第四十九話
更新遅れて申し訳ございません
「いや、二人でやるのは初でしたが何とかなりましたね、団長」
氷漬けになった竜を踏みつけ、セドリックが姿を現す。
そこには、先ほどまでの狂気は残っていなかった。
……代わりに滲むのは、隠しきれない恐怖。
そして、そんなセドリックの言葉に答えず、兄様は振り向く。
その視線の先は、私だった。
「シーリャ!」
その時、初めて私は兄の怒声を聞いた。
どんどんと、兄様が私の方へと近づいてくる。
「何を考えている! 私が来なければ君は……」
そう言いながら、私の肩に手を置いた兄様。
……その手は、まだ震えていた。
「ごめん、なさい」
気づけば、私の目から涙があふれていた。
今になって、私は理解していた。
自分が一人のエゴによって、兄様を死にかねない状況に追い込んだことを。
兄様なら、何が起きても大丈夫。
そう、私は思いこんでいた。
けれど、そんな訳がなかったのだ。
「私は、そんな」
今になって、私は理解していた。
絶対などあり得なかったことを。
今の竜は、兄様であっても異常な事態を招く可能性があったと。
こんな時に涙を見せるのは嫌だった。
必死にうつむき、私はせめて涙を隠す。
「そんな危険なんて思って」
「シーリャ」
私の頭を優しくなでる感触があった。
「もうこんなことは駄目だ」
「はい」
「分かったならいい」
そういって、兄様が私の頭から手を離す。
その顔にはもう怒りはなかった。
──けれど、私をなでる間もその手はずっと、震えていたことに私は気づいていた。
兄様の背中が何事もなかったように遠ざかっていく。
しかし、影にどれだけの重圧を背負っているのか、今になって私は気づいていた。
「シーリャ様」
兄様と入れ替わるように、そこにはセドリックがいた。
その顔には、抑えきれない怒りがにじんでいた。
「確かに貴方の兄上は強い。……ただ、傷つかない超人ではないことをどうか覚えていてほしい」
その言葉に、私は何も言えなかった。
セドリックが一礼して去っていく。
……その背中を、私はただ見ていた。
◇◆◇
それから、一週間。
状況は一気に動いた。
今まで猛威を振るっていたバロランド伯爵家当主は失脚。
その直系に男子がいなかったため、遠縁の令息が今は当主となるべく動いているらしい。
……ただ、横領という真実を明らかにする訳にはいかなかった。
何せ、雪狼騎士団の預り金の事業はまだ始まったばかり。
こんな時に不正が明らかになる訳にはいかない。
結果、バロランド伯爵家当主の罪は魔獣を呼び出す魔道具を使ったことが理由となった。
そして、その父を告発したのはサブリナ。
今回の件に関わったものとして、サブリナの爵位はなくなった。
ただ、罪は犯したものの、その勇気に免じてサブリナは私のそば付きに任命され、表面上は何事もなく全ては終わった。
……ただ、それが表面上の解決であると関係者全員理解していた。
「シーリャ」
それから数日後。
全ての沙汰が下りた後。
「なぜ、ここに呼ばれたのかお前は理解しているな」
私は父、バランドの書斎にいた。




