ep8
残弾数1——
俺は連続でグールをあの世へ送った。
残弾数が1になった時、スコープ内にまた表示が現れた。
流れるように表示されていく。
残弾数12、精密+1、精神+1、威力+1、射程+1
新しいスキルを覚えました。= サイレント
新しいスキルを覚えました。= ロックオンx2
パラメータを確認しますか?
YES/NO
「こんなのあったっけ?」
そう呟いて俺はYESを選択した。
NAME;アシュリー・セラス
LV:3
武器;ヴァルキリー
状態:通常
残弾数;12
ステータス
精密;2
精神;2
威力;2
射程;100m
スキル
サイレント/ロックオンx2/
名前は今の世界での名前なのか…
レベル3。しかも残弾数が増えて回復している。
こいつの名前は…ヴァルキリーと言うのか。
スキルってなんだ…
サイレント…サイレンサーの事か?
そしてまた現れた。
“アマテラスとのリンクを許可しますか?“
という言葉。
だが、何をしても反応は無かった。
そもそもアマテラスってなんだ?
何か条件があるのかもしれんな…
俺はまた櫓に寝そべり、スコープを覗いた。
スキルを使いますか?
という文字が点滅している。
先に進むと、先ほどのサイレントとロックオンx2が
表示された。
俺はロックオンx2を選択した。
「なるほど、やっぱり。」
思った通り、2体ロックできた。
俺はそのまま引き金を引いた。
弾は2体のコアに命中し、グール達は消滅した。
「ロックができるのは格段に便利になったな。」
“2KILL”ボーナスという表示が現れた。
2体同時に倒すと高評価になるらしい。
残弾数10
弾は使った分だけ減るのか。
もう一度ロックオンx2を使ってグールを倒した。
その時、また画面表示が変わり
残弾数15、精密+1、精神+1、威力+1、射程+2.5
スキルのレベルが上がりました。=ロックオンx3
新しいスキルを覚えました。=クイック
NAME;アシュリー・セラス
LV:4
武器;ヴァルキリー
状態:通常
残弾数;15
ステータス
精密;3
精神;3
威力;3
射程;130m
スキル
サイレント/ロックオンx3/クイック
ここから俺はひたすらグールを撃った。
気が付けば陽は傾き、空が茜色に染まり始めていた。
「アシュリー! そろそろ下りてこい」
下からロバートの声がした。
下に下りるとロバートが開口一番に
「何体始末したんじゃ?」
俺は不慣れなスキルに四苦八苦しながらだったから
ロバートの期待には応えられていないと
思っていた。
「まあ、500体ほどかな…」
とぼそぼそと答えた。
「何? 5??」
ロバートは険しい顔をして聞き返した。
「だから500…」
「なにい!? ご 500じゃと?!」
ロバートは後ずさった。
「思ったより効率よく倒せなかった…
明日はもっと頑張るよ…」
と俺は肩を落として言った。
(なんという奴じゃ…
弓兵10人と魔法使い10人で
一日100体始末するのがやっとだったんじゃ…
こ奴、それを軽々と…しかもワシに
負い目を感じているのか…)
ロバートは内心度肝を抜かしていたが
平静を装った。
◆
「父さん!」
俺は父を見つけ、手を振った。
「アシュリー!」
父も手を振ってくれた。
門の下にはバスケスも居た。
無口な弓使いも隣にいる。
隣を歩くロバートが囁いた。
「アシュリー、今日のグール退治の事は誰にも言うな
特に、あいつらには言わんほうがいい。」
ロバートはバスケス達を指さしてそう言った。
だが俺はロバートの話が全く耳に入ってこなかった。
頭の中で今日を振り返り、整理していたからだ。
「何の話だい?ロバート爺さん」
バスケスが遠くから声を掛けた。
「チッ…地獄耳が…」
ロバートは小さく囁いた。
「グールがどうのと聞こえたぜ?」
バスケスがそう言うと、フードの弓使いが反応した。
「あ…ああ そうなんじゃ、今日はアシュリーにグールを
見せたんじゃよ…」
「よう アシュリー、で、グールを見てどうだった?」
そう言ったバスケスの目は期待もあるが、どこか試すような
眼差しに感じた。
「だいたいの攻略法は掴んできました。
明日はもう少しうまくやれると思います。」
「お! おい! アシュリー!」
ロバートは慌てて俺の前に立ちふさがった。
「子供の言う事じゃ! 多めに見てやってくれ バスケス!」
「あんたに聞いてない ロバート
アシュリー、攻略ってどういう事だ?」
バスケスはロバートをどかし、アシュリーの前に立った。
「何してんだ?」
そこに父が下りてきた。
「ままま! 今日はこの辺にしとこう、アシュリーも疲れておる
ことじゃて!」
「僕は全然…」
ロバートは俺の肩を抱き
「話はあとじゃ、とにかく帰るぞ…」
といって囁いた。
「じゃあ後は頼むわ バスケス、カチュア」
父はそう言って馬にまたがり、俺を引っ張り上げた。
続いてロバートも馬にまたがった。
バスケスは小さくなっていく俺たちをただ見つめていた。
◆
「アシュリー、どうだった?ロバートの研究室は。」
父が後ろから話しかけた。
「楽しかったよ。スキルについても色々わかったしね」
