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真実の愛のその後〜元婚約者に味方がいなかった件〜  作者: 影茸
第二章 雪狼騎士団

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第五十一話 (バランド視点)

「父上、よろしいでしょうか」


 険しい表情をしたハイドが私、バランドの書斎にやってきたのは、シーリャが去ったすぐ後だった。

 一息つきたいこっちの気持ちを言うこともできず、私は深々とため息をはく。


「私はシーリャを怒るべきではないと言ったはずです」


 誰にも言っていないはずだが、私の態度から全てを理解したらしい。

 そんなハイドに、私はため息をはく。

 聡い息子というのはやりにくいと。


「シーリャは私達が命を懸ける重みを知らなくていい」


 私を真っ直ぐ見て、ハイドはそう告げる。

 その様子から私は理解する。

 ハイドもまた、シーリャに注意しようとしてやめたことを。


「しかし、それでは次からシーリャは自ら動くことはなくなるぞ」


「それでいいんです」


 ハイドは真剣な表情で告げる。


「シーリャは命を懸けさせる重みを知らなくていい。ーー私がいる限り、シーリャが当主になることはないのですから」


 暗に、シーリャを当主にはしないと告げるハイド。

 しかし、その目には権力に眩んだ様子もなく、ただ真っ直ぐだった。


「……フランシスコ家当主。その苦しみの中であがくのは私だけでいい」


 そう告げるハイドに、私はかつての過去を思い出す。

 ハイドがシーリャに執着した日の記憶。


 その時の血走った目を。


 ハイドがシーリャに執着したあの日、その日は初めてハイドが森に足を踏み入れた日だった。

 その日、ハイドは当主の重責を知り。


 ……心が折れた。


「あんな目に遭うのは私だけでいい」


 そのハイドの言葉に、私はかすかに拳を握りしめた。

 望んで私はこの椅子に座った訳じゃない。

 それでも必死にあがいてきたし、これまでの日々に後悔はない。

 ただ、時々どうしても思ってしまうのだ。


 ……もし、私がフランシスコ家の当主でなければ、私の子供達はこんな風に苦しむことはなかったのかと。


「サブリナの処遇に関しては、私も納得しました。確かに、あの目を見た限り、サブリナがシーリャを裏切ることはないでしょう」


「……そうだな、サブリナはシーリャにとってセドリックのような存在になればと思っている」


「父上にはその時も無理を聞いていただきましたね」


 真っ直ぐと私を見るハイド。

 その目には隠しきれない今までの苦しみがにじんでいた。


「ですが、これ以上シーリャに重責をかぶせるのは私は絶対に反対です。どうか、どうかお願いいたします」


 そう頭を下げ、それからあわただしくハイドは出て行った。

 それもそうだろう。

 今のセドリックにはやらないといけないことが山のようにある。

 ……その忙しさの隙を見ても、ハイドはシーリャの為に私に忠告にきたのだ。


「私もシーリャに重責など背負わしたくはない」


 ハイドのいない一人の書斎の中、私の乾いた笑い声が響く。


「……シーリャに才能さえなければな」


 思う。

 今回のバロランド伯爵家に対するシーリャの対応は、完璧だったと。

 私が表に出て対処しても、こう完璧に対処することはできなかっただろう。


 ……そして、シーリャが何かあった時の為にハイドを手配していなければ、今頃辺境は揺れていただろう。


 こんな浅い場所に竜が出てくるなど、本来あり得ないのだ。

 いくら魔道具を使ったとしてもだ。


 確かに、シーリャは命を懸ける重さを知らなかった。

 命を懸ける重さを知らない者の命令は下の者の反感を買う。


 しかし、それ以外の動きは全てが完璧だった。


 私は心からシーリャを愛している。

 けれど、理解しているのだ。

 シーリャの才能は別格で、才能のある者は事件に巻き込まれていくことを。


「……願わくば、子供達に平穏を」


 私の心からの願いに答える者はなかった。

次回最終話で、明日更新させて頂きます!

新作も投稿しておりますので、よろしければ是非!

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