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ep14

「アシュリー…疑ってすまなかったな。」

バスケスが言った。


「ううん、いいんです。

僕だって逆の立場だったら同じ事を言うよ。」


「ふっ…お前は本当に5歳児か?」

バスケスは俺の頭をくしゃくしゃと撫でた。


「それで、どうやって500体も倒したんだ?

もっとあるんだろ?」

バスケスはニヤリとした。


俺はコクっと頷いた。


「じゃあ 見てて。」


スコープを覗く。HUDの中のロックオンx20を選択する。

照準カーソルが一瞬で目の前のグール達のコアをロックしていく。

俺はゆっくり引き金を引いた。


その瞬間射出された弾は分散し、グール達のコアに命中した。

サラサラと砂になって散っていく。


「ん?」


20体すべては倒していない…

命中したはずの残り8体がまだ動いている。

動きはかなり鈍いが。


もう一度スコープを覗くと、確かにコアには命中しているが

完全に破壊するには至っていないようだ。


「う~ん 前はもっと倒せたんだけど…」

俺は首をかしげた。


<共有データダウンロード中のため、出力が

低下しています。>

とヴァルキリーが言った。


<なんだって?>

思わず声に出してしまった。



だがそんな事は知らない

バスケス達は呆気に取られている。

「アシュリー…お前…すげえな…」



——ふいにまた頭の中に声が入った。

<アマテラスの共有を行いますか?>


俺は一瞬意味がわからなかった。

<なんだって?ヴァルキリー どういう意味だ?>


<文字通り、人工知能衛星アマテラスのプログラムを

味方に共有する事です。>


<あんたはいつも唐突だな。

つまり、俺と同じ能力が使えるって事か?>


<全てではありません。その人物に適した

能力に限ります。

ただし、基本スキルは並列化されます。

ロックオン、オートヒールが基本スキルです。>


<ネガティブは?>


<共有中はマスター。アシュリー・セラスの

共有値を割り振る事になります。したがって、マスター

アシュリー・セラスのスキル使用条件が制限されます。>


<共有値とは?>


<マスター・アシュリー・セラスの現在の共有値総量は20です。

バスケス・フッケバインの消費量6、カチュア・フッケバインの

消費量が5、従って、共有値の消費は11です。>


<という事は残り9って事か。>


<はい>


<共有値の総量は増えるのか?>


<はい、増えます。マスター・アシュリー・セラスの

レベルが上がれば増えていきます。>


<なるほど、だが現段階では俺はレベル15のままだから

20がリミットか。>


<実行しますか?>


<ああ、だいたい理解したよ。

あと、その…事務的な口調なんとかなんない?>


<…………

これでどうだアシュリー?>


<ふふっ いいね。>


<では実行するか?>


<……ああ やってくれ>


<了解した。 バスケス・フッケバイン、

カチュア・フッケバインへ スキル“ロックオン”

を付与。>


<付与を完了>

ヴァルキリーが言った。


HUDを見ると、レイアウトが変わっている。

スキルの“ロックオンx20”がただの“ロックオン”と

表示が変わっていた。


<この丸いアイコンは何だ?>


<共有ネットワークのアイコンだ。展開しよう。>

ヴァルキリーがそう言うと、噴き出し窓が現れた。


——アマテラス共有ネットワーク——


アシュリー・セラス

LV:15

総容量:20


バスケス 消費 6

カチュア 消費 5


残量:9


<なるほど、仲間に力を分け与える代わりに

俺のスキルも制限されるといういうのは

こういう事か。>


<そうだ。お前に体力が付き、アマテラスからの情報量に

耐えうる体になれば、レベルが上がり出し、総量も増える>



◆



「シュリ―… アシュリー! おい どうしたんだ?」


誰かが俺を揺すっている。


「!?」


「おい! 大丈夫か? いきなり焦点を無くして

じっと動かなくなったからびっくりしたぞ。」


「だ…大丈夫…」


バスケスとカチュアの表情が安堵に変わった。


「それより!試したいことがあるんだ。」

俺は早く試したくて仕方なかった。


「な、なんだよやぶから棒に。」


「二人に僕のスキルを付与したんだ!」


「は?」

「?」

二人はぽかんとした表情で俺を見た。


「正確には僕じゃなく、アマテラスっていう…

うーん、神様? だけど。」


「何を言ってるんだ?お前は」


「いいから、ほら、あのグールに目を凝らしてみてよ!」

俺はグールの群れを指差した。


「なんだって?」

バスケスは半信半疑だ。


「!? これは…!!」

カチュアが呟いた。


「ん? なんだカチュア」

バスケスもカチュアを真似る。


「!! 見える…どうなってる…」

バスケスは震えている。


「コアがくっきり見えている…

移動している…星形に軌跡を描いている…」

カチュアが言った。


「さすがカチュア…もう見抜いたんだ。」

俺はカチュアの洞察力に内心震えた。


その瞬間、フッと風が頬を撫でたと思ったら

隣に残像が残っていた。

バスケスの残像だった。


気が付いた時には

櫓から一気に飛び立ち、結界に張り付くグールの

眉間にロングソードを突き刺していた。


「体が…軽い!」

バスケスが呟いた。


なんて速さだ…

俺はこの女が敵でない事を神に感謝した。



「ん?」

バスケスは、違和感を感じていた。


あのグール…

完全にコアを破壊しきれていない…!


眉間に剣を突き立てられたグールの手が

結界からゆっくりと出てきた。

こちら側に出てきたグールの手から黒い煙が上がっている。

その手はバスケスのグローブを掴み

内側に強く引いた。


「しまっ‥‥!

