↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/28

ep5

第5話


「またあいつか。」


リースは呟いた。




「父さん、あれは?」




父によれば、ここ最近、朝の交代の時間に決まって


現れるのだそうだ。


門や壁を殴ったり蹴ったりするので、父たちが追い払って


いるという。




大きな吠え声と共に、獣が全身を現した。


見た目は巨大な手長猿のようだった。




その獣は門をドンドンと叩き始めた。




「おいミッキー!」


父は向こう側の櫓に居るミッキーに声を掛けた。




ミッキーは頷き、ぶつぶつと詠唱を始めた。


そして手の甲に小さな魔法陣が出現し


手を地面に置いた。


すると、バチバチとスパークが櫓(やぐら)を伝い、門に届いた。




獣が門に触れた瞬間、バチッ!と閃光が走り


驚いた獣は一目散に森へ消えた。


少しだけ焦げたような臭いが鼻をかすめた。




「逃がしてあげるの?」


俺は父に言った。




「むやみには殺さないさ。


一匹殺すと、魔物達は集まって来る習性があるんだ。


それで何度か酷い目に遭ってるからな。」


そう言えば、傷だらけで帰って来た時も何度かあったなと


思い返していた。




その時下から声がした。




「おーいわしじゃ、開けてくれ。」


下を見ると、大きな木箱を背負った老人が


こちらを見上げていた。




「ロバート爺さんだ。」


父は呟いた。




「ロバート、通行手形を見せろ。」


ミッキーが叫ぶ。




「はあ めんどくさいのお 毎回…」


ロバートはそう言うと木箱の横のポケットから


小さな板を取り出した。




「すまんね、だけど規則なんでな。


よし通ってくれ。」


ミッキーはそう言うと手元のクランクのレバーを回した。




すると巨大な門扉が人が通れるほど開いた。




少し腰の曲がったロバートは巨大な荷物を背負い


ゆっくりと門を抜けていった。




「父さん、ロバートは魔物に襲われないの?」




「今の時期は魔物も少ないんだ。それに、あの爺さんはあれでも


昔は宮廷魔導士だったんだ。魔物に気付かれにくい魔法をかけてるって


のもある。」




「ロバートさんは山で何をしているの?」




「薬草や薬になる木の実、虫、動物なんかを獲って色んな


研究をしているって聞いてる。」




俺は櫓(やぐら)の下で木箱に腰かけながらキセルを吸う老人を見た。




「気になるか?アシュリー


下におりて話をしてきてもいいぞ。」


父は言った。




「え! いいの?」




「ああ、下りる時はゆっくりだぞ。下を見るな。」


そう言って俺は櫓のハシゴを下りていった。





老人はハシゴを下りる俺を眺めていた。




「ほっほっ…お前が例のリースの…」


老人はニコニコしていた。


突き出た赤い頬骨が陽に反射している。




「初めまして、アシュリーです。」


俺は頭を下げた。




「うん、礼儀もしっかりしとる。


親に似なんでよかったの! ほっほっ…」


俺はその言葉に少しつっかえたが、悟られないように


笑顔を続けた。




ロバートは俺をじっと見つめ


「ほほー…よう似とる…」


と言った。




「似てるって誰にですか?」




「アルベルト様じゃよ…」




「アルベルトって誰ですか?」




「お前…そうか…知らんのか…リースめ


俺に言わそうとしよったな?」




俺はこの老人が何を言おうとしているのかわからなかった。




「お前のひい爺さんじゃよ。


目の形、鼻筋…そしてなにより……


その精錬され、磨き上げられた


鋼のような銀の髪色が。」




俺は雷に打たれたような気分だった。




「お前は先代の王の血を色濃く引いておる。」




俺は言葉が出なかった。


ただ、俺は父に、母に、申し訳ない気持ちで


いっぱいになった。


昨日自分が言った言葉をただ悔いた。




「そんな大事な事を何故直接言わん


ん? リースよ」




いつの間にか父が背後に居た。




「いやあ…親が言うより


ロバートさんに言ってもらった方が


説得力あるかなって思って。」


父は頭を掻いた。




「まあ、わからんでもないがな。」




その時、門が大きな音を立てて揺れた。




「まさか また…?」


父は急いで櫓へ上り、俺も続いた。




「リース またあいつだ どうする? 殺っちまうか?」


「そうだな…だがやっかいだぞ…」




二人がそんな話をしているのをしり目に


俺はライフルを出現させた。


そして、スコープを覗いた。




最初に奴が出現した時、あの魔物からは殺気を


感じなかったのだ。


苦しみ藻掻いているような気配を感じていた。




俺は何か原因があるはずだと直感的に思った。




魔物の体をレンズを通してゆっくりと観察していた時


レンズ内のモニターが何か示した。


魔物の背中の中心辺りをポイントし赤く点滅したのだ。


(もう少しズームしてほしいな)


と思った瞬間、一気にその点がアップになった。


(なんだ?これは?)


