↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大賢者の絶対安眠防衛戦~奴隷紋をハックして究極のヒモになったはずが、元宿敵のブラック労働から逃げられない~  作者: あめたす


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/57

【第53話】部署間連携のエラーと、パラドックス・ハック

【第53話】部署間連携のエラーと、パラドックス・ハック


 神聖緊縮(マナ・リダクション)による絶対零度の吹雪が荒れ狂う中、ゼロスが極小の魔力で構築した「非課税枠のコタツ空間」。

 ヴィクトリアの呼吸が落ち着くのを見届けた後、ゼロスは虚空にシステムウィンドウを展開し、三柱の神の行動ロジックを解析し終えていた。


「よし、ハッキングの準備完了だ」

 ゼロスはパジャマの腹を掻きながら、不敵な笑みを浮かべる。

「いいかヴィクトリア。あいつら、同じ神界(親会社)から来てるのに、見事なまでに部署間の連携が取れてねえ。マクシミリアン(営業部)は『無限の予算で工事を伸ばす』というプログラムで動いてるのに、フィデリウス(経理部)は『魔力消費を限界まで削る』という矛盾したプログラムで動いてる」


「……つまり、彼らのシステムを衝突させるということ?」

「ああ。神のシステムは強固だが、強固だからこそ『絶対的なルール』には逆らえねえ。……今から、営業部の『無限の請求書(工事魔力)』を、経理部の『緊縮センサー』に直接ルーティング(送り付け)してやる」


 ゼロスの指先が、目にも留まらぬ速度で仮想コンソールのキーを叩き始める。


---

【結界改竄アラート】

[System] 大賢者権限(Admin)による、神界ネットワークへのルーティング変更を実行。

[Process] マクシミリアンの出力する『無限の建設魔力』のベクトルを強制的にねじ曲げ、フィデリウスの『神聖緊縮センサー』へ直接入力(インジェクション)します。

[Warning] 対象のシステム内で、致命的なコンフリクト(論理矛盾)が発生しました。

---


「なっ……何事だ!?」

 マクシミリアンが驚愕の声を上げる。彼が大地を削ろうと放つ巨大な黄金の魔力が、地面ではなく、突如としてフィデリウスの身体へと吸い込まれていく。

「マクシミリアン! 貴様、なぜ私に魔力を流し込む! 浪費は悪だと言ったはずだ!」

 フィデリウスが激怒し、マクシミリアンの魔力を『緊縮』して消滅させようとする。


 だが、マクシミリアンの魔力は『無限』であり、フィデリウスの緊縮プロトコルは『魔力をゼロにする』ことだ。

 「無限」を「ゼロ」にしようとする、終わりのない矛盾(無限ループ)。


「システム障害……エラー。演算処理、限界を突破……」

 二柱の神の巨大な肉体が、ノイズのように激しくブレ始めた。

 彼らは「無限に魔力を放出しながら」「無限に魔力を消去し続ける」というバグに陥り、自らのシステム処理が追いつかず、完全にフリーズ(硬直)してしまったのだ。


「ざまあみろ。大企業特有の派閥争い(縦割り行政)で自滅しやがった」

 ゼロスは鼻で笑う。巨大なエネルギーをぶつけるのではなく、敵の矛盾を突いて自壊させる、魔力消費ゼロのハッキングの美学。

 戦場を覆っていた猛吹雪が止み、マクシミリアンの轟音も消え去った。


 だが、その静寂は、第三の神・オルディウスの乾いた拍手によって破られた。


「……見事なハッキングだ、大賢者。旧時代の組織構造の弱点を突くとはな」

 オルディウスが、虚空からゆっくりと降りてくる。

「だが、それはあくまで『彼ら』のシステムの問題だ。私(再編の神)には通用しない。……そして、これに対処するロジックもお前は持ち合わせていないだろう」


 オルディウスが指を鳴らした瞬間。

 彼の背後から、無表情な青年が姿を現した。


「……ルシアン!」

 ザガンが叫ぶ。

 先程まで偽物(ボット)が暴れていたが、今度こそ正真正銘、『本物』のルシアンだ。だが、彼の記憶はオルディウスによって完全にフォーマット(初期化)されており、その瞳にはかつての親友(ゼロス)への感情は1ミリも残されていない。


「排除シーケンス、起動。……目標、不当契約者(ゼロス)」

 ルシアンの両手から、強烈な光の魔術が生成される。偽物よりも遥かに強力な、本物だけが持つ圧倒的な出力。


「くっ……! ゼロス、どうする! 前の奴と違って、こいつは借金のパスワードが通じないぞ!」

 ヴィクトリアが再び防壁を展開しようとするが、ゼロスは気怠そうに彼女を制止した。

「無駄な真似すんな。……パスワード(音声入力)が弾かれるなら、物理キー(ハードウェア)を直接ぶち込むまでだ」


 ゼロスはパジャマのポケットに手を突っ込むと、一枚の古ぼけた羊皮紙を取り出した。

 それは5年前。ルシアンがゼロスに1000ゴールドを貸した時に、本人の血と魔力で強引にサインさせた『正式な借用書』だった。


「貸した側の記憶を消されたら、借金を踏み倒すカタルシスがねえんだよ」

 ゼロスの瞳の奥で、ドス黒い殺意と、不器用な友情が交錯する。

「今からその脳みそに、1000ゴールドの債務証明(トラウマ)を強制インストールしてやる」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。