なんて力……」

バスケスは徐々に結界の中へ引きずり込まれていく。


その時、ふと引っ張る力が途切れた。

そして、グールは砂の様に散っていった。


俺が後ろを振り返ると

カチュアが黒壇の弓を構えていた。


「カチュア! 助かったよ!」

下でバスケスが手を振った。


「見えているのに剣が追い付かない…

コアの動きが思ったより早いな…」

バスケスがぶつぶつ独り言を言っている。


「よし…」

そう言ってバスケスは、結界に張り付いている

グールに再度攻撃した。

その攻撃は見事にコアを破壊し、グールは塵となった。


後に続くように、カチュアも正確にグールを仕留めていく。


その時

<バスケスとカチュアの今のレベルを確認するか?>

ヴァルキリーが言った。


<二人のレベルが見れるって事か?>


<そうだ。ただし本人達は見る事ができない。>


<どうやって見るんだ?>


<レベルが見たいと思えば見れる。>


やってみるか。


まずは、バスケス…

スコープを覗くと、バスケスの頭の上に

吹きだしが出現した。


NAME;バスケス・フッケバイン

LV:28

JOB:ファイター

WEAPON;エクセシア兵のロングソード

STATUS:通常

SKILL

ロックオン/オートヒール

シンクロ率 7%


NAME;カチュア・フッケバイン

LV:28

JOB:アーチャー

WEAPON;黒壇の弓

STATUS:通常

SKILL

ロックオン/オートヒール

シンクロ率 7% 



<シンクロ率とはなんだ?>


<アマテラスとの共有率だ

アマテラスの能力の何%を引き出せるかという

値だ。>


<なるほど、レベルが上がるとその値も

上がっていくという事だな。>


<まあ、そこは簡単な話ではないが

今はその認識でいいだろう。だが、重要な事を

一つ言っておく、この世界にはレベルの概念が無い

そんなものは数値化できないからだ。

レベルはあくまでアマテラスが合理的に導いた数値だ。

それを過信しない事だ。

人の力は時として…>


<何?‥‥ああ、肝に銘じるよ>


<ちなみに理論上シンクロ率100%は可能だ。

だが生身のままで到達した者はいない。

10%を超える人間も少ないだろう。>



その時

「おおーい! ちょっと来てくれ!」

下からロバートの声が聞こえた。


バスケスとカチュアも手を止めた。


「作戦会議じゃ」



◆



「神の加護?」

ロバートは眉間に皺を寄せた。


小さな円卓に4人は向かい合っていた。


焼き菓子を頬張りながらバスケスが口を開く。

「ああ、コアの場所がわかるようになったんだ。

それに、心なしか体力が回復していく。」


「それはワシにもできるのか?アシュリー」


「ちょっとまって、やってみる。」


<ヴァルキリー、ロバートにも共有できるのか?>


<……不可だな。波長が違う。

いうなれば忠誠心、魂の繋がりのようなものだ。

ロバートの忠誠対象はエクセシア王だからだ。>


<了解>


「……残念ながらロバートさんには無理みたいです」


「お…そうか…残念じゃ…」

ロバートは肩を落とした。


「落ち込み方が激しいな…

まさか良からぬことに使おうと思ってたか?」

カチュアが言った。


「ワシを見くびるでない!小娘が!」

ロバートは唾を飛ばして否定した。



「あー…それで…じゃ」

ロバートが言った。


「これで、アシュリーの能力が証明された。

そして、グールを駆除する目途が立った。」


「ああ、光が見えた。

本当に感謝しかないよ、アシュリー…」

バスケスがそう言った。

カチュアも微笑んだ。この微笑みにやられた

男も多いに違いない…


「これからは、少しずつ結界小さくしていこうと

思う。」

ロバートが言った。


「どうやるの?」


「二人にはひたすらグールを狩ってもらう。

ワシは空いたスペースまで結界を押し戻す。」


「なるほど、徐々に結界を狭めていくんだね。」


「そうじゃ。二人は体力があるが

ワシには限界がある、少しずつじゃが

元の山を取り戻していきたい。

そしていずれ…」


「オライオン…」

バスケスが呟いた。


「グールになって山を彷徨っている…

さぞ辛いだろう」

ロバートが言った。


「あの時…」

バスケスが言った。



「あの時、オライオンにはまだ自我があった。

完全にグール化しているとも思えないんだ。」

バスケスが呟いた。


「姉さん…それは…」

カチュアが心配そうな眼差しでバスケスを見た。


「私は今でも自我を保って山を彷徨っていると思ってる。」

バスケスの言葉には力があった。


「とにかく明日から始めよう。」

ロバートが言った。


「僕は何をすれば?」


「アシュリー、子供のお前にこんな事を

させられん。なにせお前は大事な身だからな。」


「ああ、アシュリー、あとは私達に

まかせておきな。

お前は、よく学び、よく遊んで、しっかり体力をつけて

王都まで登ってこい。」

バスケスがそう言って、カチュアも頷いた。


「わかった。」



◆



——ヴァ―ミリオ山脈のどこか


「かかってこい!! 人外ども!

皆殺しにしてやる!」

その男の目は血走っている。


白地にグリーンのラインが入った重装鎧を着た戦士が

無数のグールに囲まれながら叫んでいた。


だがその戦士も、ほとんどグール化していたが

強靭な精神で持ちこたえていた。


「クソ…そろそろ俺も…」

戦士は呟いた。

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