10. 私の本当の価値は、あんたたちには一生分からないまま
10. 私の本当の価値は、あんたたちには一生分からないまま
ワーロック古城の中庭に、地鳴りのような大きな轟音と振動が伝わってくる。
「うわっと……何よさっきから一体?」
「あー、グラッドがエルン=アクセルロッドたちのパーティーを一方的に潰してんじゃない?」
「かもね。でもやりすぎじゃない?たかが『便利屋』ごときにさ?まぁいいやロード、さっさとこの水とあの花を手に入れて帰るわよ!」
ワーロック古城の中庭には、大きな月の魔力に照らされた『月光水』、そして静かに発光する『ムーラン花』が咲いている。そして先にたどり着いていたリーナとロードが、まさにそれを手に入れようとしている時。
「ちょっと待ってね、お二人さん?私たちがそうはさせないんだよね?」
「ミーユさん待ってください~……ハンマーが重くて……」
間一髪で、息を切らしたミーユとアティが中庭に間に合った。
「ちっ……グラッドの奴どうしたのよ。まさかエルン=アクセルロッド如きに苦戦してんじゃないわよね?」
「リーナ。それはないでしょ。だって一人で魔物も倒せないやつなんだよ、あのエルン=アクセルロッドは」
「確かにそうか……あり得ないわよね、あいつが勝つなんて!」
「う~ん?」
そんな会話を聞くミーユは、意味が分からず首をかしげる。それは、エルンのスキル『相殺の調停』は最強で無敵だと知っているからだ。最初はただ実戦で魔物を倒す経験がしたかっただけだったが、あのグリムドラゴンを討伐した時から、本気でエルンとパーティーを組みたいと思うようになっていた。エルンと一緒ならきっと……《《自分の目的》》を叶えることができると。
◇◇◇
「どうするリーナ?あいつらを倒す?」
「面倒だけどやるしかないでしょ。まぁ、どうせすぐにグラッドが追いついてきて――」
「合流できればよかったんだけどね。悪いけど、グラッドはもう来ないよ」
リーナの言葉をピシャリと遮るように、私は平然と中庭の入り口に姿を現した。遅れてやってきたヒーローにしては、彼らに絶望を与える、少しばかり意地悪なタイミングだったかもしれない。
予想外の出来事に、リーナとロードは目を見開き、戸惑いを隠せない表情になる。まぁ無理もないけど。
「何であんたが無傷でここに……グラッドはどうしたのよ!」
「まさか……グラッドを?」
「嫌だなぁ。殺してはいないよ?……負けを認めて私を通しただけだよ」
殺してはいないけど、グラッドの自尊心と戦士としての心を完全に折ってやった。まさか底辺の『便利屋』としてしか見ていなかった私に、自分の渾身の必殺技でやられるとは思っていなかったはずだからね。
「ありゃエルン。もう倒してきたの?」
「うん」
「さすがエルン!それなら私とアティは今のうちに『月光水』と『ムーラン花』を確保するね。じゃあやろう、アティ!」
ミーユは私が来たことで、安心して依頼物を確保しようとする。いや、私が壁になるからというべきだよね。それを見たリーナがヒステリックに言い放つ。
「ちょっと待ちなさい!それを渡すものですか!!」
素早い動きでミーユとアティの方へ向かってくるが、私も真っ直ぐに後を追う。あっという間にミーユとアティの前に現れたリーナの強烈な回し蹴りが放たれるが、間一髪間に合った私が、その細い腕でガシィッと受け止める。
踏み込んだ彼女の足元の石畳がクレーターのように砕け散った。俊敏さを誇る彼女の動きは確かに一流だ。
「追いついたですって!?チョコマカと……ウザいのよあんた!!」
怒りに身を任せたリーナの、目にも留まらぬ素早い連撃が襲い掛かる。空気を切り裂くような鋭い正拳突き、視界から消えるほどの滑らかな回し蹴り、そして死角から急所を狙う重い肘打ち。まるで嵐のような何十発という怒涛のラッシュを放っていただろうか。
バギィッ! ドゴォォッ!
重い打撃音が中庭に連続して響き渡る。だが、そのすべては私が無造作に突き出した片手一本によって、寸分の狂いもなく完全に防がれていた。
私は一歩も踏み込む必要すらない。攻撃を受け止めるたび、自動的に相手と同等に引き上げられた私の腕力がそれを完璧に相殺し、行き場を失った衝撃波だけが周囲の空間を激しく揺らしていく。
息を切らし、滝のように汗を流すリーナとは対照的に、息ひとつ乱さず涼しい顔で全てを受け流し続ける私を見て……リーナはついに顔を青ざめさせ、その両足をガクガクと震わせ始めた。
ごめんね、私には無駄だよ。私はそれを『相殺の調停』の力で《《完全に同等の威力で受け止める》》から。
「嘘でしょ……なんで……私の全力のラッシュが……!」
「どいてよリーナ。少し打撃を防いだくらいで調子に乗りすぎだよエルン=アクセルロッド。消し飛べ、『エクスプロージョン』!!」
ロードが詠唱と共に杖を突き出すと、周囲の空気が一気に灼熱へと変わった。杖の先端から放たれた極大の火球が、凄まじい熱線を撒き散らしながら私に着弾し、大きな爆炎が辺り一帯を包み込む。
中庭の木々が瞬時に炭化し、石畳がドロドロに赤熱して溶けるほどの尋常ではない熱量。彼が最も得意とする炎属性高位魔法。直撃すれば骨すら残らないひとたまりもない威力
……のはずだった。
だが、もうもうと立ち昇る黒煙が晴れた直後。そこには服の裾ひとつ焦げていない、無傷の私が立っていた。
「へ?」
ロードが間抜けな声を漏らした瞬間、無傷で立つ私は杖に持ち替え、その杖の先から、一瞬にして先程と全く同じ、寸分違わぬ巨大な赤い魔力の塊がロードに襲いかかった。
ロード自身が放った最大火力と《《完全に同等》》の爆炎が、今度は無慈悲に術者であるロード自身を飲み込み、古城を揺るがすほどの轟音と共に彼の身体を吹き飛ばした。
「ゴホゴホッ……うっ……ぁ……どうして……」
「どうしてって?何度も見たからだよ」
「どうしてお前がその高位魔法を!?そんな……そんな馬鹿なああぁぁッ!!」
私はリーナの攻撃を完全に封じ、ロードの最も得意な魔法で追い詰めてやった。これでこの2人ももう充分戦意を喪失しただろう。
あの時、私にこう言っていたよね。『あんたみたいな劣化版がいるとギルドの依頼達成が無理』『どっちつかずの雑魚がいなくても誰も困らない』と。
残念だったね、リーナ、ロード。あんたたちが見下していた、その劣化版でどっちつかずの私に手も足も出ずに負けるなんてね。
【お願い(^-^)v】
「いつも読んでくださってありがとうございます! ついにエルンの『ざまぁ』が炸裂しました。スカッとした方は、ぜひ★やフォローで応援いただけると、エルンが最強になるスピードが上がります(笑)」




