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真実の愛のその後〜元婚約者に味方がいなかった件〜  作者: 影茸
第二章 雪狼騎士団

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第五十話

「……はい。お父様」


 お父様の言葉に私はうなずく。

 今、ここに自分が呼ばれた原因。

 それが分からない訳がなかった。

 私の頭に浮かぶのは、自分の兄であるハイド。


「兄様に命をかけることを強いたからです」


 後で私は調べた。

 竜、というあの魔獣。

 それを倒すのに必要な戦力を。


 ……そして分かったのは、あの兄様でさえ竜を倒したのはたったの二体。


 それも軍隊に犠牲を出しながらであることを。


 思い出す。

 あの時、やけにハイテンションだったセドリックと、明らかに短期決戦にしようとしていた兄様を。

 あれはそうして一か八かの賭けに出なければ、倒せないような敵だったからなのだと。

 セドリックのあのハイテンションは、恐怖を必死に押さえ込む為の物だった。


「私は、何も考えずに兄様を……」


「違う」


 私の思考を止めたのは、お父様の淡々とした声だった。


「あの時の戦いは確かにぎりぎりで、お前はその戦いにハイドを引きずり込んだ。ただ、あの戦いは想定外だ。竜との戦いにお前の責任はない」


 淡々とした父の声、それはとがめるような響きも、ほめるような響きもなかった。


「あれは異常事態だ。偶然とはいえ、あの時ハイドをあの場所につれてきたことはお前の手柄だシーリャ」


 ……ただ、父の目にはマグマの様な怒りがあった。


「だから、お前に足りなかったのは決意でも思考力でもない。ーー人に命をかけさせる覚悟だ」


「私、は」


「一つでも想像したことがあるかシーリャ? ハイドが森に入るとき、どんな表情をしているかを」


 何も私は答えることができなかった。

 当然だ。

 私は今の今まで想像もしていなかったのだから。


「シーリャ。今回の件において、お前の判断と決断に間違いはない。ただ、これだけは覚えておけ」


 その場の空気が重くなったのを、その時私は理解した。

 目の前にいるのは、私の見たことのない父だった。


「人に命を懸けさせる意味を軽視するな」


 何も言えずに、私は頭を下げる。

 ……言い訳のしようも私にはなかった。


 あの時、竜を前にして私はようやく理解したのだ。

 私の無責任な考えのせいで、人が死ぬことがあると。

 その重みを今の今まで、私は想像もしていなかった。


「それともう一つ」


 父が重々しく口を開いたのはその時だった。

 その目にもう怒りはなかった。


「サブリナ・バロランドについて話は聞いた」


「勝手なことをして」


「ああ。そうだ。次からは絶対に報告をしろ」


 その口調は珍しく、柔らかかった。

 思わず目を見開いた私に、父はかすかに笑い告げた。


「サブリナの身の上は聞いた。……私は優しい娘を持ったようだな」


 それは褒めるというにはあまりに無骨で。

 ……心からの喜びが混じった言葉だった。


 先ほどと別の意味で涙が出そうになって、私はうつむく。


 サブリナが何をしたのか、そしてどんな人間か今回の件でお父様は調べたはずだ。

 私のそば付きにするのに、非常に悩みもしたはずで。


 ただ、今のお父様はそれを抜きにして私の決断を見てくれていた。


「これから、サブリナの行いはお前にある。分かっているな、シーリャ」


「はい」


「ならいい。もうゆっくりと休め」


 その言葉に従い、私は部屋を後にした。

 更新遅れ気味で申し訳ございません!

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