2. 【勝負勃発】負ければ追放!元パーティーとの因縁の対決
2. 【勝負勃発】負ければ追放!元パーティーとの因縁の対決
「私たちは自力でグリムドラゴンを討伐した!私のことはどう言ったっていい!でも、ブレイドさんやミーユ、ルナレットさんを侮辱するのは絶対に許さない!!」
震える両拳を固く握りしめ、私は真っ向からリーナを睨み返す。かつて何を言われてもヘラヘラ笑って反論しなかった『便利屋』の予想外の反抗に、グラッドとリーナは一瞬たじろぎ――直後、リーナは屈辱で顔を真っ赤にして怒りを露わにした。
「あんた……気取ってんじゃないわよ!!底辺の便利屋の分際で!」
一触即発の空気の中、それを黙って見ていたブレイドさんが、面倒くさそうに口を開いた。
「やめろエルン。そんな低レベルな奴らに構うな。間違っても、お前がそいつらに《《劣る》》ことなんてないんだ。早く次の依頼を決めるぞ。時間の無駄だ」
その決定的な見下し発言に、リーナはついにブチギレた。
バンッ!!とギルドのテーブルを力任せに叩きつけ、間髪いれずにブレイドさんに詰め寄る。
「あのさぁ『死神』さん!?私の聞き間違いかなぁ!?私たちが、この無能な『便利屋』より下だって言ったように聞こえたんだけど!?」
「耳は正常らしいな?そう言ったつもりだが?」
「あははははっ!!頭おかしいんじゃないの!?こいつは底辺の便利屋なのよ?なんの力もない、誰かの穴埋め要員なのよ!期待のルーキーである私たちと比べるなんて、ふざけるのも大概にしなさいよ!!」
「……なら、試してみるか?」
「はぁ!?」
「お前たちは、自分たちより下のはずのエルンが功績を上げたのが気に食わないんだろう?エルンは次の依頼を失敗すれば、2度とギルドにはいられなくなる。どうだ、同じ依頼を受けて勝負してみるか? ……お前たちが、尻尾を巻いて逃げなければの話だがな」
「面白い。その勝負、受けて立つよ」
声がした方を見ると、用事を済ませて戻ってきたリーダーのクロスと、ロード。そして、私の代わりに入れられた新しい後衛の、聖女のような女性が立っていた。
純白のローブに身を包んだ彼女は、他のメンバーのように私を嘲笑うことはなく、一触即発の空気にどこか戸惑ったような、痛ましげな瞳でこちらを見つめている。
「『死神』。君にオレの仲間を侮辱されて、黙ってはいられない。その勝負乗るよ」
クロスはまるで自分たちが正義であるかのような顔で言い放つ。
「はぁ?最初にエルンを侮辱してきたのはあんたたちなんだけど?」
ミーユが呆れたように言い返す。さらに文句を続けようとした彼女を、ブレイドさんが涼しい顔で首を振って制した。
「ミーユ。どうせこいつらに何を言っても無駄だ。クロス、お前が依頼を決めて構わない。オレたちが負けることは絶対にないからな」
「分かった。勝負は1週間後。依頼内容は後で掲示板を使って伝える。……行こう、みんな」
クロスはそんな捨て台詞を吐いて、取り巻きを引き連れてその場を去っていった。聖女のような女性も、最後に申し訳なさそうに一度だけこちらへ小さく会釈をして、足早に彼らの後を追う。
ギルドの重厚な扉がバタンと閉まり、彼らの姿が見えなくなる。その瞬間、張り詰めていた糸が切れたように、ふっと力が抜け落ちた。
私は、震える拳を握りしめたまま、結局最後まで言い返すことができなかった。
「ごめん……私のせいで」
「なんでエルンが謝るの?悪いのは100パーセントあっちじゃん!」
「違うの。私、リーダーって言ってもらったのに、肝心なところで何も出来なかったから……。頼りないリーダーでごめん。ブレイドさんもミーユも言い返してくれていたのに……」
はぁ、本当に情けないな。やりすぎかもしれないけど、リーナの胸ぐらくらい掴んでやりたかった。でも、いざ向かい合うと足がすくんでしまった。かつての記憶が、まだ私の心の奥底にへばりついている証拠だ。
俯いて唇を噛み締めている私の頭に、ドン、と重たくて無骨な手が置かれた。
「いや。お前はちゃんとあいつらに言い返していた。自分のためじゃなく、仲間のためにな」
「ブレイドさん……」
「そうそう!エルン、すっごくかっこよかったよ!仲間をバカにされて怒れるリーダーなんて、最高じゃん!」
ミーユもニカッと笑って、私の背中をバシバシと叩いてくる。痛いけど、その痛みが冷え切っていた心をじんわりと温めてくれた。
「オレがあいつらに言った『お前は劣っていない』という言葉は間違っていない。お前もそう思うなら、あいつらに負けるな。かつてお前を不当に扱い、無能と切り捨てた連中を、お前の力で完膚なきまでに見返してやれ」
「……うん。そうだよね」
このまま言われっぱなしは絶対に嫌だ。私はもう、ただの便利屋じゃない。
こんなに早く見返すチャンスがやってくるなんて。クロスたちのパーティーに負ければ、私はギルドをクビになる。もちろん、巻き込んでしまったブレイドさんやミーユも。
でも、そんなことは絶対にさせない!ただ見返すだけじゃない。私たちで、あいつらのプライドも自信も、全てをへし折ってやるんだ。
「私、絶対に負けないから!2人とも、勝負に協力して!」
私が顔を上げて力強く宣言すると、ブレイドさんは不敵に口角を上げ、ミーユは楽しそうにピースサインを作った。
最強の仲間を得た私の反逆戦が、今ここから始まる。




