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ep3

「何も聞かないの?」


俺は父に言った。




「お前の能力の事か?」




そう言われて俺は答えに困った。




「あれをあんあふうに使うものだとは


知らなかったよ。アシュリー」




「まるで見たことがあるような口ぶりだね」




「だってお前、寝てる時しょっちゅう現れていたぞ?」




「え?…」





「だがな、アシュリー、それは絶対に人に見せるなよ


お前が10歳になるまではな。」





————





エクセシア王国——


俺が生まれた国の名前だ。


父によると、この国はとても小さな国という事だった。


南は海、そし北方をぐるりと囲うように、ヴァ-ミリオ山脈が連なっていた。


エクセシア王国は山と海に囲まれた天然の要塞のような小国だった。


白基調の王宮を中心に放射状に街が形成されており、街全体が


芸術品のようだと外から来る旅人が口々に話すそうだ。


ヴァ-ミリオ山脈を挟み北と東西には3国が隣接しており、


東のバイゼル連邦、北のアリアス王国、西のドグセラ王国は


領土の取り合いで常に戦争が起こっていた。




エクセシアは長らく、中立の立場を取っていたが、10年前、


東のバイゼル連邦が、エクセシアの一部は元々バイゼルの


領土だと言い始め、小さな火種は次第に大きくなり


戦争へと発展した。


そこからなぜか、アリアスとドグセラも戦争に加わり


エクセシアは3国を相手に戦う事になった。


エクセシアは、数により劣勢を強いられた。




すぐに陥落するとみられていたエクセシアは


ヴァ―ミリオ山脈による地の利、また、当代最強と謳われた


エクセシアの軍により、なんとか持ちこたえていたのであった。




だが、エクセシアはこの10年の間に大きな犠牲をいくつも払う事となった。




13人いた王の男の子供のうち、8人が戦死、次期国王と目され


ライオンハートと呼ばれた長兄、トゥバル将軍が重傷を負い


立てない体になってしまい、残っているのは4人の王子だった。


次男のラスク45歳、4男のメルシオ35歳、11男のオーガ10歳


そして、13男5歳のモーノであった。




また、東側の海岸地帯の一部も占領され、バイゼル連邦の国土と


なってしまっている。




しかし、半年前、アリアス王国と北側に隣接する


巨大な国、グラディバ帝国が突如、アリアス王国に侵攻、


エクセシア侵攻どころでなくなったアリアスは、現在


帝国への防衛で手いっぱいの状況となり、その状況を見た


他の2国は、この隙に軍備などを立て直すため、


エクセシアへの攻撃を一時的に停止している。




エクセシアの民は、周りの国の人種とは少し違い


赤毛が多く、肌の色はほんのりと青みを帯びた白


比較的早熟で、美男美女が多く、人柄は温和な者が多い。


生まれつき高い魔力を有している子供が多く


何かしらのスキルを持って産まれるのか通説とされる。


そのため、学校では低学年から魔法の授業が組み込まれ、


10歳になると、全国民が魔力のテストを受ける事が


義務付けられていた。


それにより、将来の方向をある程度決められるのだ。





————





「エミリア、アシュリーのスキルについてどう思う?」


父は母に問うた。




「見たことが無いわ。それに…」




二人は顔を見合わし、小さく頷いた。


その後も、両親から俺のスキルについて進んで話を


して来る事は少なかった。




決して裕福ではなかったが、両親は俺に目一杯の愛情を注いでくれた。


それから、妹もできた。


双子の妹で、アンとルイという名前だ。


家は益々賑やかになった。




そして、分かった事もあった。


オークの襲撃があった翌日、俺は親の目を盗んで


ライフルを出現させ、スコープを覗いた時


レンズ内に映る文字盤が変化していたのだ。




残弾数10、精密+1、精神+1、威力+1、射程+0.5




残弾数が2つ増えていたのだ。


そして、精密と精神と威力がプラス1…そして射程が0.5


これは意味がわからなかったが、おそらくオークを


倒したことにより、何かしらのレベルが上がったのだろうと


思った。


そして、もう一つ書いてある。




“アマテラスとのリンクを許可しますか?“


と。




この言葉についてはまったくわからなかった。


ライフルやスコープのどこを触っても中のコマンドが


動くことは無かった。


もちろん念じても駄目だった。




だが、わかった事は、敵を倒せば能力値が上がるという事だ。


だがしばらくはそれも確認しようがなかった。


あれ以来、村は平和だったからだ。




5歳の時、初めて家の外に出る事を許された。




その初めての日


父に続いて外に出た瞬間




「アシュリー―!!」




いきなり抱きつかれたのだ。




「ウナ!」




「おい色男! 今だから言うが


ウナは毎日家の前まで来て


アシュリーは? 元気? 何食べたの?


