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真実の愛のその後〜元婚約者に味方がいなかった件〜  作者: 影茸
第二章 雪狼騎士団

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第四十五話 (サブリナ視点)

 予約間違えておりました。

 申し訳ありません!

 悲鳴も出なかった。

 身体を動かすどころか、呼吸さえできない。


 その間に、その身体の主は姿を現していた。

 ゆっくりと身体をその場に現す。


 それ、は鱗に全身を覆われた巨体だった。

 爬虫類のようなその顔つきを見ながら、私の頭にある名前がよみがえる。


 ──ドラゴン、辺境の森の王にして最悪の存在と称される魔獣を。


 ……こんなものと、ハイド様は戦っているのか。


 この状況において、私の中にあるのは素朴な思いだった。

 こんな魔獣がどうして。

 私のもつ笛で呼び出せるのは、低位の魔獣だったはず。

 そんな考えが頭に浮かんで消える。


 死を目の前にして、私には恐怖はなかった。

 不思議に私の胸を支配するのは安堵の感情。


 ……今になって、私は理解していた。


 私は死にたかったのだと。

 認めてしまえば、今まで自分のしていたことが無駄になってしまう。

 だから私は、シーリャを殺したい。

 その為に魔獣を呼ぶのだと思いこんでいた。


 だが、私が実際に魔獣に望んでいたのは自分を殺すことだった。


 本当にシーリャを殺したいのであれば、低位の魔獣しか呼べないこんな魔道具など使いはしない。

 本来であれば、あり得ない杜撰な計画だった理由も、私は理解していた。


 竜に見られながら、私は思わず笑ってしまいそうになる。

 こんな今になるまで気づかないとは、私はどれほどおろかだったのだろうかと。

 それもこれも、ずっと自分の本心から目をそらしてきたから。


 ……私はあの時、ハイド様に認められた時から死にたくなったのだ。


 私はハイド様に救われるべきではなかった。

 だって、その時すでに私はハイド様を裏切ってしまっていたのだから。


 今になって、かつての記憶。

 ハイド様がよこした文官をおとしめ、解雇した時の記憶がよみがえる。


 ──よくやったサブリナ。


 初めて父からもらった優しい言葉。

 それを聞きながら、私はずっと自分に言い聞かせていた。


 これがハイド様の隣に立つために必要なことだと。

 ……そんなことあり得ないのに。

 そして、許されないことだったのに。


 竜の口が開いていく。

 異様にゆっくりと時が流れる中、私は呟いていた。


「ようやく」


 解放される。


 その瞬間、安堵と共に全ての過去の記憶が私の頭から消える。


 そして、私は気づいてしまった。

 ……私に向けられた無数の竜の牙、そこから漂う生臭い香りに。


 そのにおいが私の中に恐怖をよみがえらせてしまう。

 どうして今更。

 揺らぐ覚悟に、私の頭が恐怖を思い出していく。


 同時に、私の中にはよけいな記憶までよみがえっていた。


 私がハイド様に恋をした理由は、本当はずっと思っていたからだ

 こんな状況から、誰か手をさしのべてほしいと。


「──サブリナ・バロランド!」


 だから。

 だからだろうか。


 私に口を向けていた竜が、頭上に飛んだ何かに意識を向ける。

 それと同時に私に差し出された白い手。


 シーリャの手に、全てを救われた気がしたのは。

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