇんだ。お前らが運んできたものを、ゴール手前でもらうのが一番効率がいい」


「ふっ、浅はかな。そんなことをしても無駄だ。西に向かったオレの仲間が、間違いなく残りの依頼物を持ってくる。お前たちの負けだ、大人しくエルン=アクセルロッドと共にギルドを去るがいい!」


「分かってねぇな?残り2つの依頼物は、エルンたちが死なない限り《《絶対に手に入る》》。お前の仲間じゃあいつらは止められない。だから、この勝負は初めからお前とオレの戦いなんだよ」


 ギルドの収集依頼のルールは、あくまで『指定された依頼物を持ってくる事』。それがどんな手段であってもかまわない。実際このように、同じ依頼を受けた冒険者同士で戦い、ゴール直前で奪い合うことも暗黙の了解として少なくないのだ。


「フハハッ!この神童であるオレと戦うつもりなのか、死神?」


「だからそうだと言ってんだろうが。大人しくその『フレイムドレイクの爪』を置いていけ。諦めろ、お前のそのお坊ちゃん剣術じゃあ、オレには一生勝てん。そして、エルンたちが間違いなく依頼物を持ってここに来る」


「ふざけるな。万が一にも、あの無能なエルン=アクセルロッドたちが戻って来ることはない。今頃、オレの優秀な仲間たちが西で全員拘束しているさ!」


 そうだ。こっちは人数も多い。警戒するのはピンク髪のあの女だけで、エルンとアティはただの足手まといのお荷物だ。オレたちが負けるはずがない。クロスは光の魔力を剣に纏わせ、自信満々にブレイドへ剣先を向けた。


「クロス。お前を叩き斬る前に、1つだけ言っておく。……お前は回復魔法が使えるか?」


「なに……?使えるわけないだろう。オレは前衛の剣士だぞ」


「なら、盾役の技術は?索敵は?遠距離の攻撃魔法や、味方を強化する補助魔法は? ……分かるか。エルンは《《何でもできる》》んだ。お前らはあいつを『器用貧乏な便利屋』と呼んで見下していたが……お前、ギルドで『何でも一人でできる奴』を見たことあるのか?」


 ブレイドの低い声が、クロスの余裕にわずかな波紋を立てる。


「普通の人間は自分の長所を一つだけ生かし、職業を名乗ってギルドで活躍するのが普通だ。あいつは《《何でもできる》》時点で、普通の人間じゃねぇんだよ。そしてあいつは、間違いなく伝説と呼ばれた『閃光』を越える最強のギルド冒険者になる。その才能を見抜けず、ただのゴミとして捨てたのは……本当に残念だったな?」


「馬鹿馬鹿しい!あいつはゴブリンもスライムも倒すことができないんだぞ!?誰がどう見ても足手まといだ!そんなやつ、一流のオレのパーティーに置いておけるか!」


「……だからお前は、オレたちに勝てないんだよ。己の強さに胡坐をかいたその視野の狭さと傲慢さは、リーダーとしていずれ致命的な足元をすくわれる」


 ブレイドは腰の剣に手をかけ、ゆっくりと口角を上げた。


「忠告してやる。元『閃光』のギルド冒険者の先輩としてな」


「……せ、閃光……だと!?」


「さて……少しばかり痛い目を見ろ、軽く相手してやるよ、クロス=セントクレア」



 ◇◇◇



 西の遺跡群で依頼物を手に入れた私たちは、急いでギルドへ戻るために街道を走っている。重いハンマーを背負ったアティも、信じられないスタミナで汗をかきながら頑張って走ってくれている。ミーユはなんだかすごく楽しそうに先頭を駆けている。


 目の前には、王都ローゼンシャリオの巨大な門が見えてくる。そして、門の前に立つ人影が二つ見えてきた。


「遅い」


 そこには、つまらなそうに腕を組むブレイドさんと……泥だらけになって地に膝をついているクロスの姿があった。あのプライドの高いクロスが、完全に絶望した顔でへたり込んでいる。


「ぜぇ……ぜぇ……これでも私、ハンマー背負って一生懸命走ってきたんですよ!?遅いなんてひどいです!」


「うんうん、アティすっごく頑張ってたもんね!」


「ブレイドさん、怪我はないですか?それと……『フレイムドレイクの爪』は?」


「見りゃ分かるだろう?ここにある」


 ブレイドさんが足元から拾い上げ、ポイッと私に投げ渡したのは、間違いなく『フレイムドレイクの爪』だった。


 地に這いつくばるクロスの姿を見れば、何があったのかは一目瞭然だったか。ブレイドさんを見るが、息一つ乱しておらず、傷一つ負っていない。さすがは最強のギルド冒険者パーティー『閃光』の元メンバーだね。


 ブレイドさんの作戦と圧倒的な力。ミーユの起点。アティの知識とパワー。そして、私。


 誰一人欠けても成し得なかった。あの『便利屋』と呼ばれた底辺の私が、最高の仲間と共に手に入れた、完全勝利だ。

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