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真実の愛って何? 〜私を捨てた婚約者に味方がいなかった件〜  作者: 影茸


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第六話

 それから一体どれほど話しただろうか。

 涙が止まらず、気づけば私の内心を全て兄様にぶつけていた。

 そして、ようやく兄様が口を開いたのは、全てを話し終わって私が落ち着いた時だった。


「なあ、シーリャ」


「……何ですか?」


 兄様の前で、子供のように泣いてしまった。

 初めてのことに恥ずかしさを覚えた私は、愛想なく答えてしまう。

 そんな私に、さわやかな笑顔を浮かべたまま、兄様は告げた。


「殺しにいっていいか、ラドリーを」


「駄目です」


「はは、冗談だよ」


 そう兄様はさわやかに笑う。

 だが、その身体からは冷気が漏れていた。

 それが兄様が本気で激怒している時の証拠だと知る私は、内心呟く。

 ……兄様に相談したのは間違いだったのかもしれない、と。


 確かに、兄様は私に甘いところがある。

 しかし、今の兄様の様子を見ると、本気でラドリーを殺しに行きかねない迫力があった。

 この辺境で最強の人間が怒っていると知れば、ラドリーの心臓は持つのだろうか。


「……色々いいたいことはあるが、一つ言いたいことがある」


「はい」


「この婚約破棄には私が関係しているかもしれない。すまない、シーリャ」


「え?」


「……マリシアがラドリーをねらったのは、私への当てつけの可能性がある」


 その言葉に私は驚き、しかし思い出す。

 そういえば、かつて兄様からマリシアについて警告をもらった事を。


「かつてあの女に交際を迫られてね、断ったところなんだよ」


「え!?」


 想像もしない言葉に私は言葉を失う。

 ……伯爵家に行くだけでも不相応なのに、兄様にも行ったのかと。


「その腹いせもあるのだと思う。すまない」


「いえ、これは兄様のせいなんて単純な話ではないと思います」


 きっかけは兄様かもしれない。

 しかし、それに応えるかどうかはラドリーの選択だ。

 ……全てはラドリーの責任で、変えられるとしたら婚約者の私だった。


「私がもっと」


 そこまで言って、私は言葉をやめる。

 今更意味はないと知っているから。


「シーリャ」


 どこか、思い詰めたような顔で兄様が口を開いた。


「君はまだ、ラドリーが好きなのか?」


 私はラドリーを異性として愛していたのか、そう思って私はすぐに否定する。


「……多分、そういう対象ではありませんでした。おそらく、ラドリーも」


「そうか。なら、再度婚約を結びたいと言われたら、シーリャはどうする?」


「……無理です」


 その言葉は自然と私の口から出ていた。


「もう、私とラドリーが婚約をする未来はあり得ない。……そして私が関わってもラドリーが幸せになる未来はもうない」


 その全てをラドリーは断絶した。

 もう、私とラドリーの未来が交わることはない。

 ……今、ラドリーはその事実に気づいたところだろうか。

 そこまで考え、私の脳裏にどうしようもない仮定が生まれる。


「私がもし」


 ──もっときちんとやっていたら、ラドリーが婚約破棄など言い出すことはなかったのではないか、と。


「シーリャは全てをやっていた。私が保証する」


 優しくそう告げた兄様の顔に浮かぶのは、私の内心を見抜くような笑みだった。


「まあ、確かに男の見る目がなかったのは事実だがな」


「……何を」


「それは自覚あるのだろう?」


 いつになく意地悪な兄様の言葉に、私は沈黙する。

 その沈黙が答えになることを理解しながら。


「だが、それだけだ。問題を見誤るなよ、シーリャ。君は良くやった」


 そう言いながら、兄様がまた私の頭をなでる。

 先ほどより自然な、けれどまだぎこちない手つきで。


「シーリャ・フランシスコ。君は僕の誇るべき、そして愛する妹だ」


「なに、それ」


 また涙が出そうになり、何とか私が告げた言葉。

 それに、兄様はただ優しくほほえんで手を離す。

 扉をノックする音が響いたのはそのときだった。


「シーリャ様、ご準備よろしいでしょうか。ご当主様がお待ちです」


「え、嘘!」


 その時私は、時間を、お父様の呼び出しを忘れていたことに気づく。

 心臓の鼓動が早くなるのを感じながら、私は考える。

 ……少なくとも、二時間はたっているはずだ。

 もしかして私はお父様を待たせていたのか?


「シーリャ様? 大丈夫ですか?」


 しかし、私の焦りと対照的に使いの者の声は落ち着いていた。


「分かりました。すぐに行くわ」


 動揺を抑え、答えながらも私の中の違和感が消えることはない。

 これではまるで、何者かが事前に遅れるとでも伝えていたようではないか。

 ……一人、そうして手を回してくれそうな人の心当たりがあった。


「兄様」


「何だい? 可愛い義妹よ」


 さわやかに笑いながらウィンクする兄様に、私は深々とため息をつく。


「……事前に教えてください」


「教える暇があったかな」


 頭に、兄様に泣きついていた一時間前の姿が蘇る。

 頬に熱が集まった私は、せめてもの反抗に無言で扉を開ける。


「ごめん、ごめん」


「……笑いながら言わないでください」


「せめてものお詫びにいいこと教えるから」


 いいこと? それが何かも想像できずに振り返った私に、兄様は悪戯っぽく笑って告げた。


「父上にラドリーの事を報告する時、私より先に報告したと言ってあげて」

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