ってしつこいったら…」




「ひどい!リースおじさん!


そんなにしつこくないし!




でもね、アシュリーは私のヒーローなのよ!」




「はいはい、わかったよ。


悪いのはこの色男だ!」




そう言ってリースは俺を担ぎ上げた。


「アシュリー でかくなったな」


と言った。その声は優しかった。





◆





俺の秘密を知るのは両親と、ウナだった。


ある時俺はウナに打ち明けた。


俺のスキルにはどんな能力があるのかを試したい と。




「街道のほうには行くんじゃないぞ」


父はウナとならという事で、近くの裏山に行く事を


許可してくれた。


街道には出るなという条件付きで。




俺の実験に付き合う事にウナは快諾してくれた。




「それも妻の勤め…」


と言った気がしたが…




だが、そんな事よりも


俺はライフルが気になって仕方なかったのだ。





俺が前世で使っていたライフルは


日本製の豊和M1500というモデルをベースに


シャーシ、バレル、ストック、スプリング…など


全て高火力に耐えるように特別製作した物だった。


部品を取り換えれば、使用する弾も選択でき、用途に応じて


カスタムする事ができたのだ。


俺が裏の世界で君臨できたのも、この銃があったからだ。





裏山には、木こりたちが斧を木に打ちつける音が


こだましていた。


俺は斧が当たる瞬間、引き金を引けば


発砲音をカモフラージュできると考えた。




「私は何をすればいいの?」


ウナは俺にそう言った。




たしかにそれは想定外だった。


俺はウナを森に行く口実としか考えていなかったのだ。




「う~ん とりあえずそこで見てて」


俺はそう言ってやり過ごした。




いつものように少し念じると


手元にライフルが現れた。




「すごーい!」


ウナは目を輝かせて見ていた。




スコープを覗く。


残弾数10


試せるのは10発。


一番知りたいのは威力だった。


俺は手始めに、10mほど先の木に当てる事にした。




腹ばいになり、二脚を地面に置く


スコープを覗き、深呼吸をする。


呼吸を止め、瞬きもやめる。


そして引き金を引いた。


ドンッという音が、伐採音に紛れた。


木こりは誰も気が付かない。




早速、着弾個所を確認する。


直径20センチほどの木の幹に、小さくえぐれた


箇所があった。


しかし貫通はしていない。


弾丸は、5センチの深さで止まっていた。




威力はだいたい分かった。


今でも十分殺傷能力はあるだろうが、確実に急所に


当てる必要があると俺は感じた。


実際俺が狙った場所から少しずれていたのだ。




だが、ふとした疑問が沸き上がった。


弾丸についてだ。


たしかに薬きょうは排出されたが、見つからないのだ。


それに弾を装填した覚えがない。


いつの間に…?




だが深くは考えず、次の確認に移った。


今度は射程距離だ。


オークの時はせいぜい15m程だった。




まずは20m。


同じ木を狙う。


木こりのタイミングで引き金を引く。


そして着弾確認。


さっきより若干浅い。穴の深さは3センチほどか。


だが、これでも殺傷能力はある。




次は思い切って50m。


そして着弾確認…


当たってはいるが…凝視しなければわからない傷だった。




しかし、今日分かった事は、射程距離は30m以内という事だ。




その時、ウナを見ると暇そうに石を投げていた。




「ねえウナ、その石を向こうに投げてみて」




「やっとかまってくれたね!」


とウナは笑顔になった。




「いくよ」


ウナは石を上に向けて放った。




俺はそれを撃ち落とし


石は砕け散った。




(精度は…悪くないか…)


ぼんやり考えていると。




「アシュリーすごーい! じゃあこれは?」


そう言って、同時に3個投げたのだ。




パシン、パシン、パシン


3個とも命中し、全て砕け散った。




「アシュリー! すごい!!」


ウナは手を叩いて喜んだ。




「今日はこれくらいでいいよ。ウナ。


ありがとう付き合ってくれて。」




ウナはニコニコして頷くと。


「妻としてはごにょごにょ…」


と小さく言った。




俺は「え?」


と聞き返したが返事が無かった。




帰り道、ふとウナが言った。


「ねえ どうしてアシュリーは今まで家の中に居たの?」




「え? どういう事?」


俺は唐突な質問に頭が真っ白になった。

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