そう思った瞬間、下に文章が表示された。


<魔獣誘導器・バイゼル連邦製である確率93%>




「父さん。あの魔獣、操られているかもしれない。」




「なんだって?!」




「アシュリーよ、どうしてそう思うんじゃ?」


いつの間にか俺の後ろにロバート爺さんがいた。




「あいつの背中に何かが取り付けられている。」




「ほお…で、アシュリー お前ならどうする?」




「装置を破壊する。」




「そんな事できるわけ‥‥!」


父がそう言いかけた瞬間、ロバートが手で制止した。




「やってみろアシュリー」


ロバートはにやけていたが、眼差しは俺を射抜いていた。




俺はこくっと頷いた。


「うん」




そしてライフルを念じると手元に出現した。




「ふっ、これがお前の能力か。」




「俺も間近で見るのは初めてだ。」


父も興味深そうに眺めている。





そして俺はライフルを構えた。


スコープを覗く。


距離は約25m。


風は東西に風速0.5mぐらいか…


だが猿の魔物は激しく動き回る。


だがすぐに行動パターンを掴む。


動きの軌跡が線になって可視化していく。


(できれば助けてやりたい…)


息を止め、瞬きをやめた。




ドンッ




一瞬の静寂のあと


猿の魔物は壁にもたれかかるように倒れた。




「やったぞ! アシュリー!」


父は興奮して唾を飛ばして喜んだ。




ロバートは、顎髭をさすりながら


「う~ん」


と唸った。





◆





「アシュリーが破壊したのはこれだろう」


リースが小さな器具の破片をロバートに見せた。




「これは…バイゼルの物じゃ。コブラの紋章が入っておる。


中に呪文が込められた容器を運動神経に直接突き刺すんじゃろう」




「バイゼル連邦の奴らがけしかけたと?」


リースが言った。




「恐らくそうじゃろうな


この魔物、さぞ苦しかっただろう。」


そう言ってロバートはまだ刺さったままの器具の針を魔物から引き抜いた。




その瞬間、シュワシュワと魔物の体から煙が湧き出し


みるみる小さくなっていった。


魔物は手のひらほどの大きさになった。


だが、ぐったりとして動かなかった。




俺は何故かこいつを放っておけない気持ちになった。




「父さん、こいつ、家に連れて帰ってもいい?」




「何言ってんだ! 俺はいいが 母さんがなんて言うか…」




「放っておけないんだ!」


父は俺のあまりの圧に屈したのか。




「自分で面倒をみるんだぞ?」


といってしぶしぶ承諾した。





父の仕事は日没までだが、俺はロバート爺さんと家に帰る事になった。




ぐったりとした猿の魔物を抱えて。


俺は帰路に就いた。




道中ロバートと話をした。


聞けば彼はヴァ-ミリオ山脈の麓に住んでいるらしかった。


魔物に襲われないのかと聞くと、関所と家との道には


結界を張っていて、よっぽどのクラスの魔物でない限り


近づけないとの事だった。




だが結界から少しでも出たら、たちまち凶暴な魔物がいる


ジャングルだという事だった。




だが俺にとってはそれは魅力的に思えた。


俺の能力をたくさん試す事ができるのだ。




「ねえロバートさん、今度小屋に遊びに行ってもいい?」




「おお いいとも、お前には色々と教えておきたい事も


あるんじゃ。」




そんな話をしながら俺たちは村の入り口で別れた。





◆





「アシュリー! 何なの?それ!」


俺が抱いた猿を見て母は叫び声を上げた。




「放っておけなかったんだ…


元気になったら山に返すから…


いいでしょ・・?」




「その約束、絶対だよ!」


母もしぶしぶ承諾した。





母が用意してくれた果物用の箱に


藁を敷きつめ、猿をそこに寝かせた。


寝てるのか死んでるのかは分からないが


暖かいので死んではいないだろう。




俺はこいつが起きるまで寝ずの看病を決めたが


眠気に負け、気が付いたら朝だった。




「猿が居ない! 母さん! 大変だ!」




「おはよう、アシュリー」


と母はいつものようにそう言ったが




だが俺はある物を二度見した。




猿がテーブルの上に乗って


オレンジを頬張っていたのだ。


猿はきょとんとした目で俺を見て


まばたきをした。




「この子、元気になったみたいよ。


これ食べる?って差し出したら、手に取って食べ始めたのよ」




俺は母と猿を交互に見ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。