「そうか!良かったな!」
「アシュリー、後で話がある。さっきのバスケスと
カチュアの事だ。」
ロバートが後ろから言った。
「じゃあロバートさん、夕飯を一緒にどうですか?」
父が言った。
「おお、ではそうさせて頂こうかの…」
「山と火、糧となる命に感謝を。」
とリースが述べた。
「感謝を」
皆が言った。
食事の前に決まって父はこの口上を述べる。
前世では考えられない事だった。
加工食品が溢れ、元はなんだったのか と
考える事は無かった。
食事など、時間をかけるだけ無駄だと思っていた。
だが、今は違う。
命がけで獲った獲物を捌き、近所の厚意でもらった
野菜を切り、とれたてのヤギの乳を飲む。
すべて意味がある。
そして食事の時間は家族のミーティングなのだ。
皆が今日起こった事を口にし、それらを共有していく。
解決方法が得られ、新しい考え方を学ぶ。
強制はしない。
だが遠慮もいらない。
父は明日の狩りの攻略法を考える。
それが明日の糧につながる。
当たり前のようでいて、
俺にとっては宝石のように煌めく時間なのだ。
「信じられん…あのでかい山猿がこんな小さく…」
ロバートは双子の妹たちの間で、大人しく
木の実や果実を頬張っているデオを見て言った。
「手伝ってもくれるのよ。」
母が言った。
「何かしらの恩義を感じとるのかもしれんの」
ロバートがそう言うとデオがキキッと鳴いた。
「で、アッシュ、今日はロバートさんの小屋で
何してたんだ?」
父が言った。
「グール退治」
俺がそう言うと、父と母は一瞬硬直した。
「退治ってお前、あれを退治できる奴は軍にだって
なかなかいないぞ?何せ、剣で斬ったところで
再生するからな、それに瘴気のせいで近づけん。
移動する小さいコアを破壊しない限り…」
「本当なんじゃ、リース、これについては
俺もいまだに信じられんのじゃ…」
「何体退治したんだ?」
「500体くらい…正確には523体だったかな‥‥」
「なんだって!?」
父は大声で叫んだ。
その声が怖かったのか、双子の妹たちは泣きだした。
「おお…ごめんごめん…パパびっくりしちゃってさ…
お兄ちゃんがあまりに突拍子もない事言うもんだから」
「あなた! アシュリーのせいにしない!
それと口に食べ物が入っているわよ!」
母が父を睨んでそう言った。
「ところでロバートさん、バスケスの事だけど…」
父と母は、ハッとして俺を見た。
「うん、ちゃんと話さないといかんじゃろう。」
そう言ってロバートは話し始めた。
当時、バスケスは第18歩兵部隊の隊長、
カチュアは第2弓兵部隊の隊長であった。
ヴァ-ミリオ山脈にグールが放たれ、やがて山中の敵兵が
グール化し、それがエクセシアに攻めて来た時
二人の隊はグール討伐に派遣された。
だが、迎え撃ったエクセシア兵は再生するグール達に苦戦、
どんなに精密な弓攻撃も、どんなに威力のある魔法攻撃も
コアを破壊する事が難しく、エクセシア兵は撤退するほか
無かった。
しかし、ロバート達の尽力により、森の端にグールを通さない
結界を張る事に成功した。
だがその時、5000人いた兵は1500人にまでその数を
減らしていた。
犠牲者にはバスケスとカチュアの部下たちや友人も
含まれていた。
そして、その中にはバスケスとカチュアの弟、
オライオンも居た。
オライオンは重装歩兵部隊の切り込み隊長であり
一人で100人の兵を屠ったという伝説を持つ
強者であった。
そんな強者でさえ、瘴気には勝てずグールとなり、
ヴァ-ミリオの山中を彷徨い続けているという。
「バスケス達は夜の見張りを買って出たんだ。
夜になると、門の辺りまでグールが出て来るんだ。
そして、いつか近くまでオライオンが出てきたら
彼を安らかに眠らせてやりたいとあいつらは考えているんだ。」
と父が話を引き継いだ。
「だから奴らの前でグールの話をする時は
迂闊な事を言えんのじゃよ…」
ロバートは顎髭をしごきながら言った。
「だったら僕、余計な事を言ってしまった。」
俺は前世ではよく“人の話を聞け”と言われていた。
まさにやってしまったのだ。
「どうするリース。アシュリーの事をあ奴らに説明するか?
それとも誤魔化し続けるか?」
「……説明したほうがいいんじゃないか…
どう思う?アシュリー?」
「僕が彼女たちの思いに答えられるかは
わかりません。だけど誰かの役に立つことなら
僕はやりたいです。」
「うむ、わかった。よく言った。」
◆
その夜、俺はスコープを覗いた。
NAME;アシュリー・セラス
LV:99
武器;ヴァルキリー
状態:通常
残弾数;99
ステータス
精密;99
精神;99
威力;99
射程;5000m
スキル
サイレントEX/ロックオンx30/クイックEX/ズームx3/オートチャージ
そしてついに
“レベルが99に達しました。
アマテラスとのリンクを許可します。“
という文字が表示されたのだ。
俺は迷わずそれを選択した。
すると
新しいコンテンツをダウンロードしますか?
という文字が現れた。
俺は迷わず選択した。




